はじめに

文字数 675文字

 主人公の祥子は21歳の頃に生理痛で受診したS病院婦人科で盗撮され、それに連鎖するようにレイプドラッグと、その時のAV撮影被害にも遭っていた。そうとも知らず平凡な日々の暮らしの中で55歳になって初めて知ることとなる。

 祥子の人生には、周囲のヒソヒソ話や、意味深長な言動を投げかけられることが多かった。それを祥子は社会とはそんなものだと呑み込んで生きていた。ところが自分が性被害の渦中の人物であったのだ。

 祥子は過去に意識を集中させると強い頭痛と共に過去が再現されるのであるが、祥子のように過去が場面として蘇ることを精神科医は「長期記憶」の持ち主で珍しい脳のなのだと言った。
 祥子は、自分の脳が「長期記憶」の持ち主ならば、過去の意味深長を繋げれば犯人像が浮かび上がるはずだ、のうのうと生きている猥褻な者たちを奈落の底に突き落としてやりたいという一念から過去を探る日々が始まった。

 ただ、次々に紐解かれる真実はセカンドレイプの類だけではなく、ワルシの狂気性、病院の組織ぐるみの隠ぺい、自殺した青年などが見えて、更には眠らされている時に聞いていた声までが蘇り、祥子はフラッシュバックにPTSD、錯乱状態に陥ることとなった、しかし日頃から書くことを趣味にしていたので、書かずにはいられなくて、書いて書いて、書くほどに、そして推敲を重ねて文章が読み易くなるにつれ、正常な呼吸を取り戻すことが出来た。

 これは薬剤師「ワルシ」を白日のもとに晒すとともに、性被害を乗り越えた記録であり、且つ、現代の性犯罪に即していない刑法に異論を唱えるものであり、警察への檄である。
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登場人物紹介

祥子・・55歳~57歳、温厚な性格の夫と、成人になった二人の子供と猫との4人と1匹の家族、独身の頃は看護師をしていたが結婚退職の後は専業主婦、その後起業した夫の会社で働く、手術を要する病気2回(一つは癌)を乗り越え、仕事と家事の合間に短歌、作文、絵、神社仏閣巡りなどの趣味を嗜む

敬寿・・祥子の夫(59歳~61歳)41歳で起業する、その頃は祥子の看護師復帰を反対するほどワンマンではあったが、祥子が病気になってからは祥子の身を案じ、家事も手伝い、ワンマンさは消える。寡黙でありながら家族から尊敬されている。趣味は釣り、祥子の付き合いで神社仏閣巡りにも行く。

二木輝幸さん・・青年のシルエットが祥子の瞼の裏に現れて訴えかけてくる。その後名前が分かる、祥子は「輝君」と呼んでいる。

大黒仁志(おおぐろひとし)/別名「オオ、ハラ黒ワルシ」・・薬剤師、祥子とはK病院時代からの知り合いであるが、祥子がK病院を退職した同時期に、独立して調剤薬局の経営者となる、今ではS県内に10店舗経営しているが、裏稼業にレイプドラッグ及び強姦映像の販売をしている。悪行を企てている時の目がランランと光りテンションが高い、一見して明るく社交的で饒舌、リーダーシップを発揮するために頼りがいのある人物に見間違えるが、女性を嵌める為の機を窺っていて、巧みに嘘を重ねる。

夏美・・大黒仁志の妻、祥子とは看護学生時代の同級生であり、K病院では同じ病棟で働いたいた同僚でもある。

六林婦人科医・・この物語では過去の人物としてしか登場しないが、六林医師の盗撮がなければ、祥子はワルシに狙われる事はなかった為に重要人物である。

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