第46話 「親を切りなさい」の翌日のメール

文字数 843文字

「親を切りなさい」と電話でわめいた翌日の妻からのメール。

 明日とりあえずカウンセリングに行きます。
 本当に戻ってきて欲しいなら、お互いに歩みよりが必要だと思ってます。
 本当に私が部屋を借りて一人暮らししたら、会いたい時にメイちゃんに会わせてくれますか?
 何らかの理由で短い時間だったりするから、私には理解できない。この前も中途半端な時間だと言われたけれど、崇司さんが指定した時間に行ったのだから。
 崇司さんの希望通り私はカウンセリングを受けています。当たり前の話ですけど、メイちゃんに会いたいし遊んであげたいので、会わせる時間を作ってください。連絡してください。

「とりあえず」って、何なんだろう。カウンセリングの目的を忘れたのか。
「一人暮らしをしたら」って、戻りたいと言ったことも忘れてしまったのだろう。忘れたというより、すべて嘘だったのだろう。
 短い時間という問題ではなくて、根本から話が変わっていること自体、理解できなかった。
 娘を連れ去った彼女が、警察署でも平気で恐ろしいことを言うから、娘の身の危険を感じたから、カウンセリングを受けてほしいと言ったし、カウンセリングを受けるのが本来の希望ではなくて、戻って来たいと言うからカウンセリングを受けてほしいと言ったのに。
「歩み寄り」って、何なんだろう。娘に手を出すなって注意したところから、この問題が始まった。なんども騙されて、それでも娘のために我慢して、戻ってくることを望んだのに。この人の「歩み寄り」とは、結局、「自分は自分の衝動を抑えきれないから、お前らがすべて我慢して、私の異常さを受け入れろ!」という脅迫にこちらが屈することなのだろう。
 それにしても、なんでわざわざ部屋を借りたのだろう。翌年一月の調査官調査で三十代の調査官が、妻が部屋を借りた理由を私に聞いていたけど、聞く相手を間違えているし、それを調べるのが調査官の仕事じゃないのか。おそらくだが、一人で実家に戻るのが恥ずかしかったのだろう。
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