第1話

文字数 880文字

 収穫の秋だ。
 先日、大学時代の後輩と酒を飲んだ。彼は数々の武勇伝ならぬ酒勇伝の持ち主だ。ちょうど二人で4合瓶を一本ずつ空けた頃、彼は塩おにぎりを注文した。
 「…? どうしたのか?もう酒の〆か?」「とんでもない、米を肴に日本酒を飲むのって凄く合うんですよ。」それからはおにぎりを頬張りながら、飲むは飲むは。お茶漬けをすすりながら飲むは飲むはで、それはそれは大変だった。
 後日、地元の造り酒屋の(あるじ)に、米を肴に日本酒を飲む話について意見を聞いてみた。彼は一瞬空を見上げて沈黙した後、「澱粉(でんぷん)(米)を澱粉(酒)で飲むのは分かるけれど、相性が良過ぎて飲み過ぎて体を壊しますよ。」と。きっとコメを(さかのぼ)って行く先と、日本酒を遡って行く先が、同じたわわに実った稲穂にたどり着いたのだろう。
 成る程、物事にはルーツが大切なのだと痛感した。自分は日本酒のつまみは塩が一番だが、ん~、酒道の奥は深い、と妙に感動した。
 さて、米を食べて日本酒を飲んでばかりいるとどうなるか?造り酒屋の主が言った「体を壊しますよ。」の内容は…。
 ここからは少し、健康の話をする。
 採血で、中性脂肪(TG)値が上がる。(ふと)る。血圧が上がる。血糖値が上がる。尿糖が出る。ここまでで既に脂質異常症、高血圧、糖尿病と病気が3つ。
 体の中では、動脈硬化(特に粥状硬化(じゅくじょうこうか))が毎日確実に進行する。やがて閉塞性動脈硬化症の症状が出現、そしてある時予告もなく心筋梗塞、脳卒中、急性大動脈解離など…。
 皆さん、健康診断の結果をもう一度見て、中性脂肪(TG)の数値を確認しましょう。その値が正常を超えている人はぜひ、外来受診をお勧めする。全身の動脈硬化の進行具合のチェックが必要だ。美味しく酒を飲み続けるには、普段からの体のメンテナンス(保守・点検)が大切だと思う。
 さて写真は、地元の寿司屋で撮影した巻物の盛り合わせだ。

 メニューに「酒のつまみに」と書かれていて、つい注文してしまった。実はこれが地元産の淡麗辛口の「杉勇」の冷酒とホントに合うのだ。米を肴に酒を飲ませる、この店は只者ではない…。
 んだんだ!
(2015年11月)



 
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