第3話 リマ(3)

文字数 2,234文字

 待ち合わせの名古屋駅の改札前に着くとすでに麗華の姿があった。彼女は水色のワンピースに麦わら帽子とシンプルな格好であったがそこからは幼さを感じられこれもまた優人の心をつかんだ。彼女は優人の存在に気が付くと彼のそばまで行き左手を出した。優人はその手をどのようにつかめばいいのか悩んでいた。
「優人君ってもしかして彼女できたの初めて?」
 麗華は優人の心を見透かしているかのように優しく諭すような声で言った。優人はこくりとうなずいた。すると夏帆は優人の指と指の間に自分の指を入れてそのつないだ手を優人の胸のあたりまで持ってきた。麗花がにこりと微笑む。優人はこんな女の子が自分なんかの彼女でいいのかわからなくなり少し自信を無くしてしまった。
 二人で巡る遊園地が優人は本当に楽しかった。何より麗華が始終笑って自分のほうを見つめてくれていたのが優人にはたまらなかった。楽しい時間はあっという間に過ぎ、すぐに帰らなくてはいけない時間となった。二人は予約していた新幹線が発車するぎりぎりまで大阪を堪能して名古屋まで戻ってきた。
「今日は楽しかった~。でもちょっと疲れた。ちょっと休憩してかない?」
 麗華はたくさんのお土産袋を持ち少し汗をかきながら優人に尋ねた。
「今日、うち親いないんだけど来ない?」
「えー、そうさせてもらおうかな。ちょっと優人くんの家でお風呂借りてもいい?汗臭くて死にそう」
 優人はどこかの話で見たことある展開だなと感じつつもその展開に従うことにした。
「ちょっとおなかすいてない?」
「確かに、ちょっとすいたかも」
「あそこのコンビニでちょっと食べ物買おうよ」
 家までの道での最後のコンビニを通りかかるとき優人は麗華に声をかけた。二人はコンビニに入り各々店内を見て回った。そこで優人は麗華の目を盗みコンドームをかごに入れた。しばらくすると麗花がいくつかの商品をもって優人の方へ来た。その商品らを優人の持つかごに入れると彼女はかごの持ち手を掴んだ。
「いいよ、ここは俺が払うから。麗華、先出てて」
 優人は麗華にこれから彼女を襲おうとしているのがばれては困る。彼女は何も言わずコンビニを出た。
 優人がコンビニを出ると自動ドアから少し離れたところで麗華は待っていた。その後二人はゆっくりと家へと足を運んだ。優人は何か話題を持ってこようと頭をひねっていたがいい話題は見つからなかった。
 何も会話がないままとうとう二人は優人の家に着いた。やはり家の電灯はすべて消され人気は感じられなかった。
 一昨日のピザの箱を片付け、コンビニで先ほど買ったものを二人で食べた後、麗華がシャワーを浴びに行った。そのとき優人が時計を見るとすでに日はまたいでいた。麗華が風呂場から出てくると彼女は優人が貸したパジャマを着ていた。
「優人君もシャワー浴びてくる?」
 麗華は濡れた髪をタオルで拭きながら言った。優人は彼女の誘導に従いシャワーを浴びることにした。優人がお風呂場から出てくると、一階には誰もいなかった。リビングに置いてあったスマホを見ると麗華からの通知が一件あった。内容は優人の部屋に先に言って待っているというものだった。優人は二階が自分の部屋だということを伝えたつもりはなかった。とりあえず優人はスマホとコンビニの袋を片手に二階に上った。
 優人がドアを開けるとそこには先ほど来ていた服を脱ぎ下着姿となった麗華がベッドに腰かけていた。
「遅い~」
 普段よりも甘い声の彼女は両手を広げながら言った。優人はそのまま襲うことはせず麗華の隣に座った。
「優人君って男の子らしくないね、大体このまま下着脱がすでしょ。優人君エッチ嫌い?」
 少し冷めたような表情で麗華は言った。
「そんないいの?心の準備とか」
「準備できてなきゃこんな格好じゃないでしょ」
「麗華、愛してる」
 そういうと優人は彼女の胸にあるワイヤーを外した。
 気が付くとすでに太陽がかなり高い位置まで来ていた。優人は周りを見渡すと自分が昨日着ていた服が飛び散っていたので拾ってもう一度着た。麗華はもうこの部屋にはいなかった。優人が一階に降りると麗華がエプロンを着てキッチンに立っていた。
 優人は軽く彼女に声をかけるともう一度二階に上りスマホなどを持って行った。再び優人が一階に戻ってくる頃には麗華がすでに朝食を作って待ってくれていた。献立はチーズトーストとオニオンスープでオニオンスープは昨日大阪で麗華が買っていたものだった。淡路島と言えば玉ねぎだもんねと麗華が言っていたが淡路島は兵庫県にあるということを優人は黙っておくことにした。
 優人が全体の六割ほどを食べ終わったところで不意にスマホを開いた。通知が一軒、忠博からだった。メールを開いてみると会議が早く終わったから今から新幹線で帰るという。そのメールが来たのが十時で優人が時計を見ると今は十一時をもうすぐ迎えようとしていた。優人は焦った。忠博が帰ってくる前に彼女の痕跡を無くさなければとんでもないことになる。
「ごめん、麗華。もうすぐお父さんが帰ってくるみたい」
「ヤバ!ごめんね、ゆっくりしちゃってて」
「そういえば、麗華のとこのご両親心配してない?日帰りって言ってきてるんでしょう?」
「実は私、もしかしたら三嶋さんのとこでお泊りするかもって言ってたの」
 優人はそこで自分がずっと麗華の手のひらの中にあることに気づいた。冷静に考えればこの旅行自体が夜を共にするためのものだったのかもしれないとすら思えてきた。
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