第7話 大津の電話捜索手配を聞く

文字数 1,984文字

「石原先輩、石原先輩、起きて下さい、ほら起きろ」
 俺は大津に、頬を軽くパンパンされて起きた。
「おめえ覚えてろ」そして「来てくれてあんがと」そして「俺、気絶したと思うんだけど、メッセージ打ててた?」
「ちゃんと届きましたよ、受信したのは今から8分前です。自転車で飛んできました」
 俺は出来うる限りの説明をした。
「分かりました。黒い大きなミニバンですね。じゃ対処します。電話しますけど聞かなかったことに……、いや逆だな、音出しますから、ちょっと聞いてて下さい」
 そういうと大津は、自分のスマホを操作しだした。
「もしもし? あっ、櫛沼鑑識官さんですか? どーもー。オーツでーす。こんちゃ」
《おお、オーちゃん、元気? 久しぶり》
「お久しぶりです! やってる? やってる? 笑」
《暇よー。あんまりやってなーい。また今度遊ぼ。笑 どしたん?》
「でね。ちょっと調べて欲しいんですけどー。無理言って悪いんすけど、今私がいるところから神奈川全域で、トヨツ自動車のアルグランドの湘南さの555の39-28。Nシステムで現在位置や経路とか、サクッと調べちゃってもらえます?」
《ふんふんふん、いいよ、いいよー》
「一応疑似番号AIチェックありで、成人男性3名か4名、17才少女1名が乗車と推定されてるんですけど、顔相の画像取れたらそれの追跡と、歩容認証追跡も付けて、お願いクレメンス」
《合点承知の助! お安い御用だ》
「神奈川エリアだし、Nシステムも捜査支援分析も、乗り越え捜査になっちゃうと思うんですけど…」
《大丈夫、大丈夫、我が輩のパソコンちゃんは、何でも覗けるのだー。ワーハハハハハ! じゃあちょこっと、時間頂戴ね》
「はい! よろちくびー」
《ウワッハハハ! ガチャ!》
「饒舌なようで、余計なことは聞かないでくれるのが良いよなあ、あの人…。分析官は奇人変人多いけど」
 独り言を呟いている。
 俺は「あの、大津パイセン? 何やってんすか?」
 と聞いたが、大津はもう次の電話を掛けていて、俺とは目線を合わせないまま「ちょっとスンマセン」みたいに手を振り、背中を向けて、もう新たな通話を開始していた。
「もしもし。登録携帯から架電致しております。認証コードを申し上げます。桔梗チーム少年グループ382651。鈴木管理官ですか? 警視庁高校の刑事比定の大津です。ご報告申し上げます。連携内偵しておりました地域セル湘南のCが、被疑グループ周辺に、拉致された模様であります」
《そうですか》
「しかし、ただちに危害は加えられない状況と、推定致します。ただいま科捜研の櫛沼鑑識官に依頼、追跡捜査をお願い致しております。今しばらく内偵の態様で、事案把握をして頂きたく、お願い申し上げます」
《G事案じゃありませんね》
「はい」
《了解しました。あなたのことは、信用しています。武具や警察手帳は、携行してないですね。状況報告を怠らずにね》
「御意でございます」
《……カチャ》
 俺はもう何がなんだか分からず混乱して、頭の中が飽和状態になり、逆に詰まらない話から、口を開いてしまった。
「お前ってさあ、相手によって話し方、かなり変えるよな。俺ちょっと、びっくりしちゃった」
「…そう感じられますか? やはりそうですよね? 自分でも、そうだと思います。ちょっと嫌な感じですよね。先輩、聞いていて、嫌悪されました? 私、少し傷つきましたが、納得します、それを恨んだりはしません。…はっきり言って、私も自分のそういうところ…、嫌いです。大嫌いです! いつもそう強く葛藤しています。こんな事でいいのか? ええそうですとも、良くありません、良くないに決まってる! …でも、でもですよ、そういう気持を乗り越えて、より良く生きよう、社会の中のより良き一員になろう、自分の役割を果たそう。そう思って、今に至っています」
「だいぶ何言ってるのか分からない」
 そこでまた、大津のスマホが鳴った。大津はメッセージを読みあげる。
「当該アルグランドは、貴地点から約2キロ南進した地点の影沼交差点以降、現状確認されず。監視続行中」
 大津は俺に聞かせるためか
「ありがとうございます。監視解除して大丈夫かと思います。チュッ」
 と口で言いながら、メッセージを打った。
「ちょっと困りましたね。クルマを乗り換えたようです。アルグランドを隠して乗り捨てた場合、その後の車両は分かりません。この相手はそれぐらいはしてくる相手です。上手く行くかはわかりませんが、奥の手を使います」
 彼はそう言いながら、スマホをツンツンして、フリフリした。
「タクシーを呼びました。下まで行きましょう。道々いろいろご説明します」
 言うと、自分の家みたいに間取りはよく知ってる感を出して、階段をスタスタ下りて行った。スリッパ履いてる。(この緊急事態に、よくスリッパ履いてるな)と、靴下のままの俺は思った。
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