第85話  フリーダム白竹一家 3

エピソード文字数 3,451文字


 ※


 まさか。本当に白竹さんと入れ替わるつもりなのか? 


 姿形は完全に白竹さんと同じなので、教室に入っても全く違和感のない白竹さん二号。

 

 えっと……魔優ちゃんだっけ? 

 というか俺には……彼女がどうしても白竹ママに見えてしまうのは如何なものか。

 


 普通に座る白竹さんに対し、他の人間も前を向く。そして染谷くんは俺と一度だけ視線を合わせると、教壇側に向くのであった。



 ま、まぁいい。授業が始るぞ。数学の教科書を出さねば。

 どうなっても俺は知らんぞ。




 そして陰険教師と名高い数学教師が入ってくると、普通に授業が始った。

 その時、前の席の染谷くんがこちらを向いて、眉を上げてのアイコンタクトを受け取る。



誰も気がついてねーし。
だよね。ここまでソックリだとバレないよね
 恐らく入れ替わったのを見たのは、このクラスじゃ俺と染谷くんと西部だけかもしれない。
ふんふ~ん


 上機嫌な白竹さん妹。まゆうちゃんだっけ。


 それにしても教師にもバレない所か、クラスの奴も全然気付いてなさそうだ。まぁ斜め後ろから見ても、全然違和感が無いからな。



 まさか。白竹さんにそっくりな双子がいたなんて聞いてないぞ。確かにここまでソックリなら、入れ替わった現場を見ていなければ、判別出来ない。


 待てよ。もしかして喫茶店で働いているのは……こっちの白竹さんなのか?

 いや、でもなぁ喫茶店の彼女はこんな風に明るいキャラじゃなくってクールだし……



 ここでまさかの三キャラ目で頭がこんがらがってくるぜ。




 その時、スマホがブルったので、教師にバレないように机の中で確認してみると、白竹さんからのラインだった。


 もちろん、教室にいる白竹さんではなく、魔樹と一緒に逃亡した本物の白竹さんからだ。

あの。どうなってますか?

 どうなっていますか? と言われましてもね……


 なんと言うか、白竹さんのアバウトな質問に向こうもテンパっているような気がしてきた。

普通に授業受けてます。というか双子の妹さんがいたなんて初耳ですよ
 そう返信すると、既読にはなったが返事が返ってこない。
《今、どこにいるんですか?》と返事を送ると《保健室で待機してます》と速攻返って来た。

 保健室だと? 何でそんな場所に?

 いや、この場合しょうがないのか……


 というか。この状況。マジでどうすんの?


 

 斜め前のまゆうちゃんはご機嫌なのか、教壇を向きながら左右に顔を振り続けている。

次。美神。

 そんな時、陰険教師は白竹さんではなく、その後ろで爆睡している聖奈の名前を呼んだ。



 聖奈はこの教師に毎回当てられる。

 まぁ教師側からすると、嫌われても仕方のない態度だからな。

おい。聖奈……数学だぞ
んんっ……あい

 むくっと起き上がる聖奈は、目をゴシゴシしながら黒板に書かれた形式をぱっと見たかと思えば、即答するのだった。



 そして陰険教師は「ぐぬぬ」と言わんばかりな顔になると、黒板に向き直る。するとクラスのみんなが聖奈をジェスチャーで絶賛するのはいつもの流れだが……



 まゆうちゃんが聖奈を見つめたまま「わおっ。凄いわね」と声に出して賞賛するのだった。わおっっと驚く様子は、白竹さんと同じようなリアクションだな。

おい。もういいぞ
あい。
 聖奈はまだつっ立ったままだ。


 半分寝てるんだろ。そんな時の聖奈はぶっちゃけ可愛い声で返事するから困る。



あいっ……

 しょうがないので袖を少し引っ張ると、ふらふらっと椅子に座り、再び机に突っ伏すのだった。

……あいっ
ふ~ん。この子が美神さんね

 俺に質問しているのか、目が合うなり「そうっす」と言うしかない。


 というか……まゆうちゃんは何で俺にだけフレンドリーなのだろうか。



 そして……授業が再開されると思ったが、まゆうちゃんが急に「分かった!」と大きな声をだしたかと思えば……

もう飽きたわっ。つまんないから帰る!
え?

 クラス中の全視線を集める魔優ちゃん(聖奈は除く)

 しかも立ち上がって俺に寄ってくると、保健室に連れて行ってとかお願いされる。

おい、白竹?

 と陰険教師。当然無視は出来ないが、俺は彼女に強引に引っ張られると瞬時に踏ん張った。


 つもりだったのに……

うぉっ!

 あまりにも強烈な力により引っ張られると、あっという間に廊下まで引っ張り出された。


 俺がこんな簡単に引っ張られるだなんて……

 女の子だって油断したのもあるが、廊下まで出ちまったら仕方がない。



 さっさと彼女を送り届けりゃいいと思ったので「ちょっと行ってきます」と教師に言うと、返事を貰わないままダッシュした。

保健室でいいんですかね?
うん! どうせ美優はそこにいるわっ

 何で分かるんだろう。

 というか、そんな事よりも勝手に俺の背中に乗らないで欲しいんですけど。


 まぁ今は授業中だし、廊下には誰もいないからいいけど、さっさと連れて行ってやろう。



 俺はしがみ付くまゆうちゃんの膝を持つと、おぶってやろうとした。

 それなのに耳元で「あんっ」とか言うので速攻中断した。


 そんな事言うのなら一人で歩いてください!

あ~ん。ちょっとビクってなっただけじゃない。

 背中に張り付いたままクネクネしだしたまゆうちゃん。

 俺がマジで怒る前に「ごめんなさい」と連発してくる

そういうのナシでお願いします。至極真面目に動いてるんで

 こういう冗談にはわりと沸点が低い。

 真面目にやってるのに、馬鹿にされてる気分になるんだ。

あいっ! わかりましたぁ!

 っていうか。俺は何故この人を保健室に連れて行かなくてはいけないのか、まったくもって謎なクエストである。



 

 階段を降りて一階までくると、後は職員室方面に直進すればいい。


 人影も見えないので急ごうとすると「ちょっと待って」とストップを掛けたまゆうちゃんは俺の背中から自分から降りる。

ねぇねぇ。私のこと、どう思う? 急に出てきた双子キャラにビックリした?

 すんげー俺の顔色見てるし。そんな質問するってことは、

 俺のリアクションを期待してんのか?

ビックリしましたね

 棒読みだった。

 ビックリと言うか。今までの経緯が色々とアレなので、ウンザリ顔の残念フェイスをお見舞いしてやった。

そんな顔しないで。

あなたがこの高校にいるだなんて、私も知らなかったのよ

 ん? どういうこと?
蓮くんでしょ? 黒澤くん
 何で俺の名前を。いや……西部とかが言ってたか? 

 

 それにしても、やたらと親近感を感じさせる物言いに付け加え、優雅な微笑に思わず言葉を失ってしまう。

まあいいわっ。これからは私も遊ぶわよ。

ここからもっと過激な学園ストーリーが始るのよっ

 遊びたいと言われましても……

 こりゃ美優ちゃんや魔樹にしっかり説明してもらわないと。

だってあなたは……私達双子のどちらかと結婚する白馬の王子ですものっ。


フィアンセよ。親公認の許婚なのだわっ!

 なんというか……内容云々よりも、 白馬の王子なんてマジで言う人。初めて見た。


 ※


 保健室の前まで来ると、魔優ちゃんと一緒に部屋に入っていく。

 すると本当に美優ちゃんと魔樹がベッドに座っているじゃないか。



 俺は美優ちゃんからのラインで知っていたが、魔優ちゃんがスマホを弄っていたシーンも見ていないし、何でここにいるのが分かったのだろうか。

美優。もういいわっ。私帰るから
あ、あひっ!
魔樹もそんな心配しないでよ。何もしてないから。ね? 黒澤くん?
…………
ま、まぁ何もしてないですよね?

 普通に授業受けてただけだからな。

 途中で「飽きた」とか言ってボイコットするのはちょっと……どうなのかなって思いますけど。

あにょ。何でくりょさわくんを?
保健室に案内してもらったのよ。ありがとぉ蓮くんっ!

 何だかやたら馴れ馴れしいのは置いといて……



 それよりも美優ちゃんも魔樹もやたら怖がっている様子なのだ。どこにそんな恐怖を感じるのかは分からないが、尋常じゃない怯えっぷりにやたら違和感を感じる。

帰るわっ。あなた達も……黒澤くんとは仲良くするのよっ! これはもう命令よっ! 任務なのよっ!
あっ、はひぃ!
はいっ!

 美優ちゃんはともかく、魔優まで甲高い返事をすると、その様子を見た魔優ちゃんは「じゃーねー」と言いながら保健室から出て行った。



 なんだろう。見た目は完全に美優ちゃんだけど、中身が完全にママだからな……



 う~ん。ここでまた白竹家に新たな謎が生まれちまった。

 


 まぁいい。

 丁度二人がいるんだから事情を聞いてもいいはずだ。

 訳のわからんクエストをクリアしたんだ。真相を聞く権利くらいあるだろ。



 ※


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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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