第1話

文字数 368文字

〈おまえをころす〉

と、書いてあるのだろうか。

震えた文字で、そう書いてあるようにも見える紙きれが、ベッドの下に落ちていた。



私を殺そうとしているやつがいるのだろうか。

「いったい、だれが……」

見当もつかない。どうせ、だれかのいたずらだろう。

実際そう書かれているのかどうかも、はっきりとはわからない。

そもそも、こんなへたくそな文字を書くようなやつが、私を殺せるはずがない。

私は、そのいまいましいメモをにぎりつぶし、ごみ箱へ放りなげた。

そして、ぼんやりとベッドにすわりこんだ。



頭の中に霧がかかってくるようだった。その霧はだんだんと濃くなって、私はつぶやいた。

「ところで、私はだれなのだろう。だれだったのだろう……」



そこで、はっとわれに返った。

いかんいかん、ぼんやりしていた。私は私だ。最近、なんだか記憶があいまいな気がする。少し疲れているんだ。

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