教会に行きたくなった。田原先生に相談したいから

文字数 1,671文字

それで、何事でも、 自分にしてもらいたいことは、 ほかの人にもそのようにしなさい。
これが律法であり預言者です。マタイ:7・12

英子にラインをした。明日の礼拝に行きたいって。すぐに返信の電話が来た。
「修三君どうしたの?嬉しいけれど、なんか最近少し変だよ、ごめんなさい、きつい言い方で」
俺は変どころか、英子と付き合っていながら、里奈ちゃんとキスしてしまったのだ。
「なんかさ、最近バイト始めたり、環境が変わってきて、季節の変わり目もあいまって、たしかに変かも。変と言えば、田原先生とも久しぶりに話したくなって」俺は里奈ちゃんのことを先生に話をして、相談したかった。だから教会に行きたくなった。礼拝なんてどうでもいいのだ。
「私も同席してもいい」
いいはずがない、俺は興奮しないようになるべく冷静に答えた。
「ん?たまには男同さしで話してみたいんだ、ごめん」
「うーん、そうなんだ。それではお邪魔しないことにする」
「うん、ありがとう」

次の日、礼拝が終わった後、先生に相談したいことを話をしたら、牧師室に入るように言われた。そして、先生に里奈ちゃんのことを正直に話をした。自分一人では抱えきれなくなってきし、罪悪感をあまり感じないことに罪悪感を感じていたからだ。
「うーん、難しいな。英子さんには話していないよね」
「はい、まだ。話をした方がいいんですか?」
「だめ。だめだ」先生は少し怖い顔をしてそう言った。
「わかりました」俺はそう言って、田原先生は牧師なのに、正直に話すことを止めたことが気になった。
「世の中ね、馬鹿正直という言葉があるよね。正直すぎると、本当に馬鹿をみるんだ。特に男女では、言わない、正直に話さないことも大事なんだ。妻とも仲がいいし、信頼関係があるけれど、僕らの中にも正直に話過ぎないことを心がけて先生は夫婦生活を維持している。言ってはいけないこと、真実なんだけど、正直に話さない方がいいことがあるんだ。聖書にも、マタイの10章16で、蛇のように賢く、鳩のように素直にという御言葉があるように、時には知恵を使って、
蛇のように賢く対応しなければならないことがある」
「はい」俺はそう言ったが、なにか腑に落ちないというか、先生の意外なアドバイスに驚いた。
「まあ、修三君は、クリスチャンでもないから、今までよく我慢したとも言えるかな。でも、先生は悲しいな、神様も同感だと思う」
「どうしたらいいですか?」
「今すぐその女性との関係を断ちなさいと言いたいけれど、一筋縄にいかないだろうから、マタイの7章12節に何事でも、 自分にしてもらいたいことは、 ほかの人にもそのようにしなさいという御言葉をいつも口ずさんで欲しい。修三君が今まで我慢して、英子さんに接してきたように、英子さんが修三君に本当にしてもらいたいことを考えるんだ。英子さんは純粋だから、本当に修三君と潔い関係を築きたいんだと思う」
「ありがとうございます。俺、今までまじ我慢しまくってました。今だ俺童貞だし、キスもしたことがなかったから、同い年と比べてすごくコンプレックスがあったんです。おまけに付き合ったこともなかったし。でも、幸か不幸か付き合うことが出来たと思ったら、相手は敬虔なクリスチャンだったんです。自分で決めたこととはいえ、なんで俺はこういう風な人生なんだって思います。だから、理名ちゃんという娘とキスが出来て、正直すごく楽になったというか、嬉しかったし、楽しかったし、なんかキスもしていないという負い目から解放されたんです」俺は言っていて、なんだか腹が立ってきた。
「そうだよな。うん、仰る通りだと思う。僕が修三君だったら」
「クリスチャンの世界、価値観って変ていうか、人生をつまらなくすると思います。英子がクリスチャンだから、たまには来ているけれど、そうじゃなかったら絶対に来ないです」言った後、先生は少し悲しそうな表情をしていた。その後、先生に祈ってもらった。俺は興奮状態で、何を祈ってもらったか全然覚えていなかった。

おしまい
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登場人物紹介

篠崎修三・・・20歳で初めて出来た彼女がクリスチャンだった。

佐藤英子・・・修三の彼女。3年前にクリスチャンになった。ちなみに修三とは保育園の時の同級生

上田基一・・・修三と同じ大学で同級生の友達。両親がクリスチャンで、小学校に入る前から教会に通い14歳の時に洗礼を受けてクリスチャンとなる。高校に入ったころから、高校3年生あたりから教会生活やクリスチャンに疑問を抱くようになり、大学に入学してから間もなく教会を離れる。現在は彼女、飲み会など遊ぶことが楽しく、教会を離れて良かったと思っている。

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