3-7.撃て

文字数 1,039文字

特殊機動部隊の戦闘員3名ほどが足音も立てず女風呂に入ってきた。そのうち1名のナイフには、温泉宿の主人のものと思われる血がべっとり付いている。



戦闘員は念入りに浴槽内を調べる。


がたがた震えながら、左手にバスタオルだけ持って前だけを隠しつつ、右手に(ほうき)を持ちながら、美羽は息を潜めていた。

脱衣室に、人1人入れそうな清掃用具入れ棚があり、中の箒類は外に出されていた。



清掃用具入れ棚の異変に気付いた戦闘員の1人が、ジリジリと近づいてくる。

戦闘員が棚に手をかけようとしたそのとき、



「ぬああああ!」



その反対正面の洗面台の真下から飛び出した美羽が右手の箒の柄の部分をその戦闘員の背中に突き刺した。

一瞬戦闘員が怯む。

美羽はそのまま浴場を出て温泉宿の出口にダッシュした。



3人の戦闘員が追ってきた。


角を曲がる。

走る美羽の前に戦闘員1名が待ち構えていた。

箒を投げつけるが戦闘員は片手でそれを跳ね除けた。

後ろからは3人が追ってくる。


挟み撃ちにあい、絶体絶命。



美羽は咄嗟に、壁の横の美羽の泊まっていた部屋に入った。

ジリジリと4人の戦闘員が美羽に詰め寄ってくる。

バスタオルだけ持った美羽は壁側に追い詰められていった。



戦闘員の一人が美羽に飛びかかったその時、

ドガンと大きな音をして、壁を突き破って白いセダンが部屋の中に突入してきた。



飛びかかった戦闘員は哀れにも車と壁の残骸の下敷きになった。



運転席の窓から沖津が何発か拳銃を戦闘員に向かって撃つ。戦闘員はしゃがんで躱した。



「乗れ!」



沖津が助手席を開けると美羽が助手席に入った。

沖津は美羽のスーツケースを取り車の中に入れると、バックして空けた部屋の穴から車を出した。
そのまま江ノ島弁天橋に進入し、車で進む。

戦闘員3人は後ろから走って車を追ってきた。

沖津は美羽に銃を渡した。



「撃て」



本物の銃を持つのは当然生まれて初めてだったが、美羽は覚悟を決めた。

助手席の窓から身を乗り出すと、戦闘員に向かって拳銃を放った。

パンッパンッと音がする。



「あ・・・当たんない!」



沖津は車を横にすると、美羽の拳銃を持つ手を上から掴んだ。



「こうやるんだ」



そのまま二発放った。

2人の戦闘員が倒れる。


最後の戦闘員は拳銃を取り出し、二人の乗る車に向けて撃ってきた。
沖津は美羽の頭を抱えてしゃがませると、そのまま車を走らせた。



戦闘員の銃声が鳴り続けていたが、2人に命中することは無かった。
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