第39話 カツオ型魚雷ロボット
文字数 908文字
次の日の朝、アオイたちは二手に分かれて和倉奪回作戦を開始していた。
慧子とコータローは、「機械屋」と一緒に漁船に乗り込み、和倉が潜んでいる大型クルーザーに近づきつつあった。
アオイ、世津奈、池辺の3人は、クルーザーの母港にある廃屋に隠れて、入港したクルーザーから和倉を連れ出す準備をしていた。クルーザーの母港とこの廃屋は、佐伯の部下が発見したものだった。
これは、本当に大した代物ね。これだけのロボットを作れるエンジニアは、めったにいない。
そう言って慧子は漁船の甲板に転がっているカツオ型魚雷ロボットの黒光りする滑らかな外装をなでた。
世辞を言ったからって、なにも出ないぞ。佐伯から報酬を受け取るまでは、俺は素寒貧だ。
「機械屋」さん、もう一度動かしてみて。
水中以外で動かすと故障のもとだ。
突然、漁船が右に大きく振れた。操船中のコータローが右舷に舵を切ったのだ。
バカヤロー、船をまっすぐ走らせろ！
ボク、船を操るのに夢中で、さっき見てませんでした。ボクも見たいっす。もう一度動かしてください。
まったく、お前ら、バカか。
私は、あなたと同じ「技術バカ」。コータローさんは「数学バカ」。「バカ上等」じゃない。
チッ、少しだけだぞ。
「機械屋」がスマホのタッチパネルを操作すると、甲板の上で、カツオ型魚雷が、釣り上げられたカツオそのままに全身をのたうたせた。
すごいっすね。まるで、本物の生きたカツオだ。水中ではカツオと同じ泳ぎ方をするんすよね。
この俺が、スクリューで進むようなダサイ魚雷を作るわけないだろう。カツオと全く同じ泳ぎ方、スピードで水中を進む。連中が音波探知器を使っていても、他の魚に紛れて探知できない。
厳密に言うと、材質と内容物が違うから本物のカツオとは違う反射波を出します。
連中が、魚を、一匹、一匹識別できる探知器を備えていれば、そうなる。
もし、そんな事態になったら、また別の方法を考える。仕事を引き受けた以上、なんとしても、やり遂げる。それが、プロってもんだ。
頼もしいわ。
よし、これからプロの腕前を見せてやる。カツオ型魚雷ロボットをを海に放つから、手伝え。
「機械屋」は、慧子に手伝わせてカツオ型魚雷ロボット５体を海に放った。
