人生は驚きにみちている。

文字数 1,567文字

エデンの園はあいかわらず、平和だ。
彼女と共に起きて、彼女と共に眠る。  
代わり映えのしなかった毎日は、彼女と過ごすことで、輝いているようだ。
こ、これがリア充・・・!

今日は、食事のあとで一緒に散歩にでかけた。
以前に、おとうさんがこのエデンの園を案内して、川の名前や、植物の名前を教えてくれたように、彼女に説明する。
 彼女は、いつも楽しそうにきいてくれて、
「すごく勉強になったわ。」とか、
「こんなに物知りなんて、あなたってすごいのね!」
とかほめてくれるのでとても幸せだ。
決して、
「その話、前にもきいたわ。」とか、
「もっと別の楽しい話題はないの」とか、、、とか、いわない!
お金のかかるディナーも、ロマンチックな夜景もいらない、
ただあなたといることが私の最高の幸せなの、と、
キャバ嬢もびっくりの甘え上手、かわいい彼女なのだ。
(だからお金とかロマンチックな夜景とかキャバ嬢とかってなんだ・・・?)
    
エデンの園の中央まで来たとき、蛇がはなしかけてきた
「やぁ、人類史上類をみないバカップルのおふたりさん。
今日もペアルックがさえてますなぁ!ひゅーひゅー!
・・ゆうべはおたのしみでしたね!」
あいかわらず、この蛇の言う事はわからない。
けれど、ひとつだけわかったので元気よく返事をした。
「うん、ゆうべも、今日も、彼女とはいつもたのしいよ!」
胸をはって答えたら、ぶらーん、も勢いよく動いて、蛇の頭にあたりそうになった。
蛇は細長い体で器用に直立しているので、その頭が自分のぶらーん、の
先っぽと丁度、同じ高さになっていて当たりそうになるんだよね。
蛇はいやそうに、頭をふった。
・・・・・失礼な。
なんとなくおもしろくなくて、なんとかぶらーんを蛇の頭に命中させてやろう、と腰をふって、頑張った。
ぶらーん!
さっ! と蛇がよける。
ぶらーん!
さっ!
のばしたらあたるかな?ゴムゴムのー! 
ぶらーん!
さっ!
・・・この至近距離で当たらず、紙一重でよけるとは・・・!
・・・この蛇、なかなか手ごわい・・・・・!
「お主も、なかなかやるのぅ・・・・!」
蛇の健闘をたたえて、握手をさしだしたのに、蛇はこちらをシカトして、彼女にはなしかけた。
「あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない、と
 神はほんとうに言われたのですか」
「・・・私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。」
 そうよね?と彼女がこちらを窺って言ったので、男らしくうなづいた。
・・別に、蛇にシカトされても気にしてないよ、全然。
「しかし、園の中央にある木の実について、神は、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ。』と仰せになりました。」
そして、、彼女は満面の笑みで言った。
「つまり、あの木、のみ、食べちゃだめ!木の実、だけに!!!!」
彼女のオヤジギャグに、エデンの空気が確実に、一度下がった、、、
「凍える・・」とつぶやいた蛇のしっぽが、ぴくぴくと蠢いていた・・

気を取り直して、と蛇は彼女に語り続ける。
「あなたがたは、決して死にません、よ・・・
 あなたがたがそれを食べるその時、あなたがたの目が開け、
 あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを、神は知っているのです。」
ナ、ナンダッテー!
・・・ところで、なんでたかが、蛇がそんなこと知ってるの?
     
―彼女は、目をあげて、その木を見た。
死なない。
神のように、おとうさんのように、なれる・・・?
それは、彼女にとっても、自分にとっても誘惑だった。

彼女は、その木の実をとって、食べた。

妻は、、、、、、死なず、その実をこちらにさしだした。
なので、夫も食べた。
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