第4話 誇りか居場所か
文字数 1,838文字
いつも通り各文化部へ遊びに...ではなく調査をして回る理系トリオ。
だが今回はなんだか気が進まなさそう...?
もちろん。彼女のところだってれっきとした文化部じゃないか
う~...俺たち門前払いされたりしないでしょうか...?
う、どうだろう...
さすがにそこまではされないのではないか?
ちわーっす、理系トリオでーす
文芸部さんいますかー?
おい、そんな言葉遣いじゃそれこそ門前払いを食らうぞ...!
...マジか。えーと、失礼致します、僕たち理系部活の者なのですが、文芸部女史に所用があって参りました...?
...言葉遣いの問題ではないのだけれど。そもそも正しく使えていなければそれは言葉への冒涜と同じ。それにキャラクター性と合わない言葉遣いもまた、創作への侮辱ね
化学部さんが丁寧な言葉遣いをすると気味が悪いということよ
...それはさておき、ここに来たということはあなたたちの日々の読書習慣をテストしてもいいということよね?
ああ、あの有名な科学雑誌ね。
...自分の分野以外にも興味を持って欲しいわね。次、生物部さん
それは本というより図鑑ではないかしら...?
...一応聞いてはみたけれどまあ、あなたたちならそんなものよね...
...!
意外。...いや、あなたらしいチョイスとも言えるかしら
...とりあえず合格よ。各部活の事情を調査しているのでしょう?面白いものはないけど好きに見ていって
席に座っている部員よりも部員たちが囲っている長机に置いてある本の数の方が多い。
...入口のやり取り見てましたけど、もしかして文芸部先輩、他の部の方にもそのテストしてるんですか!?
君は文芸部の部員か?
僕たち“にも”ってことは文芸部ではあれが日常茶飯事なのか...?
ええ、そうなんですよ!それに、入部する時にも厳しい審査があるんです...!
そのせいで全然部員が集まらなくて...
“厳しい”?普通に本を読んでいれば大したことない質問じゃない
私、他校の子から聞いたことあるんですけど、普通の文芸部はもっとゆるくて、ラノベとか漫画とか読んだり書いたりしてるって...!
よそはよそ、うちはうち。
...それとも文学や創作論を語り合うのはつまらない?
い、いえっ!私はここの活動大好きです!
でもこのまま人が入らなくてこの場所がなくなるのは嫌だなって...
...さすが厳しい条件があっても入部した子たちですね、部に愛着があるし何より熱心に活動してます~
これは部誌か?読むだけじゃなくて話を書く方もやっているんだな。
...どれ、おおっ、俳句?短歌?を書いている部員もいるんだな!
うちは古典を研究している子もいるわ。
小説を書く子たちの中にもコンテストで賞を取る実力がある子も何人か。
...そう、無理に人を集めなくても、うちは実力と誇りで成り立っているのよ。
本来文化部はそうあるべきじゃないかしら?
ですね...。それに真面目な子が誇りを持って活動していればそれだけでもその部の良さは伝わるかも...
は~、何度話しても慣れませんね。
俺、ずっと緊張しっぱなしでしたよ~!
だが文芸部には確固たる信念があるのは確かなようだ。うーん、僕たちの仲間になってもらうのは難しそうか?
ですね...。でも、文化部としての誇りがあってかっこよかったですね~
(部(オレら)の存続を望む存在を大事にした方がいいんじゃないかね...)
文化部さんファイル6文芸部:文系の部活動さん。主に本を読んだり小説を書いたりしている。特技は製本。古典から話題の作品まで幅広く読むが、彼女自身はラノベがあまり好きではない。また、部室をたまり場として使うだけのエセ部員に対しても当たりが強い。
それほど予算を使う部ではないため財布には多少余裕があるものの、こだわりが強く幽霊部員を許さない性格ゆえ部の存続が危ぶまれている。
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