第8話
文字数 1,341文字
念のために小学生の口にもう一本キャンディーを突っ込み、俺のママチャリの荷台に乗せた時、後方から目も眩む
「罰野君、写真、写真を撮って!」
「お、おおう」
「UFO、退治したいっ退治したいーーーっっ!!」
UFOはこっちに襲い掛かって来るのかと思ったが、ゆらゆらと揺らめいたかと思った次の瞬間に途轍もない速度で上昇し、星空の彼方に吸い込まれて行った。
「UFO、行っちゃったわね。もちろんあのエイリアンのグレイが乗ってでしょうけど」
「そうだなー、自分の星に帰ったのか、それとも天国に旅立ったのか」
「今度来たらササラが絶対倒すっ!」
「ああ、その時は頼むよ」
それから俺達はそれぞれのチャリに乗って帰り、午後二時に喫茶店で会う約束をして別かれた。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
午後一時半頃に多恵子に電話して、喫茶店では無く別の場所を指定して来てもらう事にした。小学生は眠いから来ないそうだ。
あれから女子二人はアパートに帰ってササラは多恵子の部屋に泊ったらしい。ササラはせめて一匹だけでも幽霊を退治したかったと明け方頃まで興奮して眠らなかったそうだ。多恵子はアイマスクと耳栓でぐっすりだったみたいだが。
午後二時、多恵子がマウンテンバイクに乗って長い直線の登り坂の下に現れた。黄色のサイクルヘルメットと黄色いサイクルジャージ姿だ。あれは某自転車アニメのコスプレだな。
そういや、レーサーパンツって下着を履かずに直接素肌に履くらしいが、多恵子は今ノーパンなのか? などといけない妄想が頭をよぎる。
さすがにロードバイクは値段がお高くて手が出せないようだが、タイヤはオフロード用からオンロード用に交換してクロスバイク風にしてある。
俺を坂の下から見つけた多恵子はいきなり立ち漕ぎをし、チャリを左右に振りだした。ヒルクライムのダンシングって漕ぎ方だ。アニメの観過ぎだが、中々うまく再現できている。ロングヘアーが左右に振れる所とか。髪は緑に染めてないけどな。
「罰野君、どうしてもう一度お化けマンションに来いって言ったの?」
「とりあえずこの場所を見てみなよ」
「あれ?! 場所を間違えた?」
「ここで合ってるよ」
お化けマンションが建っていた場所には、芝生が貼られた大きくて綺麗な公園が広がっている。
「どういう事なの? 確かに
「まったくわからない。あれから帰ってすぐに寝て、トイレに起きたら出勤前の親父に会った。それで昨夜の事を話したら、お化けマンションは半年も前に取り壊されて今じゃ公園になってるって言うんだ」
「じゃあ、私達が入ったマンションは? 追いかけられた幽霊達は何だったの?」
入道雲が湧き立つ青い夏空の下、公園の奥のアスレチック施設は親子連れで賑わっている。
昨夜の出来事はいったい何だったんだろう。三人で同じ夢を見ていたのか、それともマンション自体が幽霊だったのか、それとも……。