最終回   

文字数 10,819文字

改めて自己紹介させてください。
わたくしの名はマリー・アントワットでございます。
全地上を代表する淑女ですの。

お別れの季節が……訪れようとしています。
それはこの小説との別れ。
最後になりますから、この歌を歌わせてくださいませ。

『旅立ちの日に』

私は両足を肩幅に広げ、大きく息を吸いました。
これでも歌唱力には自信がありますの。

今までの話数を思い出し、目に涙を浮かべながら
斉唱を始めようとしました。

「白い光のなーかにぃwwwwwさざなみはもえてー」

隣にいる信長が熱唱を始めました。

「はるかな空の果てまでもwwwww君は飛び立つwwww」

「限りなく青いwwww空にこ~ころ震わせ~www」

「自由を書けるとーりよwwwフリ帰ることもせずwwww」

「勇気を翼にこーめてwwww希望の風邪に乗りぃwww
 この広い大空にwwww夢を~託してwwwwww」

この調子でサビを歌われたらたまりません。
しかも風の漢字が違う。
私はとっさの判断で信長君に拳を振るいました。

「なつかしい……とものこえ、あああああああああああああああああああ!?」

信長君は校庭の先にある住宅地の方へ吹き飛びました。

続けて私が歌おうとしたら、今度はミホさんが歌いました。

「今。別れの時。飛び立とう。未来信じて。
 弾むこの若い力。信じて。この広い大空へ。」

すると、ミホさん以外の神8全員が歌い始めました。
今日はユイとババア(マリエ)もいますわ。

間違えてユイと書いてしまいました。ルイですよ。
ユイって誰ですか。

~歌~

心通った うれしさに心震わせ。
みんな過ぎたけれど 思い出 強く抱いて。

勇気を翼に込めて 希望の風に乗り
この広い大空に 夢を託して

今 別れの時

飛び立とう 未来信じて

弾む若い力信じて

この広い 大空へ


…歌はこれで終わり。

ピアノの伴奏が止まると、ふとせつなさが
込み上げて泣きそうになしました。

ピアノを演奏していたのはケイスケさん。
彼は英才教育を受けて育ったので
ピアノは友達のようだと言ってました。

ケイスケさんは、ピアノイスから静かに立ち上がり、
拍手をしました。その拍手の意味は?
私達の歌に対して? それとも無事最終回のタグを
つけられたこの小説に対して?

「全部にだよ」

ケイスケさんはそう言って笑いました。
孫を見る老人のように優しい表情です。

説明が遅れました。
ついに決闘当日を迎えました。
私たちは今校庭にいます。

校庭の片隅にピアノとイスを持ってきて、
ケイスケさんが伴奏を弾く。
その他の人がピアノをかこみ、歌う。

なぜ歌ったのか気になる? 
しかも校庭で? それはそうよね。
決闘する前なのに不自然なのかもしれないわ。

答えは

『その時の気分』よ

なんとなく歌いたい気分だったの。

日本のみなさんは仏国人が気分屋なのをご存じ?
ドイツ野郎(プロイセン)みたいに屁理屈とか
理論を重視するよりも「感性」を
大切にして生きているわ。

あっ。私も一部のフランス人同様ドイツは大っ嫌いですわ。
ドイツ人なんて顔も見たくないし。話もしたくないわ。

もちろんフランス人は国家レベルでは
「絶対的理性と知性」によって先進文明を支えて来たけど、
庶民感覚としては少し違うの。

私は確かに王族の人間だったわ。

でも私は常に私自身を一市民として思うようにしていた。
フランスは欧州に君臨する最大・最強の王国だったのよ。
私はその中の一人の構成員に過ぎないわ。

浪費癖が激しいオーストリア女?
首飾り事件? 貴族の慣習? 

ヴェルサイユ・エチケット?
デュ・バリーのクソババとの対立?
長く続いた不妊のためお母さま(マリア・テレジア)が心配を? 

全部忘れたわ。

言いたい人には言わせておけばいいのよ。

後世の人は歴史をどうにでもかけるわ。
それがやがて真実のように全世界に広まるのでしょうね。

天にいる神と主イエス・キリストに誓うわ。

私は夫のルイを心から愛していました。
ルイ・シャルル。マリー・テレーズ。
貴方たちのことも同じく愛していたわ。

そして私は今、新しい人生を歩もうとしている。
私は日本という極東の島国で生まれ変わり、
本村ミホとの最後の死闘に臨もうとしている。

緊張して口の中はカラカラ。
昨晩は一睡もできず。ケイスケの腕の中で甘えていたわ。
ケイスケのことをルイ・シャルルと呼ぶのを許してちょうだい。

彼が私の息子の生まれ変わりにしか思えないの。

「そろそろ殴られる準備はできた?」

ミホが言うわ。

「最初に言っておくね。手加減をするつもりはない。
 私は検察側の代表でこの作品の主人公、
 そして真のメインヒロインだよ」

勝手なことを。主人公はこの私なのに。

「うん。あんたの書いた話を読んだけど、
 元王妃とか肩書きが多すぎて吹いたよ。
私のことワキ役って7回くらい書いてたよね?
 これさー、明らかに私に喧嘩売ってるじゃん? 
 ぶっ殺し確定だよね?」

「上等ですわ。どちらがこの作品の
 主人公にふさわしいか、勝負しましょう」

審判役のロベスピーエルさんが私たちの間に入ります。
試合開始の合図をしてくれるのね。

「はっけよーい」

今気づいたけど、なんで地面に『土俵』が書かれてるの?

「え? だって決闘って相撲じゃなかったの?
 日本人は相撲で物事を解決するって本に書いてあったぞ。
 国会とかで両院がもめた時も最後は相撲するって…」

私が殴るより早く、ミホさんの拳が飛びました。

ロベス君は何度目になるか分かりませんが、
とにもかくにも派手に吹き飛びました。

なんで私たちが相撲しなければならないのよ。
腹が立ったのでこれで彼の出番は終わりです。
また次回作に期待しましょう。

「少し興がそがれたけど、戦おうか?」

「いいですわよ」

ミホさんの誘いに乗り、
私の方から先制攻撃を仕掛けます。

「ふっ」

ボクシングのコンビネーションです。
ワンツー。からの……フック!!

当然のごとく一発も当たりませんし、おかえしに
がら空きのお腹に一撃を食らいました。

「ごふっ」

思わずそんな声を発するほど痛いです。

『殴られた』のでなく、『鉄球(3トン)が直撃した』
と評するのが妥当でしょう。

私は片膝をつき、小刻みに震えてお腹が
回復するのを待つしかありません。
このあと一週間くらいご飯が食べられないかしら。

「今のは三割の力だから」

うそではなく、真実なのでしょうね。
このやり取りだけで、私がどうやっても
ミホさんに勝てないのを悟りました。

「もう十分だ!!

ケイスケさんが私に駆け寄ってきました。
ミホさんからかばうように抱きしめてくれます。

「この子は元王族なんだから、戦うのは無理だ!!

「あっそ。だからなに?」

「だからじゃねえよ!! おまえは自分が強いからって
 弱い者いじめをして恥ずかしくねえのか!?
 勝負はお前の勝ちで良い。これでこの作品は終わりだ!!」

「終わらないよ」

「あ?」

「終わらないって言ってんだよ!!
 誰が終わりにしていいって言った!?
 こらああああっ!!

あまりの気迫にケイスケさんは腰を抜かしました。
なんて気迫なの。ミホさんは剣道の達人のように
全身から発せられる気だけで相手を圧倒した。

「良く聞けよバカ兄貴。
 私がワンパン食らわしただけで終わりって、
 何の起承転結もない。そんなのが小説って呼べる?
 ねえ?」

「た、確かに。それは難しいかもな」

「小説と作文は違うんだよ。前の作者はもういない。
 私たちはアントワネットにすべてを任せた。
 だったら、最後までちゃんと責任持てよ!!
 この私と死闘を演じて見ろよ!!

私は何も言い返せませんでした。
『致命的な戦闘力の差』を
どうやってくつがえせばいいのか。

昔のことなのでよく覚えてませんが、
私は前話で『防御力をMAX』に設定したと思います。

それにも関わらず、ミホさんの拳は
私に深刻なダメージを与えた。
 
ミホさんは『攻撃力がMAX』
なら互角ではないの?

答えは簡単。

ミホさんのMAXは、
私たちの考えている次元を超越していた。

毎度おなじみ軍事の例えになりますが、

『ドイツ野戦軍』と『ソ連野戦軍』
の戦闘能力の差がこれですね。
もちろん私がソ連軍です。

独ソ戦開始後、わずかな期間でベラルーシ・ポーランド・
ウクライナ・バルト三国・カフカースの一部などを
占領され、数百万人の兵隊が撃破された当時のソ連邦でございます。

これほど広大な規模で『瞬時にボロ負けした軍隊』は
歴史上存在しません。占領された地域は
日本国の国土の18倍くらいありますよ。

本当に悔しいけど、我がフランス第三共和国もドイツ陸軍に
敗北しました。たったの『三ヵ月しか』抵抗できせんでした。

言っておきますけど、フランス大陸軍が
弱かったわけではありませんよ?

他にドイツに負けた国や地域は、ベルギー。オランダ。デンマーク。
ルクセンブルク。ギリシャ。ユーゴ。アルバニア。
チェコスロバキア。イタリア(途中で裏切ったため)。
チャネル諸島、など数え切れません。

英国本国から欧州大陸へ派遣された『英国陸軍主力部隊』も
フルボッコにされ、ブリテン島へ逃げて行きました。
なんとあの大英帝国ですら勝てない相手がいたのです。

ドイツの強さは今のミホさんそのもの。
きっと生まれつき戦うのが好きなのね。

世界で最も多くの強国がひしめく欧州大陸において
ドイツ第三帝国は「欧州制覇」に限りなく近いことをしました。

『ドイツと戦争しても絶対に勝てない』と言っていた、
ジューコフ将軍やレフ・トロツキーの言葉通りになったのです。
そのトロツキー君はそこで私たちの決闘を観戦していますが。

ソ連人の彼の聡明さには驚かれます。
戦争になる10年以上前から敗北を悟っていたのですか。

「戦争と言うより、東欧州へピクニックに行く感覚だな」
「ソ連兵隊殺しすぎて弾が無くなるの早いんだがwww」
「土地が広いから機甲部隊の演習代わりにちょうどいいぞ」
「捕虜が100万以上いるから数え切れねーんだけどww」

当時のナチの兵隊が実際に語った言葉です。
ソ連兵の捕虜の総数が、日本陸軍主力と同等の数だったとか。

東欧の田舎で生まれたばかりの社会主義国が
『欧州で最も洗練され、高度に訓練された戦闘集団』
と戦争した結果がこれです。

死んでも認めたくないけど、ドイツ人は確かに利口です。
合理主義で研究熱心で、忠誠心が高く規則を守り、
戦うと決めたら限界まで戦います。

といっても。紆余曲折を経て、
最後はドイツが降伏するのですけどね。

ドイツを倒すのに必要だった戦力は、
英国軍、米国軍、カナダ軍、自由ポーランド軍、
亡命フランス軍、ソ連軍の全兵力(1100万以上)、
裏切ったフィンランド、ルーマニア軍など。

他にも対日戦を含めると豪州、ニュージーランド、
シンガポール、中国などもありますね。

特に英語を母国語とする全ての諸民族は、
『ドイツと日本から地球を救うため』に必死で戦いました。

うそだと思うなら、ポツダム宣言を読んでみなさい。
『日本は二度と世界征服の野望をもたないこと』と
英語ではっきり書かれています。

当時、その文章を和訳した日本の外務省は
「連合国の奴らは何言ってるんだ?」
と困惑したそうですが、
あれは連合国から出された『正式な降伏条件』です。

世界から見た当時の日本とドイツは、
「非常に凶暴で好戦的な、
強大な軍事力を有するファシズム国家」なのです。

連合軍の欧州大陸反攻作戦では
4400隻の艦艇が動員され、
兵員300万人がフランスやイタリアへ上陸しました。

フランス全土はドイツによって陣地化、
要塞化され、強力な機甲師団が待ち構えていました。
そこへ連合軍の兵隊が多数投入され、犠牲になりました。

ドイツは常に優位な場所に敵を誘い込み、
重砲や機関銃の猛射で連合国の兵士を虐殺しました。

こちらからは敵が見えず、相手からは良く見えると
いった、非常に不利な状態が多かったため、
戦闘ではなく虐殺が多発しました。

ドイツの主力機関銃(MG-42)は、『1分間で1200発』
の連射力を誇る、悪魔の兵器でした。

これの一連射を食らうと、連合国軍の兵隊
10名以上が一瞬でなぎ倒され、絶命しました。

連射音が早すぎて人間の耳では感知できないほどです。
『人肉引き裂き機』 『ヒトラーの電動のこぎり』
前線の兵隊からはそう呼ばれました。

大陸反攻作戦は予定通りに推移しませんでした。

補給の遅れや作戦の失敗で、生身でドイツの戦車と
戦うことになった戦士たちもたくさんいます。
生身で戦車にどうやって戦えと言うのでしょうか。

肝心の戦車戦ですが、ドイツの重戦車(ティーゲル)は強く、
1対1では倒せないので4対1などに持ち込んで
ようやく倒せるレベルでした。

連合国軍は、前を進む兵士が何人肉片になろうと、
地雷で両足を吹き飛ばされても、戦車が炎上して
乗員が焼け死んでも、生き残った兵隊が
最後まで戦争を続けました。

鉄の意思とはこういうことを言うのです。

『早くドイツを倒さないと、
 故郷にいる自分の家族が危ない』

すでにドイツは『V2ロケット』をイギリスと
ベルギーに向けて計3000発以上ぶちこんでいました。
今でいう『ミサイル』のことです。

ドイツは今から70年も前に
ミサイル基地を配備していました。

イギリス側の出した結論は、
「当時の技術では迎撃不可能」のため、
ミサイルが外れることを神に祈るしかありませんでした。

他にもドイツは『ジェット戦闘機』を持っていました。
アメリカを含むすべての敵国がプロペラ機しか
持っていなかったのに。

今の旅客機でも使われているジェットエンジンは
ドイツが開発したものです。

私たちではどうやってもドイツの技術力には遠く及びません。
ヒトラーはアーリア人種の優越を主張しましたが、
その通りだと認めざるを得ません。

彼らこそ地球で最も優れた文明国なのでしょう。
超一等国のイギリスのさらに上がいたのです。
世界の覇王とでも言いましょうか。

戦後、ドイツから連れ去った技術者の影響で
ソ連とアメリカはミサイルを開発しました。
こういう話は日本の教科書には載っていないでしょうね。

端的に言うと、『米ソ冷戦』のミサイル競争すら
ドイツの技術が元になっているの。

アメリカの宇宙開発も
フォンブラウン博士(亡命ドイツ人)が主導です。
NASAのアポロ計画が有名ですよね。

ちなみに原爆もアインシュタイン(ドイツ)
オッペンハイマー博士(ドイツ)が関わっています。
(原爆開発者が米に亡命したから
 ナチは作れなかったけど)

そのドイツ相手に連合国は戦ったのよ。

物量ではドイツの10倍は上回っていました。

最後は勝てるだろう。そう確信は持てたけど、
フランス、イタリアに上陸した連合軍の
ベルリンまでの道のりはあまりも長い。

最前線で戦う部隊は順番に殺されていくわ。

敵陣地に突撃すると、MG42の連射音が。
男たちの軍服が血の色で染まり、一斉に肉の固まりと化すの。

前にいる兵隊を貫通してさらに後ろの兵隊にまで
無数の銃弾が襲い掛かる地獄絵図。

敵大型戦車の接近。規格外の重量に大地が激しく揺さぶられる。
砲弾が撃たれる。味方戦車はすぐに大破、炎上する。
この戦車と遭遇するだけで戦意を失ってしまう。

山岳地帯での戦闘。地雷と鉄条網が行く手をはばむ。
山の上から敵の砲弾が次々に降り注ぎ、
兵隊の手足を吹き飛ばす。

立往生すれば、ますます犠牲が増える。
だが突破するにはどうしたらいいのか。

スケジュールの都合により、上層部から下令された、
ボートでの強行渡河作戦があるのよ。
あまりにも無謀な苦戦だったわ。

川の渡る先にはドイツ守備隊と戦車軍が
横一文字に並び、無慈悲な攻撃を食らわせてくる。

ボートに穴が開き、浸水して兵隊が川に投げ出される。
その兵隊にも容赦なく機関銃の連射が襲い掛かり、
水面が血で汚れてく。死んだ兵隊が浮かぶ。

地上はどこを見渡しても死体の山。

言葉を発しなくなった兵隊の屍をまたぎ、
後ろの兵隊が先へ進み、わずか10メートル前進
するごとに何人もの兵隊が犠牲になっていく。

どれだけ多くの兵隊がドイツによって殺されたのかしら。

米国兵はこの戦争を始めたナチスとヒトラーが許せなかった。
ここは欧州であり敵地。ドイツにとってのホームグラウンド。
米兵にとってほぼ全ての条件が不利であり、
みすみす殺されに行くようなもの。

彼らは遠く大西洋を渡ってこの欧州に来た。
ドイツの欧州征服を許していたら、
次はカナダに航空基地を作られ、
米本国が爆撃されていたらしいわ。

だから大切な家族を故郷に残してこの無謀な
戦いに身を投じるしかなかったの。

いよいよドイツ降伏を目前に控え時。
あまりの味方の損害の多さに耐え切れず、
米兵の間でこういう会話がされていた。

『占領したら、もう二度とドイツが戦争できないように
 全てのインフラ設備を破壊しよう。
 ドイツに文明があるからこんなことになるんだ。 
 奴らの文明を中世までに戻してやれ』

『ドイツから全ての電気、ガス、水道設備を破壊しろ。
 町も全て燃やしてしまえ。欧州の地図からドイツを消せ。
 ドイツが地上に存在すること自体が間違いなんだ』

前線の兵士たちのドイツに対する想像を絶する憎しみは
『連合国軍・最高司令官・アイゼンハワー閣下』の
耳にも届いていました。

野蛮なことはやめるようにと、閣下は兵を制しました。

米兵による文明破壊はされませんでしたが、
その時のドイツに対する憎しみはあまりにも強く、
今でも米国の戦争経験者でドイツ嫌いは多いそうです。

私も大嫌いなので仲間ですね。

そして戦争は終わりました。

およそ地球上で交戦可能な全兵力を使い切り、
ナチスと日本軍国主義をこの世から消し去りました。

戦後、帝都ベルリンを征服して
ソビエト元帥になったジューコフが言い残しました。

「今次大戦の結果を分析すると、
 ソ連兵は戦闘的資質で劣っていると認めざるを得ない。
 ソ連兵4人でようやくドイツ兵1人に値する。
 日本兵も極めて強い。ドイツ兵と同等である」

話は変わりますが、露国で使われる社会科の教科書で
第二次大戦は34ページかけて執筆されており、日本のことは、

「極東方面で国境を面する、この強大な軍事大国は……」

と書かれているそうですよ。日本のみなさん。よかったですね。
あなたたちが思っている以上に、日本は強かったと思われてますよ。

私は当時のソ連兵と同じです。
今回の決闘で私は自分の弱さを知りました。
認めたくありませんが、私はわき役に過ぎませんか。

「これが生まれ持った力の差だよ。
 アントワットが元王妃だとか、そんなの何も関係ない。
 今この日本では力の差こそが全て。
 弱肉強食こそが自然の摂理なんだよ」

ミホさんは、おそらく北斗の拳の愛読者なのでしょう。
もしくは、るろ剣ですか。私もあの作品好きですよ。

フタエノキワミ。アッー!!

「そろそろ駄文を書くのやめてもらっていい?」

注意されました。

「あんたに地の文書かせても前の作者と変わらないじゃん。
 ドイツとか言われても知らないし、興味ないよ。
 そんなに戦争が好きなら戦争の小説でも書けよ」

でも、そういう気分だったのよ。

「今のところ最終話の60%が余談とかバカにしてるの?
 私らと第二次大戦の西部戦線のどこに関連性があるんだ。
 あんたに作者やらせても結局これか。
 ムカついたからもう一回殴るね? 心の準備は良い?」

「ひぃ」

私血の気が引いてしまい、後ずさりました。
ナチとはまさに彼女のように弱い者いじめをするのです。

ケイスケさんは「やめろぉ」とか言いながら
妹さんを威嚇(いかく)しています。

「むしろあんたが、アントワネットをかばうのをやめろよ」

「だああああああああああああああああああああああああああ!?」

ただのビンタでした。もちろんミホさんの攻撃力ですから、
ケイスケさんは遠くのサッカーゴールの中へ飛ばされました。
実の兄だからか、かなり手加減したようです。

サッカーネットがクッション代わりとなり、怪我はしてません。
しかし網が手足に絡まり、なかなか出てこれないようです。

「これであんたを守る人は誰もいない。覚悟はいいかな?」

「まだ俺がいるぞ」

「ポト君? アントワネットを守るように
 立ちはだかってどうしたの?」

「俺はマリーが好きだ!! 俺は大好きなマリーのために
 盾になる!! 余談が多いのは俺も同意するが、
 もうこの作品を終わらせたいのはキャラの総意だ!! 
 それで気が済まないと言うなら俺を殴れよ!!

「殴らないよ。ぶっちゃけポト君は友達だし、うちの男子で
 唯一まともなキャラじゃん。すぐ終わるからどいてくれる?」

「いやだああああ!! 俺は元カンボジア共産党・
 中央委員会の代表だ!! 俺をなめるなよミホ!!
 俺は簡単にはやられないぞ!!

「フリーザにやられる前のベジータ状態なのに何言ってるの?
 足が震えているよ」

「こ、これは違う。リズムを取っているんだ。
 ダンスミュージックの聞き過ぎでね」

「はぁ。しょうがないな」

ナチ(ミホさん)は、張り手をしました。

そっと伸ばされた手は、
赤ちゃんの顔に触れる程度の優しい感覚。

ポト君は、ケイスケさんとは
反対側のゴールネットに突き刺さりました。

やりました!! ナチス党員・本村ミホ選手。
記録的な2点目を決めました。
ピョンチャンで金メダルを取った、
スピードスケートの選手と偶然にも下の名前が同じです。

向こうのミホさんは大英雄!! 
こっちのミホはただの暴力女!! 
しかもナチス(国家社会主義的ドイツ労働者党)党員!!
高校野球が強いのは大阪トーイン!!

この差はどこから出たのでしょうか。

慢心。環境の違い。

もしk…

「がはあぁぁぁああ!!」

私はPCにタイピングしてる間に拳を食らってしまいました。
まさかの奇襲攻撃を許してしまったのですか。

7メートルほど吹き飛び、服に着いた泥をはたいて
元の場所へ戻ってきました。まだ普通に動けるわ。
ミホさんが手加減してくれてよかった。

私は作者ですから、書いてる途中で殴るのはやめてください。

「私の悪口を書かないと気が済まないの?
 私ナチどころかドイツの位置すら分からないんだけど」

ミホさんはガチで怒っています。
もしかしたらフランスの位置も知らない可能性も…。

前にテレビで、女子高生の街角インタビューで
フランスの位置を聞いたら、アフリカ南部を
指したというのがありました。

私の祖国をバカにしてるんですか。
衝動的に画面にポテチを投げつけてやりました。
さすがにネタでしょうけど。

とにかく私も怒りました。
何を書こうと私の勝手でしょうが!!

「ぐ……」

ミホさんにボディブローを食らわせました。

「痛いじゃん。やっぱぶっ殺すね?」

痛かったのですか。その割には平然としているじゃないですか。
あとやっぱりとは。初めからぶっ殺すつもりだったのでh…

「きゃああああああああああああああああ」

また書いてる途中でぶっ飛ばされました。
どうでもいいですが、私は戦闘しながらどうやって
小説を書いているのでしょうか。

ノートPCを片手に持ちながら殴り合いを?
私ってずいぶん起用なんですね。

「茶番長すぎてマジでヤバいよこの作品。
 これが最終回の自覚ないの?
 あんたの作文が書きたいなら自分のノートにでも書いてよ」

「う、うるさいですわ。
 私が小説だと主張すれば小説になるのです」

「早く最終回っぽい展開を考えてよ。
 感動する話はないの? 『旅立ちの日に』を
 歌ったのが伏線とかじゃないの?」

「あれは気分ですわ。現実世界が卒業式シーズンだったので」

「シーズンはもう終わったよ!!

「いちいち細かいことうるさいんですわ!! 
 このドイツ女が!!

「私がドイツ呼ばわりされる理由がよく分からない。
 ドイツ語なんてシャイセ(ちくしょう)しか知らないよ」

「知ってるじゃないですか。たぶんエヴァの影響ですね」

「まだ元気そうだから、もう一発腹パンしてあげようか?
 そうしたら良いネタ思い浮かぶかもしれないね」

「ひぃ」

この目つき。やっぱりナチですわ。

ミホさんは私の体を踏みつけながら話しています。
土足で私の体を踏まないでくださる?

今の私は水槽に入れられた『ウツボ』みたいに
大人しく横たわっています。

何度も殴られて体にガタがきているので、
そろそろ病院に行きたいのですが。

「あんたばっかり男に人気なのもずるい。
 兄貴も次から次へと恋人変わるし。
 私だってカッコいい彼氏欲しい」

などとほざいてますが、ナチスと付き合いたい人など
世界中探してもいないでしょう。

魚と言えば。私は日本人に転生して初めてウナギを
食べましたが、あれ栄養価が高くておいしいですね。
今日の帰りにスーパーでうな重を買いましょう。

「余談ばっかり書いてるとまた怒られるぞ?」

突然現れた男性がそう言いました。
見覚えのある顔です。このさえない人は。もしかして……。

「勝負はここまでだ。決闘はミホの勝ち。
 これにてこの作品は検察側の勝ち!!
 目標は達した!! もう何もかも終わりにして楽になろう!!

作者さんです。生きていたのですね。
さんざん生前と書いてしまいましたが。

寝起きなのか、寝癖がすごいしパジャマ姿です。

「はっきり言おう。この作品で貞子はあんまり関係なかった!!
 この作品は家族の愛をテーマにしたのではなく、
 学校では教えてくれない歴史(ソ連など)を
 読者に知ってもらうための作文だったんだ!!

「今になって思うことは、この作品のジャンルを
 怪奇・ホラーから歴史に移動するべきだったということ!!
 なにせ近代史の話ばっかりしてるじゃないか!!

「確かに全く最終話っぽくないが、
 いったん切ろう。もう限界だ!! 何事も引き際が肝心だ!!
 ミホが彼氏欲しいとか言ってるが、たぶん無理だろう。
 でも次回のネタになるだろうから、あとで真剣に考えよう!!

ミホさんは怒りのあまり拳を握り、震えています。

「さっきから何言ってるんだよ。ふざけ…」

「文句はあとで聞くから」

作者さんは私の横に落ちているPCを持ち上げました。

そして『20代から中高年のための小説投稿サイト』を開きました。
最終回のタグにチェックマークが入っていることを
しっかり確認し、投稿ボタンを押しました。

お願いよ。待ってちょうだい。それをやったら本当に小説が……!!

「アントワネット。僕の代わりに小説を書いてくれて
 本当にありがとう。僕はこれから書き溜めした別の作品を
 投稿する。その作品が完結するまでの間はお別れだ」

ちょっとおぉぉっ……? 私の出番はこれで終わりなの!?

「大丈夫。年内に255のスピンオフを書くから。
 またアントワネットを主人公にしようと思う。
 それまでの間、辛いだろうけど我慢してくれ。
 じゃあ最後にこれを」

台本を渡されました。漫才をしろと言うのですね。

マリー「み、みなさん。さようなら。つまらない作文を
    読んでくれてありがとうございます。
    今作のつづきは……」

ミホ「続きは……?」

マリー「続きはWEBで!!

ミホ「ここがWEBだよ!!

         『午後2時55分に何かが起きる』 終わり
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