かまいたちの夜とは?
文字数 2,113文字
自己紹介が遅れたが、俺の名前は土方総一。
今は23歳で、ゲーム制作には学生時代から現場入りしているため、キャリアは6年ほどになる。主にゲームアプリのシナリオ執筆やプログラミング、デバッグ作業などに関わり、ゲームづくりの一通りの経験は積んでいるつもりだ。
名前の「総一」は、幕末期に活躍した新選組の一員である沖田総司の「総」だけを抜き取り、単に後ろに「一」をくっ付けただけ。お祖父ちゃんが、同じ新選組である土方と沖田の両方の名前を持てば強そうだという理由でこれに決まったらしい。
別に強くなったつもりはなく、立派な陰キャに育ちましたけどね。
……話は逸れたが、そもそも『かまいたちの夜』とはどんなゲームなのか説明しよう。
現在、ゲームとしてのかまいたちの夜は様々なバージョンが存在するが、一般的に知れ渡っているのが以下の3つである。
・1994年発売 SFC版かまいたちの夜
・1998年発売 PS版かまいたちの夜 特別篇
・2017年発売 PS Vita版かまいたちの夜 輪廻彩声
他にも続編があったり、スマホやWindowsで遊べるものも多々発売され、サウンドノベルを一躍メジャーにしたタイトルと言えるだろう。
そして、かまいたちの夜のジャンルはミステリーである。
ゲームブックのようにプレイ中に選択肢のようなものが現れ、殺人事件の犯人を推理する仕組みになっている。シナリオの原作者は、推理作家である我孫子武丸氏。代表作に『速水三兄妹シリーズ』、『鞠夫シリーズ』、『ぼくの推理研究シリーズ』などがあり、かまいたちの夜もその一つである。
ミステリーゲームとしての評価は非常に高く、2017年にリメイク版を発売していることから、今でも人気作としてユーザーから認められている。俺がプレイしたのはリメイク版『かまいたちの夜 輪廻彩声』なので、SFC版のようにキャラクターがシルエット(影絵)ではなく、立ち絵イラストの印象が強い。
「佐野さん、今度のゲームは立ち絵イラストの方がいいっすかね?」
俺は同じ部署にいる先輩の佐野さんに相談した。
「それだと絵師さん(イラストレーター)に頼む必要があるだろ」
「ソシャゲ開発部の絵師さんを一人貸してもらうとか……」
「いや、そんな人員は割けないと思うぞ。あっちもカツカツだしな。それに、今度のゲームはノスタルジーに浸りたい意味もあるから、キャラクターは昔のまま全員シルエットにした方がいいかもね」
……なるほど、社長の意図が見えた気がする。予算を削りたいため、イラストを極力排除したゲームを作るつもりだな。おそらく声入れもするつもりはないだろうし、「シンプルイズベストで頼む!」と満面の笑顔で言われた意味がよく分かった。どこまでケチる気なんだ、あの野郎。
シルエットだの立ち絵イラストだのと、なんのことか分からない人に説明しよう。
SFC版かまいたちの夜では、登場するキャラクターがすべてシルエットで表現されており、ユーザーの想像力に頼る仕様になっている。一方、PS Vita版かまいたちの夜 輪廻彩声では、登場するキャラクターのイラストが追加され、ライトノベルに慣れ親しんだユーザーへのアピール材料となって注目を集めた。
それなら『メンヘラの俺が自然現象のかまいたちに首を切断され、チート級の探偵に転生したら100個の殺人事件を解決してモテモテになった。だけどお菓子を万引きして警察に逮捕される』とかのタイトルにすれば、このゲームも少しは売れる(?)かもしれないけど、下手に印象が強くなるのは避けたいんだろうなぁ。ああ、俺だって有名な絵師さんや声優さんに頼みまくって、AAA級のゲームを作りたいよ。
……そんな話はさておき、ゲーム開発の方向性はある程度決まったように思える。
では肝心のストーリーはどうだろうか?
かまいたちの夜の目的を簡単に説明すると、「真冬のペンションで起こった殺人事件を推理して犯人を当てる」というもの。ペンションは豪雪により外界から隔離されているため、クローズドサークル型のミステリーとなる。犯人が分からなければ、いくつかのバッドエンディングも用意されており、場合によっては悲惨な結末を迎えることになる。サウンドノベルとしての難易度は比較的高いため、初めてプレイした人のほとんどがバッドエンディングに辿り着くのも、ゲームの特徴の一つなのだ。
また、ミステリーだけでなくホラーやサスペンス、コメディといった要素もあり、謎解きだけではない物語が多種多様に用意され、ユーザーを飽きさせない内容になっている。俺も2、3のエピソードを考えているから、ゲームの中にしれっと入れてやろうと企んでいる。不評だったらAIのせいにすればいい。
……それから、とてもとても大切なことを言っておくぞ。
俺の話をここで聞きたい人、もしかして『かまいたちの夜』をまだプレイしてないなら、今すぐにでもこの場を去りなさい。何故ならゲームのネタバレに触れる可能性があるからだ。
犯人を忘れた人もダメだ。もし忘れたなら、新鮮な気持ちでまた遊べるじゃないか。俺はユーザーの楽しみを奪うようなことはしたくないからね。
今は23歳で、ゲーム制作には学生時代から現場入りしているため、キャリアは6年ほどになる。主にゲームアプリのシナリオ執筆やプログラミング、デバッグ作業などに関わり、ゲームづくりの一通りの経験は積んでいるつもりだ。
名前の「総一」は、幕末期に活躍した新選組の一員である沖田総司の「総」だけを抜き取り、単に後ろに「一」をくっ付けただけ。お祖父ちゃんが、同じ新選組である土方と沖田の両方の名前を持てば強そうだという理由でこれに決まったらしい。
別に強くなったつもりはなく、立派な陰キャに育ちましたけどね。
……話は逸れたが、そもそも『かまいたちの夜』とはどんなゲームなのか説明しよう。
現在、ゲームとしてのかまいたちの夜は様々なバージョンが存在するが、一般的に知れ渡っているのが以下の3つである。
・1994年発売 SFC版かまいたちの夜
・1998年発売 PS版かまいたちの夜 特別篇
・2017年発売 PS Vita版かまいたちの夜 輪廻彩声
他にも続編があったり、スマホやWindowsで遊べるものも多々発売され、サウンドノベルを一躍メジャーにしたタイトルと言えるだろう。
そして、かまいたちの夜のジャンルはミステリーである。
ゲームブックのようにプレイ中に選択肢のようなものが現れ、殺人事件の犯人を推理する仕組みになっている。シナリオの原作者は、推理作家である我孫子武丸氏。代表作に『速水三兄妹シリーズ』、『鞠夫シリーズ』、『ぼくの推理研究シリーズ』などがあり、かまいたちの夜もその一つである。
ミステリーゲームとしての評価は非常に高く、2017年にリメイク版を発売していることから、今でも人気作としてユーザーから認められている。俺がプレイしたのはリメイク版『かまいたちの夜 輪廻彩声』なので、SFC版のようにキャラクターがシルエット(影絵)ではなく、立ち絵イラストの印象が強い。
「佐野さん、今度のゲームは立ち絵イラストの方がいいっすかね?」
俺は同じ部署にいる先輩の佐野さんに相談した。
「それだと絵師さん(イラストレーター)に頼む必要があるだろ」
「ソシャゲ開発部の絵師さんを一人貸してもらうとか……」
「いや、そんな人員は割けないと思うぞ。あっちもカツカツだしな。それに、今度のゲームはノスタルジーに浸りたい意味もあるから、キャラクターは昔のまま全員シルエットにした方がいいかもね」
……なるほど、社長の意図が見えた気がする。予算を削りたいため、イラストを極力排除したゲームを作るつもりだな。おそらく声入れもするつもりはないだろうし、「シンプルイズベストで頼む!」と満面の笑顔で言われた意味がよく分かった。どこまでケチる気なんだ、あの野郎。
シルエットだの立ち絵イラストだのと、なんのことか分からない人に説明しよう。
SFC版かまいたちの夜では、登場するキャラクターがすべてシルエットで表現されており、ユーザーの想像力に頼る仕様になっている。一方、PS Vita版かまいたちの夜 輪廻彩声では、登場するキャラクターのイラストが追加され、ライトノベルに慣れ親しんだユーザーへのアピール材料となって注目を集めた。
それなら『メンヘラの俺が自然現象のかまいたちに首を切断され、チート級の探偵に転生したら100個の殺人事件を解決してモテモテになった。だけどお菓子を万引きして警察に逮捕される』とかのタイトルにすれば、このゲームも少しは売れる(?)かもしれないけど、下手に印象が強くなるのは避けたいんだろうなぁ。ああ、俺だって有名な絵師さんや声優さんに頼みまくって、AAA級のゲームを作りたいよ。
……そんな話はさておき、ゲーム開発の方向性はある程度決まったように思える。
では肝心のストーリーはどうだろうか?
かまいたちの夜の目的を簡単に説明すると、「真冬のペンションで起こった殺人事件を推理して犯人を当てる」というもの。ペンションは豪雪により外界から隔離されているため、クローズドサークル型のミステリーとなる。犯人が分からなければ、いくつかのバッドエンディングも用意されており、場合によっては悲惨な結末を迎えることになる。サウンドノベルとしての難易度は比較的高いため、初めてプレイした人のほとんどがバッドエンディングに辿り着くのも、ゲームの特徴の一つなのだ。
また、ミステリーだけでなくホラーやサスペンス、コメディといった要素もあり、謎解きだけではない物語が多種多様に用意され、ユーザーを飽きさせない内容になっている。俺も2、3のエピソードを考えているから、ゲームの中にしれっと入れてやろうと企んでいる。不評だったらAIのせいにすればいい。
……それから、とてもとても大切なことを言っておくぞ。
俺の話をここで聞きたい人、もしかして『かまいたちの夜』をまだプレイしてないなら、今すぐにでもこの場を去りなさい。何故ならゲームのネタバレに触れる可能性があるからだ。
犯人を忘れた人もダメだ。もし忘れたなら、新鮮な気持ちでまた遊べるじゃないか。俺はユーザーの楽しみを奪うようなことはしたくないからね。