第3章

文字数 299文字

 あの冬、わたし達はいくつもの言葉を交わし、心を重ねた。
 例えば、研さんの入院先から帰る電車の中で。
 例えば、区民センターの小さな会議室で。
 例えば、凍える夜に、とめどなく落ちてくる雪を分けて走る車の中で。
 仕事の帰り、ばったり会った駅のホームで。
 二人で行った路地裏の小さな店のカウンターで。
 手をつないで歩いた静かな夜の道で。
 会う度にあなたは、その優しさでわたしを包み、なぐさめ、勇気づけてくれた。本当は、あなたにこそ誰かの支えが必要だったのに──。
 何年もの間、あなたは何を想い、何を支えに毎日を過ごしてきたのだろう。あの頃のあなたが抱えていた痛みを思うと、涙が止まらない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み