第1話幼馴染と僕の同居生活

エピソード文字数 1,755文字

「おい、起きろ」

僕が大きな声で言う。

すると、叶絵(かなえ)が階段を跳ぶように降りてくる。

「おはようございます 」

「あぁ、おはよう」

「はぁあ 」

叶絵がその小さな口を開けて、可愛らしくあくびをするのだった。

「さてさて私はお腹が空いてきましたよ 」

「朝ごはんならあそこに置いてあるぞ 」

「流石そっくん、やはり行動が早いですね 」

叶絵のテンションが朝だと言うのに、やけに高い。

「テンション高いけど、なんかあったのか?」

「はい、今日もそっくんと会えましたよ 」

「聞いて損した 」

「またまたぁ照れちゃって 」

「朝ごはん、早く食べなきゃ冷めるぞ 」

「ひどい、聞いてくださいよ」

叶絵が、ゆっくりと席に着く。

僕と叶絵は、幼馴染だ。
それもただの幼馴染じゃない。
僕と叶絵は同居しているのだ。

同居?どうして?

それには深い事情が…………いや深くないのだろう。


偶然か必然か、僕と叶絵は同じ高校に行くことになった。

しかし、その高校は中学から15キロメートルほど離れた山の端にポツンと立っているいわゆる田舎の高校だったのだ。

お互い、家から登校できるはずもなく、僕らは高校の近くにあるマンションに二人で住むことになった。

親は許可したのか?
当然だ。

僕の両親は「いんじゃね」と許可を出し、

叶絵の両親は「そっくん?ならオッケー」と二つ返事で許可を出した。

いくら幼馴染だとしても、娘が男と同居することを、そんな簡単に許してしまっていいのだろうか?

僕のそんな疑問をよそに着僕らの同居ライフは着実に行われているのだった。

「ほぉ、それにしても、この朝ごはん美味しいですね、そっくんを私の専属シェフにしてあげましょう 」

叶絵が感心しながら、言う。

「お前は何処ぞのボンボンか 」

「将来宝くじで七億当てて大金持ちになりますから 」

「そんなちっぽけな希望にかけるより、ちゃんと働いて金持ちになれよ 」

僕は呆れた目で叶絵を見る。

「ふっ、そっくんもまだまだ私のことをわかっていませんねー、私が働くわけないじゃないですか 」

叶絵は誇らしげに言うのだった。

「いや働けよ」

「宝くじが当たらなかったら、そっくんに一生養ってもらいます 」

僕は将来のビジョンを浮かべる。

「いや、養わねーし、働けよ、それに僕は奥さんとペットの犬で手一杯なんだ 」

「何言ってるんですか、そっくんは私と結婚するんですよ 」

叶絵がキョトンとした顔で言う。

「いや、お前とは付き合わないって言っただろ 」

「ふん、そーですか、そーでしたね、そっくんは私を娘にしたいのですもんね 、やはりそっくんは変態クズ野郎です 」

「あぁ、そうだ 」

「え、えぇ、少しは否定してくださいよ 」

「したいもんのはしたいんだ 、しょうがないだろ 」

「そっ、そっくんは常識人キャラ枠なんですよ 、そんな変態なこと言わないでください 」

「勝手に僕を常識人の枠にはめるな 」

「な、ならいーでしょう、分かりました。私は今からそっくんをお父さんと呼びましょう 」

「ホントか? 」

「はい、もちろんです。家でも、学校でも、どこでも呼んで見せましょう 」

え、今なんて言った?学校?

「おい、学校では絶対呼ぶなよ 」

「えー 」

「頼むから呼ばないでくれ 」

「しかたがないですね、おとう、そっくんの言うことですし聞いてあげましょう。 」

「おい、今お父さんって言いかけたよな?
絶対外では呼ぶなよ 」

僕は必死になって言う。

「さてさて どうでしょうか? では時間もないことですし、学校に行きましょうか 」

そう言うと、叶絵はにやけ顔で玄関へ向かって行く。

「おい、それ呼ばないってことだよなぁ?おい!」

ガチャ

叶絵はそっと玄関の扉を開くのだった。

「そっくん父さん、早く私を止めなければこの軽い口が全てを言いふらしてしまいますよ 」

叶絵は笑いながら家を出ると、すぐに走って学校へ向かってしまう。

「あ、あの野郎」

同居生活も悪くないなんて思ってもいたが存外大変なものだ。












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