文字数 522文字

 無邪気な声で、君は笑った。
「いい? わたしがお姫様で、あなたが近衛隊長」
 舌っ足らずな口調で、聞き慣れない役を要求する。
「なに、それ」
 オレは首をかしげる。
「えっとね……」
 たどたとしく、君は説明を試みる。
 ゆうべ、お父様とお母様といっしょにお芝居を観たの。
 そのお芝居に出てきたお姫様がとってもきれいで、近衛隊長は……えーと……とにかくすっごくかっこよかった!
 お話はよくわからなかったようだが、お芝居自体はとても気に入ったのだな、と理解した。
「で、その――コノエタイチョウ? ってのは、なにをすればいいんだ?」
「わたしをまもるの。クセモノとか、てっぽうのタマとか、そういういろんな危ないものから」
 なんだ――と、オレも笑った。
「それじゃあ、いつもと変わらないな」
「ああ……そういえばそうね。うーん、それじゃあ――」
 白い手がのびて、オレの上着の袖をつまんだ。
 見あげる瞳。
「これからも、ずっとこの先も、わたしの近衛隊長でいてくれる?」
「いいよ。これからも、ずっとこの先も」

 ――君を守る。
 そう誓った。
 その意味も知らず。
 その困難さにも思いいたらず。
 無邪気にただ、できると信じていた。
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登場人物紹介

カリン・グラニエラ(倉仁江花梨):
アビエントラントの女騎士。貧乏貴族の出身。三匹の黒猫を使い魔とする。


桜ヶ丘央霞:
百花学園二年。いわゆる「おっぱいのついたイケメン」

白峰みずき:
百花学園二年。生徒会長。邪神の魂をその身に宿しており、復活のため策動する。央霞のことが好き。

桜ヶ丘陽平:
央霞の弟。小学五年生。行き倒れたカリンを拾う。

三善山茶花:
百花学園一年。女子剣道部員。中性的な美少女。央霞のことが好き。

大紬茉莉花:
百花学園一年。明るく社交的な性格。千姫とは幼馴染で親友同士。

遠梅野千姫:
百花学園一年。人付き合いが苦手。割と毒舌。

アルメリア・デ・ヘルメリア:
アビエントラントの女騎士。旧王家の流れを汲むエリートで高飛車。

モルガルデン:
アビエントラントの女騎士。オークの血を引く戦闘部族の出身で、国内でも有数の武闘派。好色。

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