二日酔い:和匡と瑞希
文字数 1,189文字
昨夜のライブから十数時間経ち、朝日はとっくに昇りきった時間。和匡 はメッセージアプリの通知音と、二日酔いからくる頭痛で目が覚めた。
寝巻きはオフホワイトのフランネルシャツに、ブラックカラーのスキニージーンズと昨夜とまったく変わらない格好だった。
ベッド横のサイドボードに手を伸ばし、スマホを手に取って通知を確認する。
メッセージを送ってきたのは、和匡がよくサポートドラムの手伝いをしているアーティスト、『いとおかし』の『ミナヅキカナデ』からだった。
「カナさんからだ」
通知ボタンをタップしメッセージアプリを開いて、メッセージを確認する。既読マークが表示された。
【おはよう】
【昨晩は打ち上げでたくさん飲んでたけど、二日酔いとか大丈夫?】
【部屋に放り込んだ後、瑞希 くんが介抱してくれたみたいだから、お礼しておいてね】
最後の一文で思わず体を起こした。
(瑞希くんが? さすがに部屋まではカナさんが一緒に手伝ってくれたと思うけど……)
どうやって自宅まで帰ってきたかは覚えていない。打ち上げの席でサポートベースの瑞希とカナデと一緒にいたのはハッキリと覚えている。
「マジかよ、あとで瑞希くんに連絡しなきゃなあ」
あくびをしながら、ブランデーブラウンに染めたベリーショートをかきむしる。頭痛は治まってくれない。
ベッドから離れて、クローゼットから部屋着を取り出す。
「どちらかと言えば、俺が瑞希くんを介抱したかったんだけどなあ……」
瑞希は、色白で容姿が良く、謙虚な性格で、カナデや他のサポートメンバーから可愛がられている。
「でもアルコール飲めないって言ってたし、そんな機会ないんだろうな……」
クローゼットを閉め、スマホを置こうとサイドボードに目をやると、いつも作業場で使っている水色の付箋 が一枚貼られていた。
【タオルケット、お借りします。 瑞希】
ボールペンで書かれた、丸みのある字体。目で文字を追い、視線をはずす。
和匡はまさかと呟いて、寝室を飛び出しリビングへ急いだ。
リビングにあるお気に入りのネイビーカラーのソファーには、ベージュのタオルケットでできた繭 があった。
いや、瑞希が寝室にあったはずのタオルケットに包まって寝ていた。
介抱してくれたとはカナデから教えてもらった。まさか、泊まり込んでまで介抱してくれるとは思わなかった。
和匡はソファーのそばでひざ立ちになって、瑞希の寝顔を困ったように笑みで眺めた。
「そこまでしなくても、俺は大丈夫だよ」
静かに寝息をたてる、瑞希の甘そうなミルクティーカラーの猫っ毛をやさしく撫でる。
「朝ごはん作ったら起こしてあげるからね」
そう呟いて、立ち上がり浴室へと向う。
二日酔いするのもいいものだなと、昨夜の自分に感謝した和匡だった。
(終)
寝巻きはオフホワイトのフランネルシャツに、ブラックカラーのスキニージーンズと昨夜とまったく変わらない格好だった。
ベッド横のサイドボードに手を伸ばし、スマホを手に取って通知を確認する。
メッセージを送ってきたのは、和匡がよくサポートドラムの手伝いをしているアーティスト、『いとおかし』の『ミナヅキカナデ』からだった。
「カナさんからだ」
通知ボタンをタップしメッセージアプリを開いて、メッセージを確認する。既読マークが表示された。
【おはよう】
【昨晩は打ち上げでたくさん飲んでたけど、二日酔いとか大丈夫?】
【部屋に放り込んだ後、
最後の一文で思わず体を起こした。
(瑞希くんが? さすがに部屋まではカナさんが一緒に手伝ってくれたと思うけど……)
どうやって自宅まで帰ってきたかは覚えていない。打ち上げの席でサポートベースの瑞希とカナデと一緒にいたのはハッキリと覚えている。
「マジかよ、あとで瑞希くんに連絡しなきゃなあ」
あくびをしながら、ブランデーブラウンに染めたベリーショートをかきむしる。頭痛は治まってくれない。
ベッドから離れて、クローゼットから部屋着を取り出す。
「どちらかと言えば、俺が瑞希くんを介抱したかったんだけどなあ……」
瑞希は、色白で容姿が良く、謙虚な性格で、カナデや他のサポートメンバーから可愛がられている。
「でもアルコール飲めないって言ってたし、そんな機会ないんだろうな……」
クローゼットを閉め、スマホを置こうとサイドボードに目をやると、いつも作業場で使っている水色の
【タオルケット、お借りします。 瑞希】
ボールペンで書かれた、丸みのある字体。目で文字を追い、視線をはずす。
和匡はまさかと呟いて、寝室を飛び出しリビングへ急いだ。
リビングにあるお気に入りのネイビーカラーのソファーには、ベージュのタオルケットでできた
いや、瑞希が寝室にあったはずのタオルケットに包まって寝ていた。
介抱してくれたとはカナデから教えてもらった。まさか、泊まり込んでまで介抱してくれるとは思わなかった。
和匡はソファーのそばでひざ立ちになって、瑞希の寝顔を困ったように笑みで眺めた。
「そこまでしなくても、俺は大丈夫だよ」
静かに寝息をたてる、瑞希の甘そうなミルクティーカラーの猫っ毛をやさしく撫でる。
「朝ごはん作ったら起こしてあげるからね」
そう呟いて、立ち上がり浴室へと向う。
二日酔いするのもいいものだなと、昨夜の自分に感謝した和匡だった。
(終)