はじめに
文字数 675文字
祥子の人生には、周囲のヒソヒソ話や、意味深長な言動を投げかけられることが多かった。それを祥子は社会とはそんなものだと呑み込んで生きていた。ところが自分が性被害の渦中の人物であったのだ。
祥子は過去に意識を集中させると強い頭痛と共に過去が再現されるのであるが、祥子のように過去が場面として蘇ることを精神科医は「長期記憶」の持ち主で珍しい脳のなのだと言った。
祥子は、自分の脳が「長期記憶」の持ち主ならば、過去の意味深長を繋げれば犯人像が浮かび上がるはずだ、のうのうと生きている猥褻な者たちを奈落の底に突き落としてやりたいという一念から過去を探る日々が始まった。
ただ、次々に紐解かれる真実はセカンドレイプの類だけではなく、ワルシの狂気性、病院の組織ぐるみの隠ぺい、自殺した青年などが見えて、更には眠らされている時に聞いていた声までが蘇り、祥子はフラッシュバックにPTSD、錯乱状態に陥ることとなった、しかし日頃から書くことを趣味にしていたので、書かずにはいられなくて、書いて書いて、書くほどに、そして推敲を重ねて文章が読み易くなるにつれ、正常な呼吸を取り戻すことが出来た。
これは薬剤師「ワルシ」を白日のもとに晒すとともに、性被害を乗り越えた記録であり、且つ、現代の性犯罪に即していない刑法に異論を唱えるものであり、警察への檄である。