俺は肉体言語ではなく、口で話す言語での説得を試みる事にする。
あくまでもそこは平和的にだ。
俺の心から溢れ出す誠実な真実の愛の言葉で話をすれば、とりあえずは何とかなるかも知れない。うまく説得出来るかどうかは自信がないが。
俺は網の中でバタバタと暴れ回るササラに近づいて話しかけてみる。
なあササラ、もうこんな事はやめにしないか? 俺は本当に大魔王じゃないんだし、争い事が嫌いな完璧で完全なる平和主義者なんだよ。
ササラの持っていた探知機が反応したのは多分、俺自身も気が付かない内に俺の身体に入り込んだ大魔王の核の欠片のせいなんだ。
だからそれを何とか取り出せる方法をみんなで一緒に考えて、その取り出した欠片をササラが壊せばいい。
それでお前の爺さんが完全には成し遂げられなかった大魔王討伐の偉業をお前は成し遂げられるんだ。
そうすれば万事解決、平和的解決、俺もお前もみんな幸せハッピーエンドで丸く収まるだろ?
そんな嘘だらけの邪悪な言葉にササラは騙されたりしないぞっ!
大魔王はこの天才魔法使いのササラが討伐して絶対に息の根を止めてやるんだからっ!
俺はうんこたれではない! うんこたれではないが、お前のせいでシッコは何度かチビりそうになったぞっ!
ササラ、俺はもうとっくに分かっているんだ! お前が魔法使いではない事をな!
お前の使っているのは魔法ではなく魔術だっ! だからお前は魔法使いではないっ!
あ、イカン、こんな事小学生の子供に言っちゃ可哀そうだったか?
でもさっき考えていた事が口からつい出ちまった。
こんな事言って泣いちゃったりしたら困るなあ。
ササラはっ、ササラは魔術師なんかじゃないもんっ! 魔法使いだもんっ!
あ、泣くかと思ったらそうでもなくて良かった。でも凄く怒ってる感じがする。
そんなに魔術師って呼ばれたくないのか?
でもお前が使った魔法って呼べる物は、最初に撃ち込んで来たヘロヘロの光球ぐらいじゃないか。あとはみんな魔術だっただろ?
ササラが泣き出さない事をいい事に、俺はまたも追加で追い打ちをかけた。
でもそれぐらい言ってもいいよな。俺は何度も命の危機を経験させられた。
ミリアがいなけりゃとっくに完璧アウトのお陀仏だったんだから。
……分かったよ。じゃあ、特別に大魔王に見せてあげるよ。ササラが本当に本物の大天才魔法使いだって事の証拠を。
そう言うとササラは今まで網の中で駄々っ子みたいに背中を地面に着けてパンツ丸出しで暴れていたのをやめ、網を絡みつかせたままその場にすっくと立ち上がった。
なんだか雰囲気がちょっと変わったみたいな気がするんだが……。