女子寮に侵入した

文字数 2,474文字

*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/26/163339)


 美雪は3階の講義室を歩き回っていた。

 リアナが行方不明になった。

 あれから1週間はたつ。

 講義室には、門平と言左衛門がいた。

 門平はイスに座ったまま、机に顔を伏せ、



「ゆゆしき事態だ。紅一点がいなくなっては、俺は何を楽しみに生きればいいんだ!?」

「紅一点なら、私がいるわよ?」

「ちくしょう! どうなってるんだ! こんなオスばかりの部屋にいたら、息がつまっちまう!」

「すでに呼吸困難起こして幻覚見てるわよ」



 私はツッコみつつも、冷静に考えた。



「……あの動画っ!? 何!?」



 動画の内容を思い出したとき、窓ガラスにヒビが入った。

 廊下に誰か立っている。

 おかげで何を思い出したのか、内容が抜けた。



「お前らだな!? リアナが行方不明になった原因は!」



 男性の声がして、再びガラスに固い物がぶつかる。

 金属バットのようだ。

 次々と窓ガラスをたたき割っていく。

 言左衛門が腰から刀を抜き、



「誰でござるか!?」

「リアナのお父さん!? 待って! 私たちのせいじゃないわよ!」



 私は必死でなだめようと声をかけた。

 しかし男性の攻撃は止まらない。



「ぼくのリアナたんを返せ!」

「ぜってーお父さんじゃないぞ、あれ!」



 門平は机の下に避難する。

 私は講義室の出入り口のドアを開けた。

 男が驚き、私に金属バットを振り下ろす。

 それを片手で受け止め、男をビンタ。

 脳振とうを起こし、男は廊下に倒れる。

 私は男に馬乗りになり、



「正気に戻って! お父さん!」

「ぶっ! ぶひっ! ぶひいっ! やめでっ!」



 情けようしゃなく拳で頬をぶんなぐる。

 男の口や鼻から血が飛び散るなか、門平が私を止め、



「もうやめとけって! そいつ死ぬだろ!」



 羽交い絞めされてしまった。

 男は陸に打ち上げられた魚のように、体をビクつかせる。

 私は立ち上がり、壁に手を置くと、



「怖かった……殺されるかと思った……」

「どういう精神状態!? お前が怖いわ! 逆に!」



 門平に言われてしまった。



 警察を呼ぶと、男は本当にリアナのお父さんではなく、赤の他人だったらしく、殺しても特に問題はなさそうだった。

 くわしく話を聞くと、大学からの帰り道にあらわれないので、私たちが恋人である自分からリアナを引き離したと思ったようだ。

 リアナの所在を知らない彼にはもう用はなく、私たちを殺そうとした殺人未遂の罪を加えて、無期懲役にでもしてもらうことにした。



 深夜。私たちはリアナがどこにいったのか探ろうと思い、彼女が借りている女子寮に潜入することにした。

 さすがお嬢さまだけあって、セキュリティーが頑丈で、侵入するのは難しい。

 しかたがないので、言左衛門にパーティー用の馬のマスクをかぶせて、刀で寮長をおどしてもらい、リアナの部屋の鍵をゲットする。

 あとは好きにしていいわよと、言左衛門に言い残すと、彼は年増な女性の寮長に、馬のマスクをかぶせて、ボディーブローで気絶させていた。

 門平君は終始、何かにおびえているようだった。

 女性寮長が気絶する寸前に言った、「おこめさん!!」という謎の単語が頭から離れない。



 緊張したまま、リアナの部屋に入り、机の引き出しにあった財布から、1万円を抜き取ろうとすると、そっと門平に止められる。

 電気はつけられないので、タンスから下着を盗もうとしたとき、言左衛門がノートパソコンを見つける。

 そんなものに興味はないと首を振ったが、門平がどうしてもタンスをブロックしてきたので、しかたなくノートパソコンの電源を入れた。



「うっ……何、これ……」



 ノートパソコンのデスクトップには、大学の論文のファイルが張られていた。

 電子メモには、レポート提出日が書かれている。

 1つ、電子ファイルを開いてみると、そこにはズラリと図や英語の文章が書かれていた。



「なんてマジメなの……狂ってるわ」

「お前がな」



 門平が驚きもせず、私にツッコんでくる。

 リアナの暗黒部分がまったく見られないので、私はすでにしらけていた。



「うん? 誰かとチャットしてたみたいでござるな?」



 宮本君がチャットルームを開いた。

 そこには、『クランプ』と書かれた人物がいた。



「まさか、大統領!?」

「違うだろ。大統領はそんなに暇じゃないだろ」

「探ってみる必要がありそうね」



 門平を押しのけて、私はクランプと名乗る人物と、チャットすることにした。

 名前はリアナにしておいたほうが、やつも油断するだろう。



リアナ『北の国はいつヤルの?』

クランプ『いつかヤルさ』



 返事はすぐにきた。



「モノホンだわ!」

「絶対違うって」

「じゃあ、移民はいつヤルのって聞くわ!」

「やめときなさいって。国際問題でしょ。それ」



 門平がしぶい顔をする。



クランプ『君はリアナではないな?』



 見抜かれた。

 正直に答えるしかない。

 情報を引き出すためだ。



リアナ『よくわかったわね。そうよ。私はリアナの下着を盗みにきただけ』

クランプ『ごまかすな。彼女がどこに行ったのか、知りたいんだろう?』

リアナ『いいえ。私は彼女のお金と下着に興味がある』

クランプ『いいだろう。彼女を連れ去った者を教えよう』



 クランプが私の網にかかった。



「バカね! 引っかかりやがったわ!」

「うそだろおい! なんで引っかかるの!?」



 門平が私のすごさに驚く。



「静かにするでござる。周りが起きてしまうでござろう」



 リアナのブラジャーをかぶった言左衛門が、真剣な表情で私をしかる。

 うふふ。クマちゃんみたい。

 言左衛門の頭から盛り上がった、下着の胸の形を見て、門平が口を引きつらせていた。



クランプ『やつの名前は萌美』



 クランプが延々とチャットで何かを語っていたが、私と門平は言左衛門にくぎ付けだった。


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