監督・立花和樹 (3区 5km)
文字数 3,040文字
「はい。ずっと並走が続いているローズの松浦とデイジーの三浦珠美の両者なんですが、今3位デルフィの磯村を抜いて、この両者が前に出ました!
いや、磯村もついていく! これで3位争いが3校になりました!
この3名の中では、ローズ大の松浦が集団を引っ張る展開。このままさらに順位を押し上げていくでしょうか!」
「序盤出遅れたローズ大学でしたが、さすがこのあたりは5連覇中のチーム、ついに3位まで上がってきました。
それでは、ローズ大の鬼塚監督はこの状況、どう見ているでしょうか。
監督室の様子伝えてもらいます。」
ローズ大・鬼塚監督
「はい。やはりジャスミンさんが、今年非常に強いですよね。それから今トップを行ってる、アイリスさんもしっかりオーダー組んできてますんでね。
まぁ5区の松永のところではね、先頭に立ちたいとは思っていますけれども。」
監督室リポート
「さあそしてですね、現在トップをひた走りますアイリス女学院大学の立花監督にもお話伺っていきます。
えー、学生からは「花ちゃん」と呼ばれているそうですが(笑)。監督、見た目もお若いですね?」
「ローズ大・鬼塚監督のレース前のプランとしては、おそらく1区の佐々木が先頭の見える位置で繋いで、2区姫路で先頭に立つというのがあったかもしれませんが、
ここまでは、初出場のアイリス、そして神宮寺エリカ擁するジャスミンにリードを許すという、展開になっています。
5区松永のところで追いつければという話もされていました、松田さん。」
「はい。松永さんも、1万mで31分53秒というタイムを持っている力のあるランナーですので、まだ逆転も可能かと思います。
ただ現状、前の2人…安藤さんと洋見さんのペースが良すぎるので、3位のローズ大学とはまたここで差が開いているような気もしますね。」
アナ
「えぇ。手元の時計で計りましても、今だいたい15秒差。
序盤はジャスミンの、スーパールーキーとも言われています洋見が、一時はその差8秒まで縮める猛追を見せたんですが、そこから中々差が縮まらず、
今度はアイリスの安藤、こちらも1年生が、ジリジリとその差を広げてきました。」
松田
「あのー、洋見さんは早めにヘレナさんと並んで、競り合いに持ち込むつもりが、なかなか追いつかないので洋見さんのほうが根負けしてきた感じですよね。
アイリスの立花監督にお話を聞いてもね、ヘレナさんは序盤から突っ込んで入らないと良さが出てこない、っていう話もされていましたから。
結果的に、この区間に起用して正解だったと思います。」
「はい、ヘレナ、5キロ16分7秒、この1キロ3分16ー。
今5キロの地点でー、2位と15秒くらいまで離したー。
洋見にも、区間タイムで3秒ぐらい勝ち始めたからー。ここ絶対区間賞とらないとダメだぞー。
あとはいかにペースを落とさないかだ。手ダラーンとさせたりして、ときどき脱力してー、そう。3分18超えないようにねー。
いいかい?ここでの踏ん張りがー、次の4区の茉莉にも繋がってくるからねー。しっかりとリード広げて渡してやるんだぞ。
はい。あと3キロだ、頑張れ!」
立花監督
「そう。例えば1区の朝姫は、とにかく褒めまくる。
あいつは周りから注目されればされるほど、力を発揮するんだ。
1区ならテレビにもよく映るからな。朝姫にピッタリだ。
そういう選手はどんどん褒め倒して、気分良く走ってもらったほうがいい結果が出やすい。
今日みたいな大舞台で、思い切りのいい判断ができるのも、朝姫の長所だ。」
立花監督
「心枝の場合は、ただ闇雲に褒めまくっても逆効果だ。
理由も分からず褒められても、かえって不安にさせてしまうからな。
心枝を褒める時は、根拠も一緒に伝えないといけない。
夏合宿こなせたから走れる、栄養をきちんと摂れてるから走れる、追い風だからオーバーペースでも大丈夫。って具合にな。」
立花監督
「ヘレナは負けず嫌いだからな。どんどん競争を意識させたほうがいい。
今日だったら、後ろの洋見とのタイム差を俺はさっきからずっと伝えるようにしてる。
タイム差とか誰より勝ってるだとか、そういう具体的な目標があったほうが燃えるタイプなんだ。」