第1話
文字数 1,404文字
「すごく綺麗!」
木目調の扉を開け、思わず叫ぶ。
「ななちゃん、興奮しすぎだよ。」
そういいながらも隣で目を輝かせているのは私の婚約者だ。
今日私たちは式を挙げる教会の下見に来た。
「見てみて、ステンドガラスだ!」
天井付近にあるステンドガラスは色とりどりに光を反射し、私たちを照らす。
「相沢伸二様、七瀬様ですね。お待ちしておりました。」
声がした方を振り返ると、そこには70代くらいの老人が立っていた。
「私はこの教会の管理者の今泉圭一郎と申します。」
今泉さんは深くお辞儀をし、ごほんと咳をした。
「ここで式を挙げさせていただきます、相沢です。」
伸二が頭を下げたから、私もつられて頭を下げる。
この教会を選んだのにはちゃんと訳がある。
今から2年前、私はハリウッド映画「リドルジャーニー」を見に行った。
そのラストで主人公たちは中世の古い教会で式を挙げていた。そのシーンに感動して泣きまくっていた私にハンカチを差し出してくれたのが伸二なのである。
そこからお付き合いが始まり、こうして夫婦になることとなったのだ。
出会うきっかけとなった教会(映画の中)となんとしても同じような所で式を挙げたいと私達は発起した。
そうしてしばらく探し続けること1ヶ月、山中にまさにドンピシャの教会を発見したのだ。
そこからまた管理者探しに奔走、いろいろと遠回りをして今泉さんにたどり着いた。
「いいんですよ。お若いカップルの役にたてるのなら十分です。」
「教会を整備するのも楽しかったですし。」
なんていい人なんだろう。かなり広いけれど、掃除から庭の整備まですべてしてくれたそうだ。
「本当にありがとうございます。」
「ですがあまりにも張り切って、腰を痛めてしまいましてね。」
「少し横になりたいので家に戻っておきます。すみませんね。」
「わかりました、大丈夫です。」
「私の家はあそこなんですよ。」
今泉さんは小さなコテージを指さす。教会から徒歩3分くらいだろうか。
「お帰りの際はお声がけください。」
「はい。」
こうして今泉さんと別れ、私たちは教会の探索を始めた。
ブライズルーム、チャペル、そして庭へと足を運ぶ。
「どこも古い美しさがあって本当に理想通りだわ。」
「そうだな。特に庭なんか最高だ。」
伸二が庭を指さす。
庭はとても解放的で、小さな池までついていた。足元にはバラや桔梗が咲き乱れ、鳥が鈴のような音色を放つ。
「夢みたい…」
不意につぶやく。
「ななちゃん。」
伸二が私の体を優しく包む。
「大好きだよ。」
どちらからともなくキスをする。
なんて私は幸せ者なんだろうと目を細めたその時。
真横に見知らぬ女が立っていた。
「きゃああああああああああああ!!」
一瞬しか見えなかったけれど、その女は黒く汚れたウエディングドレスを身にまとい、ぎょろぎょろと血走った目でこちらを見ていた。それは到底人間とは呼び難い姿形をしていた。
一気に辺りが真っ暗になる。
「伸二、伸二!」
さっきまで隣にいた伸二がいない。
「なんなのよこれ!」
パニックになってその場に座り込む。
するとどこからかクラシックの音楽が流れ始めた。
顔をゆっくりと上げると、そこはチャペルの入り口だった。
たくさんの人がいて、皆正装をしている。
「結婚式…?」
さっきまでここには私たちしかいなかったのに。
誰かの結婚式に立ち会っているようだ。
ふと近くに飾られていた看板を見る。
「なにこれ…。」
そこには
【相沢伸二・西条カナエ 結婚式場】
と書かれていた。
木目調の扉を開け、思わず叫ぶ。
「ななちゃん、興奮しすぎだよ。」
そういいながらも隣で目を輝かせているのは私の婚約者だ。
今日私たちは式を挙げる教会の下見に来た。
「見てみて、ステンドガラスだ!」
天井付近にあるステンドガラスは色とりどりに光を反射し、私たちを照らす。
「相沢伸二様、七瀬様ですね。お待ちしておりました。」
声がした方を振り返ると、そこには70代くらいの老人が立っていた。
「私はこの教会の管理者の今泉圭一郎と申します。」
今泉さんは深くお辞儀をし、ごほんと咳をした。
「ここで式を挙げさせていただきます、相沢です。」
伸二が頭を下げたから、私もつられて頭を下げる。
この教会を選んだのにはちゃんと訳がある。
今から2年前、私はハリウッド映画「リドルジャーニー」を見に行った。
そのラストで主人公たちは中世の古い教会で式を挙げていた。そのシーンに感動して泣きまくっていた私にハンカチを差し出してくれたのが伸二なのである。
そこからお付き合いが始まり、こうして夫婦になることとなったのだ。
出会うきっかけとなった教会(映画の中)となんとしても同じような所で式を挙げたいと私達は発起した。
そうしてしばらく探し続けること1ヶ月、山中にまさにドンピシャの教会を発見したのだ。
そこからまた管理者探しに奔走、いろいろと遠回りをして今泉さんにたどり着いた。
「いいんですよ。お若いカップルの役にたてるのなら十分です。」
「教会を整備するのも楽しかったですし。」
なんていい人なんだろう。かなり広いけれど、掃除から庭の整備まですべてしてくれたそうだ。
「本当にありがとうございます。」
「ですがあまりにも張り切って、腰を痛めてしまいましてね。」
「少し横になりたいので家に戻っておきます。すみませんね。」
「わかりました、大丈夫です。」
「私の家はあそこなんですよ。」
今泉さんは小さなコテージを指さす。教会から徒歩3分くらいだろうか。
「お帰りの際はお声がけください。」
「はい。」
こうして今泉さんと別れ、私たちは教会の探索を始めた。
ブライズルーム、チャペル、そして庭へと足を運ぶ。
「どこも古い美しさがあって本当に理想通りだわ。」
「そうだな。特に庭なんか最高だ。」
伸二が庭を指さす。
庭はとても解放的で、小さな池までついていた。足元にはバラや桔梗が咲き乱れ、鳥が鈴のような音色を放つ。
「夢みたい…」
不意につぶやく。
「ななちゃん。」
伸二が私の体を優しく包む。
「大好きだよ。」
どちらからともなくキスをする。
なんて私は幸せ者なんだろうと目を細めたその時。
真横に見知らぬ女が立っていた。
「きゃああああああああああああ!!」
一瞬しか見えなかったけれど、その女は黒く汚れたウエディングドレスを身にまとい、ぎょろぎょろと血走った目でこちらを見ていた。それは到底人間とは呼び難い姿形をしていた。
一気に辺りが真っ暗になる。
「伸二、伸二!」
さっきまで隣にいた伸二がいない。
「なんなのよこれ!」
パニックになってその場に座り込む。
するとどこからかクラシックの音楽が流れ始めた。
顔をゆっくりと上げると、そこはチャペルの入り口だった。
たくさんの人がいて、皆正装をしている。
「結婚式…?」
さっきまでここには私たちしかいなかったのに。
誰かの結婚式に立ち会っているようだ。
ふと近くに飾られていた看板を見る。
「なにこれ…。」
そこには
【相沢伸二・西条カナエ 結婚式場】
と書かれていた。