1 ✿ ラルフのおごり

文字数 1,066文字

日本を発つため、タクシーで空港へ向かったジョン。


車内から雨天を見つめる彼は、物鬱げだ。

(日本を離れるのがつらい。咲良さんのいる、この国から……)

涙雨の降る中、後ろ髪を引かれるような心地で空港へ行くと。

今夜零時の便に変更だってさ、ジョン
神様が悪戯をしたように、現地の天気と航空会社の都合で、便に遅れが生じていた。
今夜零時……ですか。
ま、こればっかりは仕方ないね~
魔法で空は飛べても、シンガポールまではもたねぇしな
捜査官たちには慣れたことだ。

で、どこ行く?

今日一日、になっちまった。

僕は、美味しいものが食べたいなぁ

それじゃ、行こうか。


うまいもの、おごってやるよ。

本当ですか!?

ラルフさん、太っ腹~!!

ラルフに連れられ、彼らが向かった場所は……。
ラルフさん、ここは……
なんと警視庁だ。

ちょっと忘れ物があったんだよ。

みんな、ついて来い。

ラルフたちは、警視庁へ入る。


向かったのは、鞍馬(くらま) (まさる)たちのいる部署だ。

おおっ、助かる!

みんな、手伝いに来てくれたんだな!

事件後は書類整理が大変なんだよ。

ささ、こちらへ。

どーぞ、どーぞ!

だまされた!
(めし)は!?

おまえら、ホテルで朝食をもりもり食ってただろ。

もう8時ですよ?


僕の空腹時間サイクルなんです。

おまえはなにか、間違ってる
捜査官たちは、積み上げられた書類の前に案内された。
みんな、おかえり
コーヒーをどうぞ

学と智子が、コーヒーを運んできた。


捜査官たちは、黙々と書類作成と整理を始めた。


12時を回る頃。

Finish.
え!? ジョン、もう終わったの? 早!!
先に、ちょっと休憩行ってきます

ジョンは席を立ち、ソファに腰かける。


ミルクティーを飲みながら、窓の外を眺めた。

次に、この街に来られるのはいつでしょうか…

多忙の合間を縫って時間を作るか。


事件が起こりこの街へ呼ばれるか。

( 咲良さんの住む街で、危険な事件は望まない 彼女の日常が平穏でありますように

祈りながら、カップを握る手が強張る。
いつか必ず早く会いにこなくては
焦り、鼓動が早まるのはなぜだろう。
もう一度、咲良さんに会いに行けないだろうか
けれどジョンは、静かにかぶりを振った。
まだ日本にいると知ったら驚くでしょうね。――なんだか、言いにくいです)
お、ジョン。そこにいたか
ラルフさん。お疲れ様です
飯食いにいこーぜ。約束通り、俺のおごりだ

さぁ、行きましょう、行きましょう!

ラルフさんのおごりで。

マルコ。うなぎでも寿司でもたらふく食っていいそうだ。

さあ、行こう行こう。

ラルフさんのおごりで。

おまえら。
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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