『もしも魂が肉体をさげすんでいたら?』
文字数 1,645文字
同じ部分を、
以前は、魂がからだを軽蔑の目で見ていた。当時は、そんなふうに軽蔑することが最高の態度だった。──からだなど、痩せて、醜く、飢えたものであればよい。そう思って、魂は、からだやこの地上から逃れようとした。
しかし兄弟よ、おしえてくれ。君たちのからだが、君たちの魂をどう思っているか? 君たちの魂は、貧しくて、汚くて、みじめな自己満足ではないのか?
じっさい、汚い流れが人間なのだ。俺たちはまず海である必要がある。海なら、汚い流れを呑みこむことができるが、不潔にもならない。
ほら、超人のことを教えてあげよう。超人とは、この海のことだ。この海に君達は、大いなる軽蔑を沈めることができる。
「また超解釈がはじまったな……。
それにしても、母なる海か……。生命は全て海から生まれたといわれているしな。そして海に帰っていく。その海が超人か……。
実際、我々オンナが『母親』になるとしたら、男たち(MEN)が言うところの人(MAN)を越えている時という気もするしな。今のところはまだその境地は理解できないが……」
──少なくとも、今は、まだ。
そう思いつつ、すこしだけ自分の母を思い出す栞理であった。
〈つづく〉