第3話 狼
文字数 951文字
(今度はなんだよ)
ドアが開き、漫画やゲームに出てくるような見事な銀髪 の男が現れた。目の色が違う。
(金色の目?)
その目を見た瞬間、十文字は背筋がぞわりとするような感覚にとらわれた。
銀髪は先客二人と同じように無遠慮に上がり込んでくると、まっすぐに十文字の傍に来て、その首筋に顔を寄せて匂いを嗅ぐ仕草をする。
「見つけた」
低い声でそうつぶやくと、頬擦りをするように鼻先を押しつけてくる。
「ちょ、くすぐったいって!」
パーソナルスペースをあっさりと飛び越えてきた見知らぬ男を全力で押しのけながら十文字は確認する。
「まさかと思うけど、あんたも人間に化けているとかいわないよな」
「なぜ知っている」
「マジかよ……」
脱力のあまりその場にへたり込みそうになる。
(疲れた。寝たい)
「悪いけど、疲れてるから、とりあえず寝かせてくれ」
そのまま布団に戻ろうとしてふと思い出し、台所に向かう。冷蔵庫から冷えピタを取り出すと黒髪に差し出す。
「おでこと手首、冷やしたほうがいい。わざとじゃなかったんだ、ごめん」
黒髪は不思議そうに十文字の顔と冷えピタを交互に見る。
(あ、使い方がわからないのか)
薄いシートを剥がして黒髪のおでこと手首にそれぞれ貼りつけると、冷たかったのだろう、文字通り、毛の逆立った猫のようになる。
「冷たい、臭い」
「腫れを冷やすためだから我慢して」
布団に戻って横になろうとすると、銀髪が
「寝るのか」
と聞いてきたのでうなずく。
「ひさしぶりの休みなんだ。寝かせてくれ」
すると目の前で銀髪がみるみるうちに銀色の毛並みをした大型犬へと変化した。
(でかいな)
(ていうか、変身しているって本当だったのか)
変身した銀髪は十文字の傍に移動してくると布団の上を陣取るように伏せる。
(なんだ? 寝るなっていっているのか?)
ふいに服の端を咥 えたかと思うとぐいぐいと引っ張られる。立派な尻尾がふさふさと揺れる。
そのままモフモフの上に倒れ込む形になる。
(うわ、これヤバいな)
十文字は犬好きである。猫も好きだが大型犬がとくに好きだった。贅沢なこの抱き枕状態に抗 えるはずがない。
「犬、いいなぁ」
思わずつぶやくと、遠巻きに眺めていた黒髪と茶髪が呆れたように訂正を入れた。
「犬じゃない」
「それ、狼よ」
「えっ」
ドアが開き、漫画やゲームに出てくるような見事な
(金色の目?)
その目を見た瞬間、十文字は背筋がぞわりとするような感覚にとらわれた。
銀髪は先客二人と同じように無遠慮に上がり込んでくると、まっすぐに十文字の傍に来て、その首筋に顔を寄せて匂いを嗅ぐ仕草をする。
「見つけた」
低い声でそうつぶやくと、頬擦りをするように鼻先を押しつけてくる。
「ちょ、くすぐったいって!」
パーソナルスペースをあっさりと飛び越えてきた見知らぬ男を全力で押しのけながら十文字は確認する。
「まさかと思うけど、あんたも人間に化けているとかいわないよな」
「なぜ知っている」
「マジかよ……」
脱力のあまりその場にへたり込みそうになる。
(疲れた。寝たい)
「悪いけど、疲れてるから、とりあえず寝かせてくれ」
そのまま布団に戻ろうとしてふと思い出し、台所に向かう。冷蔵庫から冷えピタを取り出すと黒髪に差し出す。
「おでこと手首、冷やしたほうがいい。わざとじゃなかったんだ、ごめん」
黒髪は不思議そうに十文字の顔と冷えピタを交互に見る。
(あ、使い方がわからないのか)
薄いシートを剥がして黒髪のおでこと手首にそれぞれ貼りつけると、冷たかったのだろう、文字通り、毛の逆立った猫のようになる。
「冷たい、臭い」
「腫れを冷やすためだから我慢して」
布団に戻って横になろうとすると、銀髪が
「寝るのか」
と聞いてきたのでうなずく。
「ひさしぶりの休みなんだ。寝かせてくれ」
すると目の前で銀髪がみるみるうちに銀色の毛並みをした大型犬へと変化した。
(でかいな)
(ていうか、変身しているって本当だったのか)
変身した銀髪は十文字の傍に移動してくると布団の上を陣取るように伏せる。
(なんだ? 寝るなっていっているのか?)
ふいに服の端を
そのままモフモフの上に倒れ込む形になる。
(うわ、これヤバいな)
十文字は犬好きである。猫も好きだが大型犬がとくに好きだった。贅沢なこの抱き枕状態に
「犬、いいなぁ」
思わずつぶやくと、遠巻きに眺めていた黒髪と茶髪が呆れたように訂正を入れた。
「犬じゃない」
「それ、狼よ」
「えっ」