第5話(14)

エピソード文字数 1,634文字

「なっ! どうして僕の名前を……っ」
「アホか。テメェが言ったんだろ――って、んなのはどうでもいいんだ」

 ほんと、どうでもいい。マジでどうでもいい。

「俺はさぁ。今、めーっちゃくちゃ腹が立ってるんだよ」

 掌に爪を五つ食い込ませ、言の葉を紡ぐ。

「別によぉ、順位はどーでもいーんだ。コイツはランクに関心がなくって、俺はそういうトコも好きだから」
「だっ。だったらなぜ……」
「今日はな、年2回しかないこの子の休日なんだ。俺はそんな日を台無しにしたお前に、心の奥底からイラついてるんだよ!!

 人間はプラスよりマイナスな出来事が刻まれる生き物で、育月はこれが今日一番の思い出になってしまう。俺は、それが許せないんだ……!

「もうね、脅すのやめましょうなんて言わない。すまんが育月、少し目を瞑っててくれ」
「ゆ、優星……」
「面倒かけてゴメン。これ以上、楽しくない光景を見せたくないんだよ」

 それに。この子は、非日常を知らない方がいい。

「俺はむこうで、護身術を齧ってたりするんだわ。大丈夫だから目を瞑っててくれ」
「…………わ、分かったわ……」

 育月は、逡巡しながらも瞼を下ろした。
 んっ。これなら、見られる心配はないな。

「こ、こっちには拳銃があるんだぞ! 勝ち目はないんだぞっ?」

 ピストルは、脅威ではない。そんなの、本物でもおもちゃ同然だ。

「……『絶加速』」
「なっ、何を呟いている! 逆らうと痛い目に――」
「遭うのは、お前だ」

 俺は力一杯地面を蹴り、野緑に突進。10倍の速度を得た俺は瞬時に肉薄し、自分でも認識できない間に――ヤツに体当たりしていた。

「っっ!? ぐあああっ!!

 野緑陽光はド派手に吹っ飛び、「まだ終わらねーぞっ」。俺は、倒れたヤツに馬乗りになる。
 これでコイツは、一切抵抗できない。無力化成功だ。

「育月、終わりました。瞼を上げていいよ」
「…………ゆ、優星……。アンタ、どうやって……?」
「護身術の中には、便利な技があるんだよ。備えあれば憂いなしだ」

 と嘯いて辻褄を合わせ、妹との会話は一旦終わり。俺は顔を険しいものに戻し、野緑の耳に口を近づける。

(育月の居場所を把握できているなど、非地球人な点が多々ある。よってアンタは異世界人となるんだが、どこの生き物なんだ?)
(ぼ、僕は……。『白金族』、だよ……)

 世にも珍しい、白金色をした虹彩。ヤツがサングラスを外すと、見覚えのあるものが現れた。

(ほぉ、知り合いがいるトコだったか。しかしこれは…………)

 いや、十人十色でこうなる可能性はある。だからおかしくはない。
 でも……。今思えば、あれは…………。

(な、なにジッと見てるんだ! なんなんだよっ!)
(…………なんでもねーよ)

 先に、やることがある。それは後回しにしよう。

(悔しいが、降参だ……! さっさと警察を呼べよっ!)
(はぁ、うるせぇな。言われなくてもそうするっての)

 俺は両足で野緑の両腕を踏み、厳重に拘束。念には念をで反抗のチャンスを完全に潰し、首を後ろに捻る。

「育月、レミア達を呼んできてくれ。三人は…………シズナの両親は警察官で、あの人を通した方が話が早いんだよ」
「え、ええっ。待ってて!」

 咄嗟に嘘の説明をし、それを受けた従妹は反転する。そうして2~3分が経過した頃、英雄達が駆け付けてくれた。

(みんな、ご苦労様です。早速で悪いけどレミアは、ベンチで育月をフォローして欲しいんだ)
 ほんわかしてる子といたら、恐怖が和らぐからな。サポートお願いします。
(こっちは、俺らで大丈夫だからさ。頼みますです)
(にゅむっ、引き受けましたっ。育月ちゃんを元気にするよーっ)

 レミアは可愛らしくニパッと笑い、従妹の手を引いてこの場から離れた。
 …………さて、と。アイツの目がなくなったことだし、通報等を始めるとするか。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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