第11話 完璧を求めない

文字数 779文字

 自分のことを、とにかく書こう。
 私には完璧を求める癖がある。それによって、不安が増大し、心配事にも事欠かない。
 おむつ交換を完璧にできているのか。お風呂の際、機械操作・手順、ムダな動きを省けているか、効率よく出来ているか。食事の分量、各自違うスプーン、箸の違いを完全に覚えられているだろうか。
 考えただけでドキドキする。ノートを見ても、ほんとうに覚えていられるのか、不安になる。

 しかし結局、おむつは漏れなければいいのだ。お風呂は、作業の流れに任せて、それこそ自然に、こなせばいいのだ。難しく考えて、単純なことをややこしくさせることはない…ややこしいことを、単純に考えることの方が肝心だ。

 完璧を求めて、よし完璧にこなせたとして、ほんとうにそれが完璧かどうかなど、知る由がない。自分の自己満足で、相手にとっては、不完全極まりないものかもしれないではないか。
 中道がいい、ほどほどに、適度に、よい加減に。
 
 完璧でないことを許せないとしたら、究極のところ「生きるか死ぬか、それが問題だ」に行き着くだろう。そんな窮屈な、二元論にあてはめられるほどの存在か、ニンゲンは。
 山奥に、誰もいない所に一人住んでいたならば、完璧はあり得るだろう。物事の基準、ものさしが、「私」だけの世界。そこに生きていない以上、完璧はあり得ない、と思おう。思ってしまおう。

 ただ私にできることは、自分ができることをするだけである。自分以外にはなれない。それでも、なろうとして、なれずに、自分に失望してきた。欲が、ある。完璧を求めるのは、その最たる大欲だろう。
 完璧なんか無い。でも、ある。で、それに近づこうとする。
 物の道理として、こうした方がいいに決まっている、と万人が思う一致点はある。それについて、近づこうとしたい。
 形而上と形而下。これが「メリハリ」と呼ばれるもののように思う。
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