第16話 ふたりの女 II

文字数 7,485文字

「葉月、結婚したわよ。パパに報告してきた。あなたに伝えろってことね」
亜紀が僕の目を覗き込んだ。
「相手は?」
平静をよそおい聞く。
「おとうさんの会社の部下。後継者ね」
別れてから3年以上経つ。彼女との思い出のアパートはすでにない。小さなマンションに立て替えられた。
「あなたは……?」
「僕は夏生と結婚するからね」
「いつ?」
「いいの? 反対しただろ?」
「しないわよ」
「なんだよ、それ?」
 葉月と別れすぐにこの家に戻ってきた。情けない話だ。夏生のそばにいたかった。父は瑤子のことも葉月のことも知らない。亜紀が鋭い分あの男は鈍感で無神経だ。ママの暮らしていたアパートが取り壊されたことは知っているのだろうか? 父はあの道を車で通り、思い出に浸ったりするのだろうか? 

「夏生は三沢家の嫁にはできない」
亜紀の言葉を真に受けた。あれは、罰だったのか? 早夕里の危篤のときに葉月と……耽っていた。あれは、なりゆきと責任と性欲処理……葉月に言われたが、あれは愛だ。愛していた。葉月も夏生も同時に愛していた。
「なるほどね、そういうこともあるわ」
亜紀はすべてお見通しだ。葉月と結婚できないことも、僕の夏生への気持ちも、僕よりわかっていた。
 別の部屋を借りて夏生と……というわけにはいかなかった。時間を貯めて夏生との結婚を許してもらわなければならない。
 反対しないわよ……簡単に言うなよ。どれぼど悩み考えたか? 病院の前に生後1週間ほどで捨てられていた夏生。名は付いていたという。夏生まれだから夏生。捨てた親はどんな人なのか?
 父にも言ってあるのだろうか? 橘家の夏生は僕と結婚する。夏生の顔に大きな傷をつけてしまったときから、それは決まっていた。橘家の娘なら反対はできないが……
 父は母のために家を捨てた。母は貧しかったが捨て子ではなかった。話し合わなければならない。あっさり許してくれるのだろうか? 許されなければ勿論夏生を取る覚悟はできている。
 夏生は諦めていた。僕の気持ちさえ疑った。早夕里の1周忌が終わり気持ちに区切りがついたとき夏生は20歳になっていた。誰もいない家に夏生を呼んだ。それまで僕たちは抱き合い軽いキスをするだけだった。夏生は誤解した。深い関係にならないのは結婚できないからだ、と。夏生は自分の出生を恨んだ。どんなときにでも強く前向きだったのに。何度絶望に打ちひしがれたことだろう? 1番辛い時期に力になっていたのは和樹だった。僕は彼との仲を誤解し美登利と付き合っていた。
「ドリーなら、ちゃんとした家の子なのに壊してごめんね」
何度か夏生は蒸し返し僕に叱られ泣いた。僕は母の形見のダイヤを見せ指輪のサイズを聞いた。
「いらないわ。そんな大きなダイヤ」
「早夕里の遺言だ。夏生と結婚して女の子が生まれたら早夕里って付けてって」

 夏生の望んだ深い関係になったとき、腕の中で夏生が話した。おとぎ話のように。
「私はちゃんとした家の娘なの。エーちゃんと釣り合いが取れる家の娘なのよ。同じ日に生まれた子がいて取り替えられたの。その子はかわいそうな子で産んだ母親は出来心で取り替えちゃったの。もうひとりの夏生は私の本当の両親に育てられている。大切に」
「ドラマみたいだな」
「事実は小説より奇なり」
「では、僕は感謝しよう。君を誕生させてくれた両親と取り替えて僕の元によこしてくれた哀れな女に」
涙もろくなった夏生は自分で言い出し泣いた。
「捨てられた子はもうすぐ三沢夏生になる。もっともっと深い関係になるよ」

 アパートは小綺麗な建物になっていた。ここで葉月と過ごしたのは短い期間だった。もう葉月はこの道を2度と歩きはしない。
「あなたは長生きするわ。私たちの子はH高で出会って恋をするの」
そんなようなことを言ったな。突拍子もないバカげたこと。しかし、父の愛した女性の娘を僕は愛した。愛し合った。愛し合った……
 過去だ。過去の話だ。愛した女は他の男のものに……美登利は信也とうまくやっているようだ。考えられない組み合わせだが愛とはそういうものなのだろう。真希は靖と結婚した。(こう)……香はもうふたりの娘の母親だ。幸せそうだ。実家に住み夫と父親とも仲良くやっている。ときはめまぐるしく過ぎていく。マリー……マリーはどうしているだろう? 治を愛したマリー。邪魔者は僕だった。潔く諦めていたら……今頃マリーは治と……幸せになっていたはずだ。あんなにいいやつはいない……

 治はなにを知っていたんだ? 三沢家のなにを? 
 靖を階段から落とした。靖は柔道をやっていて受け身がうまかった。僕は落ち方を教わっていた。落ちたときのために。なぜ? 記憶が戻らない。頑丈に蓋をした。思い出したくない時代……母が出て行った前後の思い出したくない記憶……僕は階段が怖い。家の階段が。ドラマのせいなのか? 転がり落ちる女主人、犬だけが突き落とした犯人を知っている……
 
 夏生と休みが合うと朝早くに別荘に行き、和室に布団を敷いた。夏生はふたりだけの時間を喜んだ。貪欲だった。まるで終わりが近づいているかのように。布団からはみ出し疲れて眠る。
 キッチンで水を汲んだ。マリーは飲まなかった。生水は飲まなかった。何か引っかかる。あの潔癖症。極端に恐れた。粘膜の接触。まるで病気を移されるのを恐れるように……
 夏生は眠っていた。しばらくは起きない。僕は2階の立ち入り禁止の部屋に入った。窓を開ける。マリーは……マリーの気持ちがわからなかった。時が過ぎても理解に苦しむ。マリーは治と僕を同時に愛していた。僕の付属品……家と財産、そんなもののために僕を選ぼうとしたのか? 母親のために条件の良い男を選ぼうとしたのか? 
「破産してしまえばいい」
思わず夏生の口から出た過激な言葉……夏生に家と財産は必要ない。母にも……
 母は嫌いだったはず。出入りしていた口のうまい男たち。叔母さんたち、着物、バッグ、大きなダイヤ……お世辞。
 母は庭で祖父が大事にしていたバラの世話をし空を見上げた。
「田舎に帰りたい。帰ろうか、英幸(えいこう)
「僕はここがいい。おばあちゃんはおもちゃもゲームもなんだって買ってくれる」
 バキッと音がした。僕は捨てられた。ゴミ箱に投げ捨てられた……
「ママも買ってもらいなさい。友達も、お嫁さんも買ってもらいなさいね」
 
 夏生は眠っていた。布団をはだけて。鎖骨がきれいだ。手足が長い。夏生の想像は常軌を逸する。
 夏生を産んだ母親はレイプされたのかも……誰にも知られずに産んだのかも。それとも犯罪者、殺人者の子かも、それとも……それともどこかのすごいお嬢様だよ。前に言っただろ? 取り替えられたんだ。それとも、それとも外国人の血が混ざってるかも……日本人離れした体型、音感、運動神経、厚い唇……何代前か……黒人の子が生まれるかも……突拍子もないこと言うなよ。だから、結婚しない。

「クソッ、もうこんな時間か」
起こした夏生の額にデコピン……夏生は思い出す。
「しょうがない。起きるか」
勢いよく起き上がりバスタオルをつかみシャワーに向かう夏生を連れ戻した。
「帰りが遅くなる」
忘れられないか? プラトニックだったから余計……いいやつだったから、思い出にすることだけは許してやる……口には出さないが……
 長い足を開かせる。ありえないくらい開脚する。ありえない体位に笑う。嘘……幻想……ではない。夏生は集中し、汗を流しハイになる。僕たちは互いの分身。どこまでが僕でどこからが君なのかわからない。帰りが遅くなるが……夏生はすべてを忘れた……

 帰りは夏生が運転した。ラジオからピアソラが流れた。
「いいな。タンゴが?」
「アルゼンチンタンゴ」
ダメだ。眠りに落ちていく。
「和樹のことは忘れない。でも、私より忘れない女がいる」
「……?」
「彩。エーちゃんがドリーを送って行ったあと、彩は和樹にべったり。ボートで結婚の約束してた。背が高くてお嫁のもらい手なかったら和樹がもらってやるって」
「和樹か……パパにも亜紀にも好かれていた。あいつにあとを継いでもらおう。僕は別荘だけ貰おう。あそこで暮らそう。畑でハーブを育てる」

 彩のコースデビュー。父は急用で行けなくなり、亜紀は僕と夏生を誘った。目立つ3人の女。彩はとても中学生には見えない。夕べは癇癪を起こした。楽しみにしていたのに父は急用を優先した。父は最初謝ったが、しつこい娘に声を張り上げた。
「見かけより中身を磨け」
最後に父は言い放った。彩は泣いて自室にこもった。初めての父と娘の喧嘩。僕と父の間にはなかったものだ。
 彩は背が高いことがコンプレックスだった。父のひとことでそれ以来口にすることはなくなった。贅沢な悩みだ。運動神経もいい。数カ月の集中レッスンでゴルフもすぐに上達した。

 見られている。誰を? 僕は慣れているが……朝の受付から感じていた。その男が見ているのは夏生だった。今は食堂の隣の席から……夏生は……個性的だ。きれいだと思う。頬の傷があっても。スタイルもいい。葉月が羨ましがっていた……ほどいた長い髪も美しい。少女時代ショートカットだった夏生は長い髪をアレンジして楽しむ。器用だ。和樹が見たら驚くだろうな。
 男は夏生を目で追う。若いが年配者におだてられている。美形だ。夏生が席を離れると話しかけてきた? 
「ナツオさん」
「……はい?」
「森……さん?」
「違います」
「失礼。知り合いに似ていたもので……」
男は離れて行った。今の会話……
「モリ ナツオ? そういう知り合いに夏生が似ているってこと?」
さすがは亜紀だ。僕と同じことを考えている。いずれ妻になる夏生の未知の部分は……産んだ母親……

 夏生が橘家にもらわれていなければ……
 母は出ていかなかった。僕は罪を犯さなかった。父も変わらなかった。幸せな生活は続いていたはずだ。
 いや、考えられない。夏生のいない今まで……なんて。いてくれてよかった。夏生がいなければ……亜紀も獣医のままだ。義母にはならなかった。考えられない。過去のすべてに夏生がいた。

 夜、パソコンの前で考えた。橘 夏生23歳。早夕里が亡くなり4年経つ。彼女は祝福してくれるだろうか? 女の子が生まれたら自分の名をつけてほしいと言った。
 
 道路を隔てた家で眠る夏生。僕は眠れない。疲れているのに。心地よい疲れだ。満たされている……
 いや、ひっかかっている。モリ ナツオ。森 夏生……
 パソコンをいじる。森 ナツオ……該当するものはない。思いつきで……林 夏生。ヒットした。夏生と同じ歳。夏生より7日早く生まれた女。夏生は病院に捨てられた日が生年月日になっているのか? 
 林 夏生。アルゼンチンタンゴの講師。幼少よりバレエを始め、定期公演、イベントに出演、活躍中……写真が出ていた。美しいダンサー。この女はゴルフ場で会った男の知り合いか?
 
 ドアがノックされ亜紀が入ってきた。
「さすが親子ね。考えることは同じだわ」
「亜紀も?」
「どういうことだ思う?」
「夏生が似ている。あの男の知り合いに。誰にだ?」
「この子の親だわ。それか兄弟姉妹」
「それは、どういうこと?」
「夏生が林 夏生ってこと。この子は夏生を捨てた人の娘」
「それは……どういうこと?」
「同じ病院で生まれたのよ。同じ日に。故意に取り替えた」
「まさか、何10年も前ならよくあったらしいけど……」
「赤ちゃんの足バンドははずれることもある。落ちてたこともあるって。足の裏にマジックで書いたかもしれない。たとえば横書きの林ベビーは木村ベビーに書きかえられる。木村は林に……
「じゃあ、犯人は木村? 突拍子もないこと言うなよ」
「あの男はこの子の恋人?」
「間違った推理だよ」
「調べるわよ。林 夏生。調べさせるわ。反対?」
 
 亜紀は興信所で調べた。林 夏生。
 1枚の写真がすべてを物語る。ゴルフ場の男が声をかけずにいられなかったはずだ。林 夏生の母親は橘 夏生にそっくりだった。
 夏生には兄がふたりいる。春生に秋生。
 夏生が生まれた当時は小さなスーパーを経営していた。そのスーパーが今では店舗を増やし業績を上げている。
 おそらく病院で取り替えられた。故意に。故意に取り替えたあと、母親は夏生を捨てた。自分の娘に家族を与えて……
 想像が膨らむ。時間をおかず生まれたふたりの娘。恵まれた娘の名前は決まっていた。兄は春と秋に生まれ、待望の娘は夏生まれだからナツオ……そんなことを話したか聞いたのではないか? せめて名前だけは親のつけてくれた名を残してあげようと……
 ダンサーの娘はなにも知らない。恵まれた家族、特技を仕事にしている。

 見過ごしていればよかった。調べたりしなければよかった。想像通りだとしても、夏生は傷つかない。本当の両親は夏生を捨てはしなかった。待ち望まれた娘だった。しかし……もうひとりの娘は?
「とりあえず……タンゴか? 習いにいってみる?」
「亜紀がいけよ」
「1対1のレッスンよ」
 予約を取る。土曜の午後に。亜紀とふたり。

 土曜日の午前中、橘家の後方に外車が停まっていた。僕は窓から見ていた。運転席の若い女は降りて橘家の様子を伺う。あの女だ。写真のダンサー。サングラスをかけているが間違いない。女はなにもせず諦め車に戻った。その時にこちらを見た。視線に気づいたか? 目が合ったはずだ。車は動き出す。亜紀はいない。僕は追いかけた。家の住所は調査済み。離れてあとを追いかけた。気づかれてはいないだろう。着いた邸宅。事業に成功した夏生の両親。ここは夏生の家だ。
 女は駐車場に車を止め玄関に入る時に僕に気づいた。互いに知っていることを知った。女はサングラスを外した。苦悩の色が見えた。
「林 夏生さん?」
「どうして?」
あとは言葉にならなかった。もうひとりの夏生は僕の車の後部座席に座り僕は車を出した。大きな公園の駐車場に止め外に出た。ベンチに座り自己紹介した。橘 夏生の婚約者だと。
「私と同じ名前なのね」
彼女はしらばくれた。
「あなたと同じ名前、同じ生年月日」
「同じではないわ」
「同じ日に生まれた」
彼女はため息をつき観念した。

 家に電話がきた。誰もいなくて彼女が出た。病院からだった。……木村さんの娘さんですか? 聞き取れなくて間違いだと思った。
「延命処置どうしますか?」
「なんの冗談?」
押し問答の末、彼女は病院を尋ねた。幼い頃から両親、兄たちに似ていないのは感じていた。
 意識不明の女は奇跡的に回復した。会いにきてくれた娘にすべてを話した。出産間際に父親は殺された。くだらない喧嘩で。どうしようもない男だった。出産のとき衝立1枚の向こうで先に産んだ女がいた。あとから運ばれてきたのに3人目だから、と早かった。ほどなくして父親のいない娘も生まれた。
 出産のあと、隣の幸福な母親は話した。夏生にするの。兄は春生に秋生。単純ね。待望の女の子よ。
 待ち望まれた娘、それに比べて自分の娘の将来は? 
 林ベビーと木村ベビーは身長も体重もたいして違わなかった。髪の量も。足につけられた名札。マジックで書かれた木村ベビー。木と村の間が詰まっていた。下手な字だった。寸を消してしまえば……魔が差した。誰も見ていなかった。修正ペンがあった。

 彼女の携帯が鳴った。彼女はすぐに出た。
「……そんな」
電話を切り
「危篤だって」
呆然とした彼女を病院に連れて行く。母親はすでに息を引き取っていた。
 病院で見知らぬ女の遺体に対面した。ふたりの夏生の運命を変えた女は誰にも悲しまれずに逝った。
「ひどい。どうすればいいの?」
僕は合掌した。
「ひどいけど……感謝します。あなたのしたこと。夏生に会わせてくれたこと……」
「あなたの婚約者を私の……両親と兄に会わせてあげて。私の預金も株も、車も私のものすべて、あなたの婚約者に」
「……僕の夏生はそんなもの欲しがらない」
「……私は、ひとりで生きていける」
「彼は?」
「彼? 彼は私を捨てるわ。ブランド好きだもの」
彼女は涙を拭き席を外した。化粧を直しに。そしてそのまま戻ってこなかった。
 亜紀が駆けつけてきた。遺体と取り残された間抜けな僕を見て呆れた。娘は戻ってこなかった。亜紀がテキパキ動いた。葬儀場の霊安室に遺体を保管してもらい、橘夫妻に話すべきか迷う。
 もうひとりの夏生は戻ってこなかった。事情を知っているのは僕と亜紀だけだ。いや、あの男は? もうひとりの夏生と付き合っているゴルフ場で会った男。苦労知らずに見えた男はどうするか?
 
 翌日橘家に客があった。僕は仕事にもいけず亜紀と相談していた矢先の事だ。夏生は仕事に出ていた。夏生の産みの親が訪れた。もうひとりの夏生から電話があったという。橘夫妻は僕に打ち明けた。もうひとりの夏生は行先知れず。親は心配のあまり憔悴している。打ちあけられた真実の衝撃もだが、育ててきた娘の安否を1番に心配していた。
 最初から裕福だったわけではない。事業がうまくいかないときもあった。でも娘の寝顔を見ると頑張れた。夏生は……頑張り屋で、決して諦めない子だった。あの子に、力をもらって生きてきたんです。私たち両親は……あの子は、強い子だ。早まったことはしない。頭を覚ましたら、帰ってきます。私たちの娘は……

 23歳になる娘がどこでどうしているか? 生みの親の遺体を残したまま……いつまでもそのままにしておくわけにはいかない。
 夏生には真実は告げられなかった。もうひとりの夏生が戻るまで。

 育てた母親が言った通り、霊安室に彼女は戻ってきた。ゴルフ場で会った男と一緒に。僕たちより先に真実を調べていた彼は、ふたりの思い出の場所に迎えに行き、すでに籍を入れていた。もうひとりの夏生は親の戸籍から抜けていた。

 そのあとは慌ただしかった。ふたりの夏生が会う。運命を変えた女を火葬する。夏生は僕の胸に。もうひとりの夏生は夫の胸に抱かれて泣いた。2組の複雑な両親も夏生も、1番に望んだのはもうひとりの夏生の幸せだった。

 夏生が夏生の衣装を作った。取り違えられた娘が本来の自分の家に行き、親と兄たちに会い、取り違えられた娘のために腕を振るう。互いに生きがいがあってよかった。
 ダンスフェスティバル、彩も連れて行った。彩はもうひとりの夏生のダンスを真剣に観ていた。
「おまえも踊ってみたくなったか?」
「男の方をね。兄貴は女装するのよ」
「いい加減に忘れろ」
彩は忘れない。和樹のことを。たったひとつのコンプレックス、幼い頃に優しくしてくれた男はいまだに彩の王子様だ。
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