第7話

文字数 1,077文字

 夜、もう寝ようとなっても中々モヤモヤは晴れなかった。この時の僕は、所謂セクシャルマイノリティについて何一つ知らなかった。無知ゆえに、愚かなことを感じていた。世界に性は二つしかなくて、みんな同じだと思っていた。違う人がいるという事がどうにも寂しくて、納得できなかった。
 翌朝、朝食を食べている父に尋ねた。反抗期真っ盛りだった僕からの素直な物言いに、父は少し驚いたようだった。
父は僕の話を聞き、少し考え、言葉を選ぶように教えてくれた。
「そりゃ所謂LGBT てやつだな。お前はまだ知らないかもしれんが、世の中結構沢山いるぞ」
 まず父が知っていることに驚いた。そればかりか、世間では割とメジャーな話らしい。自分が間違えているのだろうか。
父はそのLGBT について簡単に説明してくれた。L はレズで、Gはゲイ。名称は様々で、それぞれこんな感じで人を好きになったりするらしい。など。時折「だよな母さん」と母に確認を仰ぎ、その度に母も「そうね」と頷いた。
「俺一人の話じゃ納得できないなら、たくさんの人に聞いてみろ。涼平が思っているほどマイナーな話じゃない。まだまだ何も知らない子供だってだけだ。涼平の中の不快感も、知っているはずの友達が実は何も知らなかったショックという部分が大きいと思うぞ。その気持ちは間違いじゃない」
滅多にない親子のコミュニケーションに、父は喜んでいるのだろうか。それとも、本当に大切な事なのだろうか。父はいつもよりも口数が多い。
「だけど、相手も人間だ。涼平の感情だけで勝手に嫌がって気持ちが悪いってのは失礼だ。今まで仲良くしていたのなら尚更な。だから相手をよく見て、知ってから判断しなさい」
 父は時計を見て焦りだした。母が父の鞄を持って玄関まで見送り、父は鞄を受け取って家を出た。僕は「いってらっしゃい」とも「ありがとう」とも言えなかった。そのあと母は「父さんの言った通り、いろんな人に話を聞いてみなさい」と優しく呟いた。
 結果から言うと、この時僕は一段大人になった。冷静に考えてみれば、そりゃそうだ、という感想に落ち着いた。好きな人がいれば嫌いな人もいる。右があれば左があるのだから、男の身体で男がいれば、男の身体で女がいても何も不思議なことではない。男は男、女は女という思い込みをしていただけだ。ただ数が多いだけで、全員そうでなければならないというのは暴論すぎる。
 父の教えに従い、沢山の人に聞いてまわった結果だ。僕は担任の先生や保険の先生、そして保健室で相談していたあの友達本人にも教えてもらった。結局彼が転校するまで僕らは仲良しだった。
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