第40話  楓蓮と友達なのは聖奈だけ。

エピソード文字数 2,602文字

私にもやらせなさいよっ!

 第一声がこれだった。予想通りと言うか……


 というのは、今度時間のあるときに聖奈は楓蓮を色々と弄りたいと言ってたからな。

 

 あ、弄りたいというのは、髪の毛やら、色んな服を着せてみたいという意味だぞ。

ああ、分かってるよ。


好きにしてくれて構わん。好きなだけ弄くればいいさ

ほんと? じゃあ本格的にやるから、覚悟しておきなさい。

ついでに華凛ちゃんも女の子として目覚めさせないと

 何だか聖奈は、俺を女の子としても育成したいらしいのだ。

 なんで育成しようと思うのか。全く謎である。



 そんな疑問も持ちつつも、聖奈にはこう答える。

分かったよ。好きにしてくれ。

 俺はあまり乗り気じゃないけど。

 やたらと「やりたい」と言われりゃ素直に聞いたほうが良いと思ってな。


 無駄なことはいわない。反論しない。

 言った所で、聖奈が折れる訳が無いのだ。


……うん。ありがと。好きにするわっ
だが……これだけは言っておく。
でも聖奈。俺はそういうの。覚える気は無いぞ
あっそ。別にいいもん。今は! それで構わないわ
 無理無理。本当にやる気無いから。

 男である俺が、そんな事を覚えちまったら、マジで女の子になっちまいそうで怖い。

あ、そうそう。今週の土曜日なんだけどさ、時間取れそうなのよ。

前からあんたが言ってた遠方組のみんなで遊ばない?

 お? マジか?

昼過ぎから夕方くらいまでならいけそう。


蓮だったらこの時間はいけるんでしょ?

おおっ……ナイスタイミング過ぎる。バッチリの時間帯だ
私は楓蓮と二人きりでもいいわよっ

あ~~それは無理だ。


土曜日はバイトがあるから、昼間に楓蓮になると夜にリミットがきちまって、バイト終了まで時間がもたない。すまんな。入れ替わり体質ってのは色々縛りがあるんだよ

 せっかく提案してくれたのにな、すまん。

 

 一応、日曜日や祝日ならその時間でもいいぞ

 学校もバイトも無い日なら、サイクルを調整して、昼間にも楓蓮にもなれる。

 

 

 そう言ってみるが、今度は聖奈が無理らしい。


わかった。じゃあ今週はみんなで遊びましょ。

前々からの約束だもんね。

聖奈の提案に二つ返事の俺だった。
ねぇ。何か機嫌良さそうね? 声で分かるわよ

そりゃ嬉しいさ。前から遠方組のみんなとは遊びたいと思ってたし……


それにさ。実を言うと俺……

蓮では友達と遊んだこと。一度も無いんだよ

 友達と遊ぶ以前に、その友達すら居なかった。という説もあるが。
え? そうなの?
うん。お前だから正直に言うけど……だから嬉しくてさ

ちょっと待って。蓮では。ってことは……


楓蓮ではあるでしょ?

 そこに突っ込んでくるのかよ。
そりゃある。あるけど……
あるけど。なに?
何だか……あまり人に言いたくない会話になってきた。

なぁ聖奈。この話。やめていい?


あまり喋りたくないんだ。また今度話すから

 俺がガチで喋っているのをすぐに悟ってくれるのは嬉しい。

 少しの間沈黙したが聖奈は「分かった」と了承してくれた

あんまりいい思い出じゃ無さそうね
あぁ。控えめに言ってトラウマになってる

中学の頃。色々あってさ……その時思ったんだ


楓蓮には友達は必要ない。って

 再び沈黙したが、その空気に耐え切れず、俺から切り出した。

聖奈。楓蓮と友達なのは……俺の正体を知るお前だけでいい。


だからお前の好きに弄ってやってくれ


 楓蓮と親密にできるのは、入れ替わり体質だと知ってる聖奈と、あとは平八さんくらいだ。



 外部の人間には越えられない壁のようなものがある。

 楓蓮は決して他の人間には気を許したりしないし、深く付き合おうとする気も無い。


 その理由は簡単。

 俺は女ではない。シンプルな回答だ。


 俺は中学の頃、色々と訳があり、楓蓮で世に出ていた。

 友達も出来たし、人間関係もそこそこ上手くいくのは経験してきたが……


 その友達と仲良くなり、もっと仲良くしようとすると、女に成りきれない俺にとっては友達付き合いの難易度も上がってゆく。

  

 女の子の話題にも合わせなきゃならんし、それは俺にとって……心まで女にならなければいけない事なのだと思ったんだ。

 

 その内バレてしまわないか心配になってくるし、付き合えるのにも限界を感じた事があった。

 

 何かが違う。

 それは中学の時に嫌と言うほど実感したし、根本的な部分では俺は男なのだと、そう思っていた。

 

  

 だから俺は楓蓮で仲良くやろうと言う気はない。友達は必要ない。

 うわべだけの付き合いしか考えていない。それが一番いい。




 だけど。全てを知ってる聖奈だけは特別だぞ。

 あいつに限っては、際限なく仲良くしてもいいのだから。

 

ねぇ……じゃあ今度。楓蓮と二人でデートしたい
 え? あ? あれ? 何でそんな話に?
デート? い、いやまて……あれ? 楓蓮?
女同士だし。いいじゃないの。何焦ってんのよ

ってかお前が急にデートとか言うからだろ? 


そんな言い方するから……

楓蓮と友達なのは、私だけでいいんでしょ?
……うん。楓蓮が気を許すのはお前だけだよ。

…………もうっ。そーいうのが困るのよ。


目の前に居ない分マシだけど。

 暫く間があったが、聖奈は思い出したように続ける。

でも、楓蓮は基本夜じゃないとダメなのよね?


夕方からは……私が時間取るの難しいのよね。

いや、夜だけじゃないぞ。


さっき言ったとおり学校の無い日曜日とか祝日とか、サイクルを入れ替えて、元に戻す時間さえあれば、朝や昼でも楓蓮になれるから

あ~そっか。四時間ごとに入れ替わってサイクルを変えるのね。


そそそそ。四時間ごとに入れ替わりまくってサイクルを変えるんだ。

だけど、休日一日だとすげー面倒くさいけど。

ちょっと予定とか調べてみるわっ。

うん。分かった。それは聖奈の都合のいい日に合わせるし。


事前に分かれば、俺だってその時間にサイクル変える計画を立てやすい。

分かったわ。


じゃあ約束よっ! 絶対だからね!

 何だかやたら嬉しそうな声を出しやがる。

 そんなに楓蓮と遊ぶのが嬉しいのだろうか。

よ~し。もう少し頑張ろっかな。じゃあちょっと忙しいから。またね


 いつも思うが、聖奈はいつも何をしてるのだろうか?

 教えてくれないし「忙しいから忙しい」と言われるだけだし。 



 まぁそれにしても、聖奈はやはり特別な存在なのだろうな。


 楓蓮と普通に遊べるのは、俺の正体を知るあいつしかいないのだから。

 

――――――――――――


次回。白竹魔優視点。魔優と美優。1~3

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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