第10話 保育園入園

文字数 759文字

 失業中、四か月間の公共職業訓練を受けた。朝九時から夕方四時までのホームページ作成講座で、育児の時間も十分に持てた。
 それでも、日中ひとりで娘の世話をするのは、妻には負担のようだった。妻の母は、「娘は育児ノイローゼみたい」と心配した。
 仕方なく、翌年四月に一歳になったばかりの娘を家からすぐ近くの保育園に預けた。
 私の両親は娘がまだ小さいからかわいそうだと言ったが、家の中で、妻が育児のストレスから私に当たることを両親には話せなかった。妻と娘が二人きりで過ごす時間が、私には不安で仕方なかった。両親と同じ気持ちだったが、妻をかばい、両親の反対を押し切り、入園を決めた。

 妻も職業訓練を受け、日中の育児から解放されることになった。私は午後五時までの契約社員として働いた。家から会社が近いため、朝は妻が用意した離乳食を私が娘に食べさせ、妻が用意した服を私が娘に着せ、保育園は妻に任せて出勤した。娘が御飯を嫌がった時や着替えを嫌がった時、妻がパニックになってしまうため、保育園の準備は私の仕事だった。
 保育園には、私の両親が夕方四時前に迎えにいった。まだ一歳になったばかりなのに、遅くまで預けるのはかわいそうだという両親の思いからだった。

 私が娘の朝の準備から夜の入浴、寝かしつけまでをしていたため、娘は妻よりも私に懐くようになっていた。
 私が妻より先に帰宅すると、娘はじいちゃんとばあちゃんに「バイバイ」と手を振り、私と遊ぼうとしてすぐに私のそばに寄ってきた。妻が先に帰宅した時、娘は祖父母ではなく、妻に「バイバイ」と手を振って、また祖父母と遊び続けようとすると、父から聞かされた。母親に娘が懐いていないんじゃないかと心配している様子だったが、妻の精神状態を思うと、今さら役割を変えることはできなかった。
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