第52話
文字数 978文字
午後は久しぶりに吾郎と遊ぶ約束をしていた。吾郎はファミゲーという自宅のテレビにつないでできるゲーム機を買ってもらっていた。龍太はプレイウオッチという時計としては使いづらいゲーム機を何台か持ってはいたが、ファミゲーは買ってもらえなかったので、今日の吾郎宅訪問が楽しみだった。
栗に似た敵を潰しながら進んでいくそのゲームは面白いが、同じところでいつも躓いた。吾郎はよくやり込んでいるのか、上手にクリアする。これも勉強と同じで何度も挑戦しないとダメなのだろうな、と思っていると、吾郎の母が四ツ谷サイダーとポテトチップスを持ってきてくれた。目が疲れてきたこともあり、休憩にした。
「なあ、龍太? 泰史や井崎にテスト見せる訳ないよな?」
吾郎が尋ねてきた。井崎さんの言葉も聞こえていたのか、と焦る。
「当たり前じゃん。実は井崎さんは見ようとしてきたけど、がっちりガードしたしな」
「だよな。ほとんどの奴は昭のあの言葉、信じてないとは思うけどな」
でも、聞いてくれてありがとう、吾郎。こっちからは確かめにくい話を振ってくれて。
ひとしきり井崎さん、鈴原さん、そして昭、孝弘の悪口を言い合っていたらストローがジュルジュルと鳴り出した。「よし、続き、続き」と言う吾郎を龍太は制した。
「ちょっと、聞いていいかな」
「なんだ?」
「うん、あの……。吾郎、今でも大沢さんと手紙、やり取りしてる?」
林間学校で聞いた衝撃の告白。知る限りカップル第一号の吾郎と大沢亜希。文通の先輩なのだ。
「あー、そうだよ。なんで?」
「いや、あの……。手紙ってどういう頻度なのかなあ、とか」
「ほう、なんだ龍太? お前、誰か狙ってるのか? 宮崎の子とか?」
「まあ、そんなとこなんだけど……」
「あれ? でも龍太、夏に山田の……。あ、でもそうか、はっきり言ってなかったか?」
龍太は次の言葉を咄嗟には出せなかった。吾郎がそのまま続ける。
「まあ、どっちでもいいや。手紙はな、一か月に一通ずつ。この前写真も来たぞ。
やっぱあれな、大沢はかわいいよ。自分で言って照れちゃうなあ。見せないけどね!
はっはっは!」
こんな余裕を持てるなんて羨ましい。絶対に吾郎には、勉強では負ける訳にはいかない、と思った。そしてかわいいという大沢さんの顔が思い出せない。好きになるとかわいく見えるものなんだろうなあ、とぼんやりながら思った。
栗に似た敵を潰しながら進んでいくそのゲームは面白いが、同じところでいつも躓いた。吾郎はよくやり込んでいるのか、上手にクリアする。これも勉強と同じで何度も挑戦しないとダメなのだろうな、と思っていると、吾郎の母が四ツ谷サイダーとポテトチップスを持ってきてくれた。目が疲れてきたこともあり、休憩にした。
「なあ、龍太? 泰史や井崎にテスト見せる訳ないよな?」
吾郎が尋ねてきた。井崎さんの言葉も聞こえていたのか、と焦る。
「当たり前じゃん。実は井崎さんは見ようとしてきたけど、がっちりガードしたしな」
「だよな。ほとんどの奴は昭のあの言葉、信じてないとは思うけどな」
でも、聞いてくれてありがとう、吾郎。こっちからは確かめにくい話を振ってくれて。
ひとしきり井崎さん、鈴原さん、そして昭、孝弘の悪口を言い合っていたらストローがジュルジュルと鳴り出した。「よし、続き、続き」と言う吾郎を龍太は制した。
「ちょっと、聞いていいかな」
「なんだ?」
「うん、あの……。吾郎、今でも大沢さんと手紙、やり取りしてる?」
林間学校で聞いた衝撃の告白。知る限りカップル第一号の吾郎と大沢亜希。文通の先輩なのだ。
「あー、そうだよ。なんで?」
「いや、あの……。手紙ってどういう頻度なのかなあ、とか」
「ほう、なんだ龍太? お前、誰か狙ってるのか? 宮崎の子とか?」
「まあ、そんなとこなんだけど……」
「あれ? でも龍太、夏に山田の……。あ、でもそうか、はっきり言ってなかったか?」
龍太は次の言葉を咄嗟には出せなかった。吾郎がそのまま続ける。
「まあ、どっちでもいいや。手紙はな、一か月に一通ずつ。この前写真も来たぞ。
やっぱあれな、大沢はかわいいよ。自分で言って照れちゃうなあ。見せないけどね!
はっはっは!」
こんな余裕を持てるなんて羨ましい。絶対に吾郎には、勉強では負ける訳にはいかない、と思った。そしてかわいいという大沢さんの顔が思い出せない。好きになるとかわいく見えるものなんだろうなあ、とぼんやりながら思った。