第22話 ノーン
文字数 3,269文字
君たちは、またあのドアの前まで来た。
見張りのヴァルキリー達にドアを開けてもらい、部屋に入る。
「ああ、エイミー!来てくださったのですね!」
ノーンは君たちを一目見るなり立ち上がった。そして、またゆっくりと玉座に腰を下ろす。
「もう一度あなたの未来を読んで差し上げましょう、エイミーよ。あなたが十分に変わっていると願いましょう...」
少しの沈黙が流れる。そして、彼女はもう一度口を開いた。
「はっきりと見えません、エイミー。宿命の水晶玉なしでは私の視力は限られているからです。しかし、今のあなたならば、サーター卿を倒し、宿命の水晶玉を取り返すことができる可能性が高いです」
その言葉に君は安堵のため息をつく。そして、一言一句聞き逃さないように目を閉じて、もう一度彼女の言葉に耳を傾ける。
「少し前に、サーター卿とその手先がこの場所を攻撃しました。彼らは、彼処 に見える丘の巨大な火山の噴火口を開いたのです。この事態を想定した私は、テュールの戦士たちに助けを求めた次第であります。ここであなたが見ている彼らは、ヴァルハラの中で最も強力な戦士たちです。」
それを聞いて周りを見渡す。君たちの周りには、何人かのヴァルキリー達が膝をつき、頭を垂れていた。君はノーンに目を戻す。彼女は寂しげな顔をしていた。
「我々は全力で戦いました。その偉大で輝かしい戦いにもかかわらず、サーター卿はついに宿命の水晶玉を盗むことに成功してしまったのです。これにより宇宙のバランスが崩れ、宿命の水晶玉が私手に戻らない限り、サーター卿は世界を滅ぼすでしょう...。」
そう言うと、彼女は君を真っ直ぐに見つめて、目から一滴の涙を垂らした。
「あなたはサーターの洞窟への入り口を見つける必要があります。下の階段を降りてゆけば、サーター卿の隠れ家が見つかるでしょう。どうか、エイミー、我が戦士よ、私に宿命の水晶玉を私のために取り返してくださりませぬか」
ノーンはそう言うと立ち上がり、君たちに頭を下げた。君たちの横にいたヴァルキリーたちも一斉に頭を下げる。
「是非 、手伝わせてください」
君がそう言うと、ノーンは顔をほころばせた。
「本当に、本当にありがとうございます。勿論 、報酬を用意してお待ちしております」
報酬!君はその言葉を聞いて目を輝かせた。レオは君の様子をみて苦笑いした。
「では、行ってらっしゃい。あなたの鍛錬を忘れないでくださいね、お気をつけて!」
ノーンとヴァルキリー達に見送られて君たちは部屋を出る。
そして、階段を降りる。
下の階は、先程の階ととても似ていた。違うところといえば、ノーンのいた城がないことだろうか。
君たちは階段を降りてすぐ、火の巨人 の姿を目にした。
燃え盛るような真っ赤な髪、火をまとった棍棒とその大きな身体。巨人は君たちをじろりと一睨みすると、雄叫びをあげてこちらに突進してきた。
レオが矢を放つ。その矢は見事巨人の身体に的中するも、巨人は攻撃をやめようとはしない。君はゆっくりとエクスカリバーを抜く。そして走り出す。
君は巨人の前まで来ると、上に跳び上がり、その左腕を切り落とす。血が吹き出し、それは痛みからうめき声をあげた。君は距離をとり、もう一度攻撃に入ろうと走り出した。
巨人は、右手に持っていた棍棒を投げ捨てた。君は動きを止める。何をする気だ?降参か?
違った。巨人は懐からガラスの杖を取り出した。そして、それを君めがけて振った。
「避けろ!!」
レオが叫ぶ。ナルフが君を助けようと走ってくる。だが遅すぎた。
ガラスの杖の先端が光ったと思うと、そこから火がすごい勢いで吹き出した。
君はそれを真正面から喰らった。
ナルフの君を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
自分はここで死ぬのか?生きたまま焼かれて。
君は目を瞑った。炎の暖かさが君の周りを包む。
段々と寒くなってきた。もう死ぬのだろうか…
「おい!エイミーってば!大丈夫か?!」
ぺちん、と頬を叩かれる。君は慌てて目を開けた。
「あ、アレ?私、生きたまま焼かれたんじゃ…」
君は混乱して巨人に目を向けた。巨人も混乱して君と杖を交互に見ている。
君は自分の体を見た。火傷の跡一つもない。
ナルフは安堵の涙を流して跪いた。
「ママ殿はこれを予想して、炎耐性 を付けておられたのか!」
それを聞いてレオはぽんと手を叩く。
「そうか!火蟻を食べて感じたあの寒気は、炎耐性がついたってことだったんだよ!」
君は初めはぽかんとしていたが、意味が理解できるとフハハと笑った。
「お前なんてもう怖くない、でっかい火の奴め」
君はそういって火の巨人を指差す。
巨人は驚いた顔をしたが、その後顔を真っ赤にして叫んだ。
「あーあ、君がアイツのこと、でっかい火の奴、とか言うから怒っちゃったよ?」
レオはそう言ってため息をついた。
巨人はもう一度ガラスの杖を君に向かって振った。
大きな火柱が君を包む。が、温かいお風呂に入っているような感覚程度にしか熱くない!
君はまた走り出す。そして巨人の反対の手を切断し、最後にその首を刎ねた。
ドシーン、と残された身体が倒れた。
君はふふんと胸を張る。
「これで私はもう料理で火傷 することも無い」
「それは気をつけようよ…」
レオは頭を抱える。
「ママ殿、あれは洞窟であるか?」
ナルフはそう言って前方を指差した。
先を見ると、確かに洞窟のような場所への入り口が見える。
「行ってみよう」
君がそう言うと、ナルフは頷いてあるき出した。
「ちょ、ナルフ待って!寒くて僕もう動けない…」
レオはそう言ってまたガチガチと震えだした。火の巨人を倒してしまったため、辺りの気温はまた寒くなっていたのだ。
ナルフは翼で彼自身とレオを包み込むと、歩き出した。
「…二人って、仲良いよね」
君がそう言うと、レオは首を振った。
「そんな訳あるか!寒いからしょうがなくだよ、しょうがなく!」
「我は仕方がなくレオ殿に貸してあげているまで。死なれては迷惑だからな」
二人は一斉にそう叫んだ。君は笑った。
下階段は洞窟の奥の方にあった。洞窟の中には火蟻や火の巨人がいたが、耐性を手に入れた君たちには敵ではなかった。
階段の前まで来て、君は唾をゴクリと飲み込んだ。この下に、サーター卿がいるのだ。君は自分の鼓動が速まるのを感じる。レオは一度深呼吸をした。ナルフは緊張などしていないようだ。
ええい、と勇気を振り絞って足を出す。こつん、こつん、こつん、と君とナルフの靴が無機質なコンクリートに当たる音だけが響く。君は一度深く息を吸った。
その階に着いた瞬間に、ぶわっと熱気が君の顔に吹き付けた。
「暑っ、ここ暑い」
レオはこの階に着くやいなやそう言ってナルフの羽から出た。それもそうだ、君たちの横では溶岩がふつふつと煙をあげているのだ。
前を見ると、硫黄ガスの雲を通して、泡立つ溶岩の堀に囲まれた岩の柵が君の目に映った。ノーンが言っていたことを思い出す。ここがサーター卿の隠れ家で間違いはないようだ。
溶岩を避けながら、かろうじて出来ている道を慎重に進んでいく。そして、柵の近くまで来ると、正面に門があることに気がつく。
「へえ、ボス様はここで隠れてるわけですか」
レオはそう言って弓を取り出す。
「僕は援護にまわろう。ナルフ、エイミーを頼んだ」
「そのつもりだ、レオ殿」
レオはそれを聞くと高くジャンプした。そして、どこか見えないところに行ってしまった。
「どうやってこの門を開けよう」
君は頭を掻く。流石にこれは、いくら君でもキックでは開かなそうだ。
「我がやってみよう」
ナルフはそう言うと、両手を門に突き出した。
「待って、何するつもr…」
君はその答えを聞く前に実感することとなった。
「フォースボルト!」
ナルフそう叫ぶと、彼の手に溜まった魔力が一気に放出された。
物凄い衝撃音と土埃があたりを包む。地面が揺れる。轟音 で鼓膜が破れてしまいそうだ。衝撃波で吹き飛ばされそうだ。砂埃が巻き上がり、視界を遮られる。
門が粉々になったのだ!
その瞬間、君は何者かの気配を感じた。剣を構えて、集中する。砂埃が落ち着いて、視界が晴れてきた。
そして、君は、サーター卿を見た。
見張りのヴァルキリー達にドアを開けてもらい、部屋に入る。
「ああ、エイミー!来てくださったのですね!」
ノーンは君たちを一目見るなり立ち上がった。そして、またゆっくりと玉座に腰を下ろす。
「もう一度あなたの未来を読んで差し上げましょう、エイミーよ。あなたが十分に変わっていると願いましょう...」
少しの沈黙が流れる。そして、彼女はもう一度口を開いた。
「はっきりと見えません、エイミー。宿命の水晶玉なしでは私の視力は限られているからです。しかし、今のあなたならば、サーター卿を倒し、宿命の水晶玉を取り返すことができる可能性が高いです」
その言葉に君は安堵のため息をつく。そして、一言一句聞き逃さないように目を閉じて、もう一度彼女の言葉に耳を傾ける。
「少し前に、サーター卿とその手先がこの場所を攻撃しました。彼らは、
それを聞いて周りを見渡す。君たちの周りには、何人かのヴァルキリー達が膝をつき、頭を垂れていた。君はノーンに目を戻す。彼女は寂しげな顔をしていた。
「我々は全力で戦いました。その偉大で輝かしい戦いにもかかわらず、サーター卿はついに宿命の水晶玉を盗むことに成功してしまったのです。これにより宇宙のバランスが崩れ、宿命の水晶玉が私手に戻らない限り、サーター卿は世界を滅ぼすでしょう...。」
そう言うと、彼女は君を真っ直ぐに見つめて、目から一滴の涙を垂らした。
「あなたはサーターの洞窟への入り口を見つける必要があります。下の階段を降りてゆけば、サーター卿の隠れ家が見つかるでしょう。どうか、エイミー、我が戦士よ、私に宿命の水晶玉を私のために取り返してくださりませぬか」
ノーンはそう言うと立ち上がり、君たちに頭を下げた。君たちの横にいたヴァルキリーたちも一斉に頭を下げる。
「
君がそう言うと、ノーンは顔をほころばせた。
「本当に、本当にありがとうございます。
報酬!君はその言葉を聞いて目を輝かせた。レオは君の様子をみて苦笑いした。
「では、行ってらっしゃい。あなたの鍛錬を忘れないでくださいね、お気をつけて!」
ノーンとヴァルキリー達に見送られて君たちは部屋を出る。
そして、階段を降りる。
下の階は、先程の階ととても似ていた。違うところといえば、ノーンのいた城がないことだろうか。
君たちは階段を降りてすぐ、
燃え盛るような真っ赤な髪、火をまとった棍棒とその大きな身体。巨人は君たちをじろりと一睨みすると、雄叫びをあげてこちらに突進してきた。
レオが矢を放つ。その矢は見事巨人の身体に的中するも、巨人は攻撃をやめようとはしない。君はゆっくりとエクスカリバーを抜く。そして走り出す。
君は巨人の前まで来ると、上に跳び上がり、その左腕を切り落とす。血が吹き出し、それは痛みからうめき声をあげた。君は距離をとり、もう一度攻撃に入ろうと走り出した。
巨人は、右手に持っていた棍棒を投げ捨てた。君は動きを止める。何をする気だ?降参か?
違った。巨人は懐からガラスの杖を取り出した。そして、それを君めがけて振った。
「避けろ!!」
レオが叫ぶ。ナルフが君を助けようと走ってくる。だが遅すぎた。
ガラスの杖の先端が光ったと思うと、そこから火がすごい勢いで吹き出した。
君はそれを真正面から喰らった。
ナルフの君を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
自分はここで死ぬのか?生きたまま焼かれて。
君は目を瞑った。炎の暖かさが君の周りを包む。
段々と寒くなってきた。もう死ぬのだろうか…
「おい!エイミーってば!大丈夫か?!」
ぺちん、と頬を叩かれる。君は慌てて目を開けた。
「あ、アレ?私、生きたまま焼かれたんじゃ…」
君は混乱して巨人に目を向けた。巨人も混乱して君と杖を交互に見ている。
君は自分の体を見た。火傷の跡一つもない。
ナルフは安堵の涙を流して跪いた。
「ママ殿はこれを予想して、
それを聞いてレオはぽんと手を叩く。
「そうか!火蟻を食べて感じたあの寒気は、炎耐性がついたってことだったんだよ!」
君は初めはぽかんとしていたが、意味が理解できるとフハハと笑った。
「お前なんてもう怖くない、でっかい火の奴め」
君はそういって火の巨人を指差す。
巨人は驚いた顔をしたが、その後顔を真っ赤にして叫んだ。
「あーあ、君がアイツのこと、でっかい火の奴、とか言うから怒っちゃったよ?」
レオはそう言ってため息をついた。
巨人はもう一度ガラスの杖を君に向かって振った。
大きな火柱が君を包む。が、温かいお風呂に入っているような感覚程度にしか熱くない!
君はまた走り出す。そして巨人の反対の手を切断し、最後にその首を刎ねた。
ドシーン、と残された身体が倒れた。
君はふふんと胸を張る。
「これで私はもう料理で
「それは気をつけようよ…」
レオは頭を抱える。
「ママ殿、あれは洞窟であるか?」
ナルフはそう言って前方を指差した。
先を見ると、確かに洞窟のような場所への入り口が見える。
「行ってみよう」
君がそう言うと、ナルフは頷いてあるき出した。
「ちょ、ナルフ待って!寒くて僕もう動けない…」
レオはそう言ってまたガチガチと震えだした。火の巨人を倒してしまったため、辺りの気温はまた寒くなっていたのだ。
ナルフは翼で彼自身とレオを包み込むと、歩き出した。
「…二人って、仲良いよね」
君がそう言うと、レオは首を振った。
「そんな訳あるか!寒いからしょうがなくだよ、しょうがなく!」
「我は仕方がなくレオ殿に貸してあげているまで。死なれては迷惑だからな」
二人は一斉にそう叫んだ。君は笑った。
下階段は洞窟の奥の方にあった。洞窟の中には火蟻や火の巨人がいたが、耐性を手に入れた君たちには敵ではなかった。
階段の前まで来て、君は唾をゴクリと飲み込んだ。この下に、サーター卿がいるのだ。君は自分の鼓動が速まるのを感じる。レオは一度深呼吸をした。ナルフは緊張などしていないようだ。
ええい、と勇気を振り絞って足を出す。こつん、こつん、こつん、と君とナルフの靴が無機質なコンクリートに当たる音だけが響く。君は一度深く息を吸った。
その階に着いた瞬間に、ぶわっと熱気が君の顔に吹き付けた。
「暑っ、ここ暑い」
レオはこの階に着くやいなやそう言ってナルフの羽から出た。それもそうだ、君たちの横では溶岩がふつふつと煙をあげているのだ。
前を見ると、硫黄ガスの雲を通して、泡立つ溶岩の堀に囲まれた岩の柵が君の目に映った。ノーンが言っていたことを思い出す。ここがサーター卿の隠れ家で間違いはないようだ。
溶岩を避けながら、かろうじて出来ている道を慎重に進んでいく。そして、柵の近くまで来ると、正面に門があることに気がつく。
「へえ、ボス様はここで隠れてるわけですか」
レオはそう言って弓を取り出す。
「僕は援護にまわろう。ナルフ、エイミーを頼んだ」
「そのつもりだ、レオ殿」
レオはそれを聞くと高くジャンプした。そして、どこか見えないところに行ってしまった。
「どうやってこの門を開けよう」
君は頭を掻く。流石にこれは、いくら君でもキックでは開かなそうだ。
「我がやってみよう」
ナルフはそう言うと、両手を門に突き出した。
「待って、何するつもr…」
君はその答えを聞く前に実感することとなった。
「フォースボルト!」
ナルフそう叫ぶと、彼の手に溜まった魔力が一気に放出された。
物凄い衝撃音と土埃があたりを包む。地面が揺れる。
門が粉々になったのだ!
その瞬間、君は何者かの気配を感じた。剣を構えて、集中する。砂埃が落ち着いて、視界が晴れてきた。
そして、君は、サーター卿を見た。