お前に、覚悟はあるか?

文字数 7,805文字

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 インターフォンのモニターを見て、殺人鬼が僕を探しにやって来たような戦慄を覚えた。

 そこには、柔和な表情の森巣が写っている。何故、森巣がそこにいるのか。もしかして、瀬川に送ったメールが森巣にバレて、尾行されていたのだろうか。

 僕がここに来ていることはお見通しだとでも言うように、再びピンポーンと音が鳴る。

 柳井が通話ボタンに手を伸ばし、「はい、柳井です」と返事をする。

「あの、突然押しかけてしまい、すいません。湊二高二年六組の森巣です」

 柳井が僕を見て、「呼んだのか?」と訊ねてきた。首を横に振る。

「どうしたんだ? こんな時間に突然」

 壁の時計を見ると、もう夜の七時を回っていた。

「ああ、すいません。実は、先生にご相談したいことがあるんです。お時間頂けませんか?」

 柳井がモニターから視線を外す。森巣の突然の訪問に意表を突かれたのか、柳井も動揺しているようだ。

「今開ける」と柳井が玄関へ向かった。

 自分の動悸が激しくなっているのがわかる。もうすぐ、向こうから森巣がやって来る。リビングの扉を睨みながら、落ち着け、落ち着けと膝を撫ぜた。
 扉が開き、別れたときと同じ、制服姿の森巣が現れた。

「あれ、平!? なんで?」

 僕を見て意外そうに目を開き、近づいてくる。

「森巣こそ、どうしてここに?」
「図書室の卒業アルバムに教員の住所が載ってたから、調べて来たんだよ。ちょっと先生に訊きたいことがあって」

 私立だし、年賀状のやり取りもあるだろうから載っているのかもしれない。だが、本当にそうなのだろうか?

 キッチンから柳井の「森巣、コーヒーでいいか?」という声が飛んできた。

「すいませーん、おかまいなく」

 森巣が返事をしながら、隣の席に腰掛ける。ぴりりとした緊張感が皮膚を走った。

「それで、平はどうしてここに?」
「さっきあの袋小路に戻ったら、柳井先生に会ったんだ。それで、成り行きで」
「進路調査の呼び出しじゃなくてよかったね」
「ぶり返すなよ」と笑みを返す。

 侮られている。森巣は油断し、僕が立ち向かってくるなんて思ってもいないのだろう。そこでふと、対抗心が湧いた。今なら柳井もいるし、森巣の化けの皮を剥げるのではないか。

「ちょっと森巣の意見を聞かせてもらいたいんだけど、いいかな?」
「もちろん、俺でよければ」

 柳井が戻って来る。手に持っているマグカップからはコーヒーの香りと湯気が立ち上っていた。机の上に置かれ、「ありがとうございます」と森巣が礼を言う。森巣がコーヒーカップを口に運ぶのを見ながら、「おれも人望のある教師になったもんだなぁ」と柳井が白い歯をのぞかせた。

「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」

 口火を切ろうとしたところだったのに、柳井はリビングを出て行ってしまった。ちょっと待ってくれ、と思ったけど、まだ柳井には森巣が怪しいと言っていなかったと、内心で舌を打つ。

「それで?」

 森巣が訊ねてくる。なんだか、一人だと何もできないのか? と試されているような気がした。

「あの袋小路の両サイドには塀があったけど、乗り越えられない高さじゃない。でも、瀬川の犬の鳴き声がしなかったから、どっちに逃げたかはわからなかった。そうだよね?」
「そうだね。瀬川は覚えてなさそうだったし」
「だけど、犯人がどっちに逃げ込んだのかわかったんだ」
「本当に!?
「ああ、左の家には犬がいた。ちょっと覗いただけで吠えられたから、逃げ込むなんて無理だろうね。つまり、犯人は右の家に逃げ込んだことになる」
「なるほど。だけど、マリンちゃんの鳴き声が聞こえなかったことはどうなるの?」

 犬の鳴き声がしなければ、問題はないのだ。

「犬が殺されていたら、解決する。角を曲がってから犬を絞殺して、右の塀の向こうに放り投げる。そして、犯人も塀を越えて逃げる。これだったら、実行可能だと思うんだ」
「そうだね。そうすることは出来たかもしれないね」

 あっさりとそこは認めるのか。少し拍子抜けというか、驚きだった。

「でも、俺はそうは思わないなぁ。マリンちゃんは生きてると思うよ」
「なんでそこまで頑なに認めないんだ? 何か隠してるんじゃないのか?」

 やっと森巣は自分に疑惑の矛先が向いていたことに気付いたようだった。が、冗談を聞いた後のような笑みを浮かべて、再び余裕を滲ませる。

「平、もしかして俺を疑ってるの?」
「わからない。だけど、信じられないんだ。昨日のアリバイはあるのか?」
「何か言えればいいんだけど、残念ながら証明してくれる人はいない」
「さっき小学校で話を聞いてきたんだよ。飼育小屋の兎、森巣が第一発見者らしいじゃないか。なんでクビキリのことを知らない振りなんてしてたんだ?」

 大切な動物が殺され、それを見つけた人の顔を近くで見るために、第一発見者になったのではないだろうか。こういう事件の犯人は、自己顕示欲の強い人が多いと聞く。だから、動物の死骸だけではなく、自分も目立ちたいと思う。表裏一体だ。コインは簡単に裏返る。

「そっか。それじゃあ、疑われて当然だよな。秘密にしていた俺が悪かった。本当にごめん!」

 森巣は両手を合わせ、申し訳なさそうに頭を下げた。シラを切り通されるか、悪態をつかれるのではないかと思っていたので、この反応には虚をつかれた。いや、こっちこそ、と言いそうになる。

「クビキリについて個人的に調べてたんだけど、平は俺より詳しそうだから教えてもらいたいな、と思って」

 森巣がクビキリについて知っていても、僕は話をしていたと思うけど、どうなんだろう。スムーズに打ち解けたし、森巣が知らないふりをしていたのは、結果としてよかったのかもしれない。オタクには喋らせておけ、と対応されたと思うのは考えすぎだろうか。

「嘘を吐かなくてもよかったのに」
「本当にごめん! だけど、マリンちゃんは無事だと思う」
「なんでそう思うのか、説明してくれないか」
「殺された動物は猫が二匹に、兎が一匹。猫は野良猫かもしれないし、飼い猫かもしれない。だけど共通点がある」
「共通点?」
「小学校に行って、白い兎の名前を聞いた?」
「聞いたよ。確か、パランだった」
「パランっていうのは、韓国語で青って意味なんだよ。白い兎なのに、なんで青って名前なんだと思う?」
「そんなこと」わからないと言いかけて、はっとした。瀬川の犬の名前も、マリンだ。
「そう、目だよ。右目だけ青かったから、パランにしたらしい。犯人は、オッドアイの動物を狙ってやってるんだ」

 僕が見つけた黒猫は、どうだったのだろう。暗かったし、目の色までは確認をしなかった。いや、死骸だから眼球は既に白濁し、気づけなかっただろう。

「でも、それがなんだっていうんだ」
「見つかったクビキリは、どれも腐っていない状態で、人目につく場所に置かれていた。発見日に特定の周期はない。衝動なのか計画的なのか、犯人は、何故動物を殺したのか」

 続く言葉を待つが、森巣はじっと動かず、僕を見据えている。
 考えてみよう。僕だったらどうだ。
 僕は動物を殺さないから、わからない。だけど、殺された後の現場に出向いていた。
 僕は何を見たかったのか。僕は何を感じたかったのか。
 僕は、死を見たかったし、考えたかった。

 何故だ?

 頭の中に浮かんだ気持ちを、慎重に言葉にしていく。

「犯人は、動物を殺して、生を感じたかったんじゃないのか? ストレス解消なんて軽い言葉で説明できるものじゃない。自分は生きてると感じたくて、やってるんじゃないかな」

 森巣が、目を細めた。

「俺も概ね同意見だよ。ここで、なんでマリンちゃんが生きてると思うのか? に戻るんだけど、動物を殺したいと思ったとき、オッドアイの動物を探しても、すぐに見つかるとは限らない。だから、盗んできてしばらく飼育してたんだと思う」
「小学校の兎は、殺されるまでに一週間かかった。だから、瀬川の犬もすぐに殺される可能性は低いってことか」
「そういうこと」

 なるほど、納得だ。僕が右往左往している間に、森巣はそこまで見抜いていたのか。「ごめん。疑って悪かった」

「いや、いいんだよ。こっちこそ、ごめん」

 僕だって犬は生きていた方がいいと思っている。だけど、問題はまだ解決されていない。

「じゃあ、あの袋小路から犯人はどうやって消えたんだろう」
「無理だよ。そもそも、人間も犬も消えるわけがない」
「右の家に逃げ込んだんだと思うんだけど」
「平、犬はあの曲がり角で拐われてなんかいないんだよ」

 森巣が何を言い出したのかわからず、困惑する。

「ちょっと待ってくれ、瀬川の犬は盗まれてないっていうのか?」
「いや、盗まれてはいる」
「ごめん、森巣が何を言いたいのかわからない」
「瀬川は散歩中に犬を盗まれたけど、犯人に襲われたわけじゃないんだ。犬を奪うために思いっきり突き飛ばされたら、掛けている眼鏡は外れてしまうだろ。そうなると、犯人はどこに逃げたのかはわからない。だけど、瀬川は犯人は先の角を曲がったって断言していた。これっておかしいと思わないか?」
「そんな……じゃあ、蝶のマークが入ったパーカーを着た奴に、犬を拐われたってことはどう説明するんだよ?」
「平、あれは訊き方が悪かったね。蝶のマークが入ったパーカーを着た奴だったか? って平が訊いたから、瀬川はそうだと答えたんだ。瀬川から言ったわけじゃない」

 絶句する。まさか、自分が犯人を作り上げていたとは思わなかった。自分の犯した失態に恥ずかしさを覚えながら、紛らわせるように怒りの矛先を瀬川に向けてしまう。

「じゃあ、なんで瀬川は嘘なんてついたんだ。撹乱する意味なんてないだろうに」
「事実は変わらないのに、何故嘘をついたのか。簡単な答えだよ」

 勿体をつけずに教えてほしい、と視線で訴える。

「保身だよ。自分を守るために、嘘をついたんだ」
「自分を守るため?」
「平、瀬川のことをイメージで見てない? クラスの委員長で一生懸命だし、身だしなみも良いし、品行方正な人だと決めつけていないか?」
「そんなことはない」と反射的に反論したが、じゃあ瀬川はどんな人なのか、と問われたら何も答えられないだろう。僕が知っている瀬川は、委員長で、真面目で、頑張り屋の女の子ということだけだ。
「マリンちゃんが行方不明ということは、あの様子から見て間違いないと思う。じゃあ、いつ盗まれたのか。散歩コースにあったものを思い出してほしい」

「散歩コースには……」はっとした。カフェがあった。

「瀬川さんはテイクアウトをしようと思って、犬を電柱に繋いであのカフェ入った。その間に盗まれたんだよ。水曜日は学生割引があるからね」
「だけど、犬を繋いで店に入る人はよく見るじゃないか。なんで隠したがったんだろう」
「ずっと泣いている小学生の妹は、不注意が原因で犬が盗まれたと知ったら、お姉ちゃんの所為だって、ずっと言い続けるんじゃないかな。それに、厳しい家みたいだし、両親から非難される日々も想像したのかもしれないよ」
 そう言われると、もし自分が瀬川の立場でも、同じことをしてしまうような気がした。自分の失態による後悔もあるけど、止まない非難を受け入れ続ける覚悟を持てる強い人なんて、いるのだろうか。
「それに、動物を殺して、その首を切り離してるような奴が町にいることを忘れてない?」

 唐突にビンタをされた、そんな気持ちになった。
 そうだ、ここは今、平和な町ではないのだ。僕は首を切られた死骸が見つかった場所を巡っていたくせに、それによって人がどんな気持ちになるのかを考えていなかった。僕は人間を見ていなかった。

「袋小路で犯人と犬が消えた、という奇妙な演出をしたのは、賢いと思う。人はムキになって謎に挑もうとするだろうからね。それに、犯人の逃走経路を考えなくてすむし、目撃者が他にいないこともカバーできる」

 自分はまんまと、その策にはまり、どうやって犯人と犬が消えたのかばかり考えていた。

「平、今話したことは、ここだけのものにしてほしい。実は平と別れてから、秘密にするって約束で、ちゃんと瀬川に確認もとったんだ」

 それで瀬川からあのメールがきたのか、と腑に落ちた。僕が疑ったせいで、約束を破らせてしまったな、と申し訳なく思う。

「わかった。約束するよ」

 椅子に背を預け、姿勢を崩す。ピンと張り詰められていた糸が緩まったように思える。緊張は解けたけど、振り出しに戻ったということだ。瀬川の犬が盗まれたということに変わりはないし、今どこにいるのかもわからない。

「結局、僕は何者にもなれないんだな」

 ぽろりと口からこぼれてしまった。森巣からの視線を感じて、少し恥ずかしくなる。

 客観的に見ると、僕はたまたま手伝うことになった人間だ。なのに、調子に乗って調べ始め、そして森巣を疑い、結果なんの役にも立っていない。

「役に立てなくてごめん。なんていうか、頼ってもらって嬉しかった」

 僕は、瀬川を見て、焦ってしまったのだと思う。
 去年、僕と瀬川は少し似ていると感じていた。彼女も、周りにあれこれ言われ、自分のやりたいことではないけど、愚直に取り組んでいるのだ、と。
 だけど、学年とクラスが変わり、森巣が現れ、瀬川は少女漫画のヒロインのようになっていた。

 瀬川のことを祝福したい気持ちと、取り残された焦りを覚えた。
 舞台に上がり、ちょっと手伝いをしたけど、客席に戻る、僕はただの助手だ。
 そうか、戻らなければいけないのか、と寂しくなった。
 悔しいけど、わかってしまう。自分が戻っても、滞りなく舞台は続く。

「何かあったのかい?」
「いや、なんでもない」
「話、聞くよ」

 気にしないでくれ、と首を横に振ったが、森巣はじっと僕を見つめ、話すように促してくる。その目に逆らえず、溜め込んできたものが、噴き出してくる。止められなかった。

「うちは貧乏で、そのことに親がコンプレックスを持ってるから、子供をどうしても大企業に入れたがったんだ。兄は親の思惑通りに、有名な大学に行って、みんなが知ってる有名な企業に入った。だけどそこで、過労とパワハラで倒れたんだ」
「大企業に入ったのに倒れたんだ、お兄さん大変だったね」
「そうだね。でも、働いてるときも大変だったと思うけど、一番大変なのは今だと思うんだ。今までは、親が言ってたことや、規範が正しいと思ってた。けど、そうじゃなかったから、結局自分で、これからどうするか考えないといけなくなってる」
「考えないといけないか。平、それを君も悩んでるんだね」

 森巣はすごいな、と苦笑してしまう。その通りだ。

「僕も、今までは兄が通った道を進んでいたから、迷いがなかった。けど、今は自分の道を自分で探さないといけないんじゃないかって思い始めたんだ。僕は変わらないといけないと思った。金持ちとか有名人になりたいわけじゃない。だけど、このままだと自分が何者にもなれないんじゃないかって、すごく怖くなったんだ」
「平はいい奴だし、卑下することないと思うよ」
「ありがとう。はたから見たら関係ないように見えると思うけど、クビキリの犯人を目撃した僕が、調査をすることになった。それが、ちょうど僕に向かって飛んできたボールみたいに思えたんだ。僕は試されてるんじゃないかって」
「試されてる?」
「僕が本当に変わるつもりなのか、その勇気があるのか、試されてる気がしたんだ」

 語気が強くなっていると気づき、はっとする。森巣に何を力説しているのだろうか。
 クビキリなんておぞましいことをできる奴が、僕の住む町にいる。そして、僕は調査をしている。変わると言いながら逃げるのか、その程度なのか、と誰かに思われたくなかった。

「森巣は育ちが良さそうだし、ピンとこないかもしれないけど」

 小馬鹿にするつもりではなかったが、森巣はむっとした様子で、口を開いた。

「俺の父親はアル中のギャンブル狂いで、気に入らないことがあれば暴力を振るうクズだった。温かい食事や風呂なんてない。飼っていた犬も父親に殺された。生き残ろうという意思がなければ、俺はとっくの昔に死んでいた」

 森巣が左手を開き、僕に向ける。手のひらにはミミズ腫れのような痕が、横一線に伸びていた。

「包丁を振り回されて、抵抗したときについた」

 僕は言葉を失い、そして想像力の足りない自分が恥ずかしくなった。瀬川の弱さや焦りも想像できていなかったし、森巣も生まれたときから完璧な人間なのだろうと思っていた。生きているのだから、みんなそれぞれが困難を抱えているのだ。
 ここでふと、僕はあることを思い出した。
 何故、森巣は柳井の家に来たのだろうか?
 パチンと、森巣が指を鳴らした。

「平、自分の道なんて探したってどこにもない。自分の歩いた後が、道になるんだ。お前に変わる勇気があるかなんて、誰も試しちゃいない。誰かのせいにするのはよせ」

 声のトーンが低くなり、口調も変わっていた。鋭くて迫力のある声だ。顔にも爽やかな笑顔はなく、鋭い目をして僕を見据えている。

「必要なのは、覚悟だ。その覚悟は、お前にあるか?」

 目の前にいた人間が、一瞬で別人に変わってしまったようだった。

「森巣? 突然どうしたんだ?」
「いいから答えろよ。俺は質問に答えない奴と、質問に質問で返す奴が嫌いなんだ」

 凄むように睨まれ、唾を飲み込む。
 明るくて爽やかな人気者で、行動力があるお人好しの森巣はどこへ行ったのか。頭の中でそんな言葉を並べながら、一つの結論に思い至る。

 そんな人間は、いない。

 森巣は、ふーっと息を吐き出し、テーブルを指でこつこつと叩き始めた。

「例えば、散歩中の瀬川に会ったことがあるから、犬が珍しいオッドアイだと知っていたのかもしれない。家が近所だから、瀬川が散歩中にカフェに寄って、テイクアウトをすることがあると知っていたかもしれない。拐ってきた動物を隠れて飼える、地下室やガレージがある家に暮らしているのかもしれない」

 滔々とした口調でそう言うと、指を止めた。何かを剥がしていたらしく、指先でそれを摘み上げた。白いステッカーの切れ端に見える。

「ステッカーを蝶の形に切って、パーカーに貼っておく。そうすると、目撃者は犯人は白い蝶のプリントがあるパーカーを着ていた、という証言ばかりするのかもしれない。俺が言いたいこと、そろそろわかったか?」

 頭を掴まれ、ぐわんぐわん揺さぶられているようだ。混乱しながら、森巣が何を言いたいのかを理解した。舞台から声が聞こえ、もう一度上がってこいと手招きをされている。

「おい、平。もう一度訊くぞ」

 森巣が正体を見極めるように僕の目を見てくる。

「お前に、覚悟はあるか?」
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登場人物紹介

平羊介 音楽が趣味の平凡な高校生。だったはずが、同級生の森巣と出会い、平和な日常が終わる。勇気を試され、決断を迫られ、町で起こる事件に巻き込まれて行く。

森巣良 イケメンで優しい、クラスの中心にいる生徒。だけど彼には裏の顔があり……その正体は腹黒毒舌名探偵だった。正義の味方ではないが、自分の町で起こる事件に、森巣なりの美学を持って解決しようとする。

小此木霞 平と森巣の高校の先輩。森巣とは幼馴染で、彼が心を許している数少ない存在。森巣の裏の顔や、彼が何をしているのか知っている。知識が豊富でパズルが得意なので、たまに森巣に協力をする。事件に挑む二人のよき理解者。

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