なにもない一日

文字数 476文字

晴れているのか雨なのか
起きているのか眠っているのか
なにもない日は
チョコレートを口にして
昨日までの責務を消化する
影はまだ濃い
羽虫が二十世紀を横切った
それは外套を羽織った女性だ
足音がコツコツと
ネオンの隙間に鳴り響く
誰かが教えてやらないといけない
誰かが……やらないと……
暇さえあれば月が傾く
煙草はもう飽き飽きた
真っ黒な胸の空洞
ああ酒が飲みたい酒が
目の見えない夢の世界で老けていく
札束が空から降ってきて
初恋の人が買われていった
卑しい子供(ガキ)どもが笑う
喧しい水道をひねる
気怠い明日が溢れそうになって
慌てて耳をふさぐ
二日酔いの観葉植物は嘔吐する
西日の差し込む六畳半
自身の薄くなった影を見つめながら
生きるのが少しだけ嫌になって
垂れ流しているテレビの雑音を床に埋める
いつの時代も老いていくのは男だけだ
性懲りもなく煙草に火をつける
町に明かりが灯っていく
大いにくたびれたなにもない一日
ただ夢が見たい
月が出ているのかいないのか
誰か教えてくれないか
塩を指につけて舐める
生きるのも死ぬのも同じようなもんだ
甘いようなしょっぱいような
いつだって世界のどこかでなにかが光ってい
 る
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