第03章(1)

文字数 1,222文字

 フクロウの鳴き声がここ一帯に夜が来た事を告げる。
「なァ、アレック。これから俺達は何処へ行くんだ? ウィル元帥の所か?」
「あったり前じゃない。ニコラ君、勘が鈍いね。そんなんで俺達この時代生きてけないよ」
 セレナ達一行は、シュヴァルツ王国とリーフィ村の国境付近にいた。
 そこで、ニコラは鈍い発言をアレックに伝えたのだ。
「まァ、元帥が俺のノールオリゾンの技術の腕を買われたんだがなァ」
 ニコラはそう言い、セレナを見据えた。
 自由から解き放たれたセレナはずっと、ずっと、夜空を見上げていた。
 何もない自由の空。ニコラは、彼女には、普通のメカとして生きて欲しかったと思っていた。
 だが、普通のメカじゃないからこそ、セレナの今があるのだ。
「セレナちゃんを見ているとさ、なんだか懐かしくなる。セレナ姫が、俺に良くして下さった事を」
 セレナ姫、その言葉を聞いたニコラは微かにアレックから視線を外す。
 セレナ姫は、エレン姫の姉である。
 もう、既に病気で亡くなった王位継承権一位の姫だった。
「俺が小さい頃、悪いゴロツキに絡まれて、俺、怪我する寸前だったけど、セレナ姫に俺は守られたんだ」
 アレックが小さい頃の話だ。
 アレックは、セレナ姫によって窮地を救われた。その時から、アレックは今度こそセレナ姫を守ると誓った。
 だが、運命は残酷にも、セレナを殺した。
 重い肺結核を患い、死んだのだ。
「アレック、そんな事があったのかァ。お前でも純情に恋でもすんだなァ」
「ちょっと、恋だなんて。ニコラ君、勝手に恋愛だなんて決めつけないでよ。俺には到底結ばれない相手だったんだからさ……」
 そう言い、アレックは目を閉じた。鮮明にセレナ姫の顔を覚えているアレックは、今でもまだ、セレナ姫に恋をしているのだろうか。
「今度こそ、守るよ。セレナ姫を。彼女は、セレナ姫じゃないかもだけども――」
「そういう話だったんだな」
「あ、エルマちゃん、聞いてたの。盗み聞きは良くないよ」
「まあ、だいたい、予想はしてたんだな。」
 エルマはそう言い、ついでに立ち聞きしたのを詫びた。
 しかし、そのエルマの顔はどう見ても暗い。
「じゃ、俺は寝るね」
 アレックは、そう言いテントの中へ入っていった。
「エルマ、随分暗い顔じゃねェか。どうしたんだ?」
「未来が見えるのも、良いことだらけじゃないんだな」
「エルマ、何考えてたんだァ……」
「その……、確かに、あの予言は当たるんだな。これは自信を持って言えるんだな」
 予言――シュヴァルツ王国が復興する。エレン姫の下で、復興するという事。
「だけど、ニコラ殿、アナタ達には悪いんだな……見えてしまったんだな。アナタ達の未来は……」
「……あァ、そういう事かよ」
「アレック殿には内緒にしてて、欲しいんだな。アナタ達二人、そしてセレナ姫は――」
 見えてしまった幼馴染みの行方に、エルマは涙を零したのだった。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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