第4話(3)

エピソード文字数 1,890文字

「ここが、ビベロベロベロリン王国か。日本と遜色ないね」

 俺は、高級ホテルのような美麗なロビー――会場にある受付所で、間抜けに四方八方を眺め回す。
 参加者と思しき身長5メートル強の怪物はいるが、大会のスタッフは全員日本人そっくり。空間も空気も、ジャパンと大差ない。

「うふふ、従兄くん。違うわよ」
「え? なにか違う部分あった?」

 おかしいな。見える範囲に、そういうのはないけどなぁ?

「『ニ』、が抜けてるわ。ここは、ビベロニベロベロリン王国よ」
「こまけぇんだよ! それくらい看過しろや――ああしまった!」

 俺は頭を抱える。ま、まただよ……。また、やってしもうた……っ。

「いやぁんっ。…………やだ、こんな所で恥ずかしい声を出しちゃったわ……っ」

 変態がクネクネしてるよ! トラップにかかったよ!

「にゅむむっ。シズナちゃん、テンション上がってるねー」
「無理もないぜよ。会場に来たら、誰でもそうなるきにゃぁっ!」
「いやいやいやいや。コイツ、普段のまんまだからね?」

 お前らの目は節穴か。この女は、年から年中これだ。

「……はぁー、こんなことしてたら精神が持たない。さっさとエントリーするよ」

 俺はシズナの服を引っ張り、「んぁ……。まだここで余韻を、楽しみ、たい……っ」とか言ってきたが無視。レミアとフュルも連れて受付に行った。

「こんばんは。登録お願いしまーす」
「ようこそおいでくださいました。初出場の方はお名前を、出場経験ありの方はIDを御教え願います」

 温厚そうな中年男性が、ノートパソコンのキーボードに指を載せる。
 突然ですが、ここで豆知識。あの手紙は力の強さだけを調べて送っているため、事細かなデータがないそうな。

「俺は、初出場です。名前は色紙優星で、年齢は16ですよ」
「いろがみ、様。御職業は、どうなっておりますか?」
「職業? 職業は…………高校生で、魔王使いですね」

 バタン! それを聞いた中年男性さんは、ハイキックを喰らったかの如くぶっ倒れた。

「うおっ!? どうされたんですか!?
「ま、魔王使いといえば、継承者がいなくなり絶滅した最強の職業……っ。まさか、またお目にかかれるなんて……!」

 お、拝まれてる。俺、掌を擦り合わせて拝まれてるよ。

「にゅむー。魔王使いさんって、最強(さいきょー)の職業(しょくぎょー)だったんだねー。初耳さんだよっ」
「ワシもそうぜよっ。こりゃあ思わぬ幸福やにゃぁ」

 強い肩書があったら、それを全面に出していけば相手はビビる。こいつはナイスな誤算だ。

「生きている間に、再び出会えるとは思っていませんでしたよ……! ありがたやありがたや……」
「は、はははは。ちっとも有難くはないですよ?」
「ご謙遜をっ。こ、こちらの色紙にサインを頂けますかっ?」
「は、はぁ。構いませんよ」

 色紙(いろがみ)が色紙(しきし)にペンで名前をカキカキして、俺の登録は終了。続いてレミア、フュル、シズナも登録を済ませた。

「コホン、一時大変失礼致しました。組み合わせの抽選を行いますので、この中からボールを一個お取りください」
「はい。んーと…………これにしよっかな」

 チームリーダーを務める俺が、箱に手を突っ込んでガサゴソ。3秒ほど探り、えいっと玉を取り出す。

「ゆーせー君っ。なんて書いてますかー?」
「……。ボールには、『婉曲型のベロ』って書いてた」

 数字があると思っていた僕は、まだまだ旅慣れていないんだな。はっはっはっはっは、はぁ。

「婉曲型、でございますね。皆様は30分後に第4ドームで、ふんわり型を引かれたチームと対戦になります」
「ふ、ふんわり……? ベロがふんわり……?」
「控え室は、第4ドーム内にある『ペロリん』でございます。そちらにあるお飲み物や軽食は無料ですので、ご自由にお召し上がりください」

 当惑していると、受付さんはにこやかに説明してくださった。
 の・は、何も問題ないのですがね……。彼は『ペロリん』の後に、ぺろっと舐める仕草をしてたんですよ。しかもそれが妙にチャーミングで、なんか複雑な気分になりましたです。

「成程、私達の試合は三十分後なのね。第四ドームは移動に五分くらい掛かるみたいだから、行きましょうか」
「そう、だね。……試合前から、随分心をやられたぜ……」

 俺はよろつきながら、ペロリんへとゴー。控え室では『サイダー ヨダレ味』ってある飲み物にげんなりなって、嫌気が差している間に入場時刻となりました。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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