03 二つ目の部屋

文字数 5,956文字

 扉を開けると、先ほどと同じ、立方体の構造の部屋がありました。

 壁と床は奇抜な色で塗られていて、床はストライプです。

 中央には大きな机があり、奥の壁には、とても小さな扉が見えます。


 大きな机のすぐ横に、一人の女性が倒れています。

誰か倒れてる!
 駆け寄った安田さんの後ろから岸川さんも歩み寄ります。
声をかけてみましょか。

ーー大丈夫ですか?

大丈夫かっ!
んん……ここは…?
あれ、僕は確か……ジョストリアで、本を読んでたはずなのに……。

……君たちは?

自分たちも、多分同じよ
隣の部屋に、目が覚めたらおったんです。

……同じお店におったんですかね?

ジョストリアに
ジョストリアにいました
目が覚めたらここに居って……。

自分ら、持ち物もなくしとるんやけど、アナタは持ってる?

えっ……。あ、スマホが。

財布もないですね。

やっぱりぃ?

じゃあ助けは呼べんねえ

困りましたねえ
せやねえ、まあしゃあない、か。

特に体におかしいところはない?

大丈夫そうです。

申し遅れました。私 佐々木千冬と言います。

千冬ちゃん、ね
安田酢太郎だよぉ
岸川ほづみと申します。
安田さんと岸川さん、ですね!
……何で俺は呼んでもらえなかったのか
え、いやいやいや
安田さんって言うたやん
あっ、聞こえてなかった
ちゃんと聞いたってや
耳が遠いから……!
申し訳ない!
大人びた話し方だなあ……

でもまあ、向こうの部屋でも謎みたいなの解いたらドアが開いたから、ここも開くんじゃない?

そうなんですね?
……謎を解いたらドアが開いたんですか。
うん、なんかクイズみたいなんがあったよ?
ふぅん……

いや、どこかで私たちを閉じ込めた人が見ているのかもしれませんね

そうね、確かに言われてみりゃ
 カメラっぽいものがあるのではないか。安田さんは部屋を見渡します。
隅々まで見るという感じで、目星を

安田酢太郎:【目星】1D100<=75 → 73 → 成功

 部屋を見渡すが、あまりに奇抜な色に目がチカチカします。

 負けじとあたりを見渡しますが、見た限りではカメラのようなものはないように感じます 

だめだ! 目がチカチカする!

カメラっぽいものはないんじゃないかな!

そうなんですね……でも、その謎を解いてこちらの部屋まで来たお二人がいれば安心ですね!
……そうやな。とりあえず、一つ目の部屋は抜けれたわけやし、同じように抜けていこ。


 岸川さんと安田さんは机へと向かいました。

 佐々木さんもついてきます。

 机は触ってみると冷たく、重たそうな机です。

 机の上にはカードゲームのようなものと、ノート、青いペンが置いてありました。

なんかあるねえ?
カードゲーム、みたいですね?
昔遊んだよ、よく!
 安田さんはカードゲームを手に取ります。
何のカードゲームか、「博物学」か「知識」をどうぞ

安田酢太郎:【知識】1D100<=70 → 84 → 失敗

ぱっと見、知ってるような気がしたんですけど、何のゲームだか思い出せませんでした。
 首をひねる安田さんの後ろから岸川さんがカードを見ます。

岸川ほづみ:【知識】1D100<=95 → 52 → 成功

 岸川さんには、そのカードゲームに見覚えがありました。

 「人狼ゲーム」。テーブルゲームのようでした。

あー、なるほど。「人狼ゲーム」ですねえ。安田さん、知ってはります?
ああ、そう言われてみれば聞いたことくらいは。
誰かが遊んどったんでしょか。
 岸川さんが見る限り、カードは、全て揃っているようです。
千冬ちゃんはこのカード知ってる?
私の友人たちが遊んでたのを見たことがあるね。
千冬ちゃん自身はやったことないんや?
僕は、人をはめるっていうのはあまり得意ではないから……。
そうやね、性格が出そうやもんな、この手のゲームは。
……そちらのノートは、何か書いてありますか?
 促され、岸川さんがノートを手にとって開きます。

 表紙は普通紙のようですか、なぜか中が厚紙でできており、ちぐはぐなノートになっています。

 なかを見てみると、空白のページばかりですが、あるページに何か書いてありました。

アリアは嘘つきの子供を匿った。子供を追いかけてきた大人はアリアに「子供を見ていないか」と言った。アリアは「見てないわ」とそう言った。そりゃそうだ。
こんなことが書いてありますよ
 安田さんと佐々木さんに岸川さんはノートを見せました
これ、何のことかわかる?
うーん。私にはさっぱりだなあ
ま、そうやろな……。あとは青いペン、か。
 他のページには何も書いていません。

 青いペンも、ごく普通のサインペンに見えます。

 テーブルの上のものをすべて退かしてみましたが、特に何も書かれていないようです。


 安田さんは机の下を見てみましたが、そこにも何もありませんでした。

 岸川さんはノートの文字を見ます。サインペンで、書かれたかどうか……。でもそこにある文字は、黒いペンで書かれた文字のようでした。

そのペンで書いたわけじゃなさそうだね。

じゃあ、ドアでも見てみましょうか

……この文字は、手記の字と同じなんやろうか
目星、どうぞ

岸川ほづみ:【目星】1D100<=76 → 72 → 成功


 先ほどの手記のような、誰かが書いたような文字ではなく、印刷されたような文字だった、と感じました。
手書きちゃうってことは、もともと書いてあったもんなのかなんなのか。

……とりあえず、ドア見に行ってみますか

あっ、何かそこに落ちてるみたいだけど。


 佐々木さんが床を指差します。

 安田さんが拾ってみるとそれはーー

キャンディ、だねえ。
キャンディ。ほう?
 左右を結ばれた、丸い飴でした。
なんでしょうねえ?
誰か食べとったんかなあ?
でも他に見てないし……
他には落ちてないようだね?
よぉ気づいたねえ?

……とりあえず、酢太郎さん、持っときます?

OK。……開けなくていいよね? これ
開けてみてもええんちゃいます? 別に。

食べてもええやろうし、包み紙開けるくらいやったら、いよいよの時は……

これ、三人で争うことになるかもしれんけども
いやあ、僕はいらないかな
そんなこと言ってられるのも今のうちだぞ!
そんなに欲しそうな人から奪うことはできないよ
 安田さんが包み紙を開けてみると、内側に、文字が書いてありました。
……好きです
なんや急に
こんなこと書いてあったんだよねえ
はぁ。なるほどね。「甘い嘘」か。
ああ、なるほど。
理解してもらえた?
突然告白まがいのことをするような人ではないということがわかったよ
でもどういうことだろうね?
とりあえず、さっきから甘いの何のが多いなあ……
そうだなあ……
見た目は普通の飴で、食べることもできそうですね。

見た目からはそこまでしかわからなそうです、さすがに。

……あとで食ったろ
じゃあ大事にもっといてください
 安田さんはキャンディを包み直すと、ポケットへ大切そうにしまいます。

 それを見ながら岸川さんは扉へと目を向けました。

岸川ほづみ:【目星】1D100<=76 → 42 → 成功

 扉を注視しながら、歩み寄ります。

 ここから見ると小さく見えますが、床のせいでそう見えているだけであり、実は大きな扉じゃないか、ということに気づきます。

……錯覚。
なんかよく見るやつ。
トリックアート的な。
部屋の形がぐにゃっとなってるやつ?
斜めにな……
じゃあ、ドアの方行ってみる?
せやねえ、とりあえず、見に行ってみよか。
飴玉ころがしてみる?
ああ、それも面白いかもなあ。

傾斜してるかどうか、ねえ?

そうそうそう、でも食べれなくなっちゃう。
ふふふ
はははは
安田さんが好きなようにしたらいいよ
ビー玉持ってない?
僕らは手持ちは何もなくなってるから
知ってるぅ〜
 そのまま扉の方に向かいます。

 扉までは若干距離があるようです。


 少し歩くと扉に到着しました。

 扉は安田さんや岸川さんより少し、大きな扉でした。


 扉をよく見ると、一つ目の扉と同じ白い扉で、ドアノブもついています。

 しかしやはり鍵穴はありません。

相変わらず鍵穴はないっすねえ?
そうみたいですねえ。

特に数字入れるようなところもない感じですか?

 扉の上の方に、五人の人物のイラストが書かれていました。

 絵の上にはAからEまでアルファベットが振られており、その下には5つのレバーのようなスイッチがあります。

人狼かな?
 安田さんが人狼ゲームのカードを見ようとした瞬間。

 突然、どこからともなく声が聞こえます。

君たちが今手に持っている問題で、嘘つきを見つけてね?

嘘つきは、何人?

 手を開くと、三人ともいつの間にか小さな紙を握っています。
奇妙な体験をしたのでSANチェックです。(1/1d2)

岸川ほづみ:【SANチェック】1D100<=62 → 48 → 成功

安田酢太郎:【SANチェック】1D100<=58 → 9 → スペシャル

三人は紙を見てみると、紙にはこう書かれていました。
なるほど……
Cが言ってることが本当と仮定して矛盾があるかどうかを調べればいいんだっけ?
それが適切なやり方だね!

誰かひとりが本当と仮定してから、問題を一つ一つずらして導けば、答えが出るかもしれないね

千冬ちゃん、こういうの得意なんじゃないの?
どちらかといえば得意だけど。

でも、やっぱり一つ目の部屋を解いてきた二人に任せた方がいいだろ?

任せなよ!
はは、煽ってくるなあ
大学生になりたての僕のような少女の助言など、二人は必要ないだろ?
まじ、ごめんな。小学生くらいかと思ってたわ
そんなっ!

やはり胸かっ!

 佐々木さんはうなだれてしまいました。
まあ、一つヒントを出すんだったら……
いや、ちょっと考えるよ。
すみません、でしゃばってしまって……
多分、2〜3分考えたら諦めるから
Aの「嘘つきは一人だけ」は絶対嘘やんなあ?
AとCが嘘つきであってんのか?
AとCが嘘つきやと、嘘つきが二人。

ん? Bが真ってこと?

「Cが言ってることが本当」が矛盾するようになっちゃうのか、それで。
これ、全員嘘つき?
よし! ヒントもらうか!
ヒントが欲しいなら教えるけど、まさかそんなことは……
煽ってくるなあ
わかってるんだったら言えよ! 答えを!
荒れとるわ
こちとら、勉強しなくなって長いんだぞ!
<PLによる謎解き会議/略>
酢太郎さんはすごいなあ!
応援してくれてるで
まじかよ、お前後でヒント聞くからな?
<PLによる謎解き会議/略>
……おう、ちょっと言ってみろよ、そこの大学生!

よろしくおねがいします!

いやあ、素晴らしい推理だなあ。感服したよ
笑とるでぇ
それが二人の答えなら、僕は何とも言わないさ
えっ、ヒント。ヒントは?
ああ、ヒント?

じゃあ、「Cは嘘つき」だよ?

<PLによる謎解き会議/略>

じゃあそこのレバーを全部降ろすのかい?
よし! 全部嘘つきだな!
 安田さんは扉に向かい
オラオラオラオラ!
扉のレバーを全て、掛け声とともに降ろしました。
どうだっ! 千冬っ!
私??
嘘つきはこう!
 全てのレバーを下げ終わると、ぱちんと音がして、扉に書かれていたイラストの首と胴体が分かれていました。
 続いてかちゃんと、扉の開く音がします。
開いたみたいだね
開いたみたいだね
うーん……
えらい嘘つきに厳しいドアですねえ
ほんとね。

……これ、さっきの鏡を持ってきて、ノートとか見てみてもいいかな?

ああ、ええんちゃいます? やってみたいんやったら。
ちょっときになるんで。
 鏡を取りに行こうとした安田さんを、佐々木さんが呼び止めます。
ああ、そうだ。言うの忘れてたよ。

君らが来た扉って? もともとなかったけど、どこから来たんだい? 君たち。

そういうことは早く言え!
 ドアはなくなっているようです。
しゃあないね……。
うん
 安田さんは中央の机までもどって、岸川さんたちが小さく見えるか確認します。

 ……当然ながら、岸川さんたちは小さく見えました。

おおお! 本当に小さく見えるよぉ!
楽しそうですねえ
カメラがあればなあ!
これで君たちを信じることができるよ。

どこから来たかもわからないし、僕を連れてきた犯人かと思ったんだけど、ちゃんと扉が開くように問題が解けるんだったら君たちは味方だね

最初に言ってくれよ! ドアがないぜって。

……どうします? ペンとかノートとか持っていきます?


使えるかどうかわからんけど、とりあえず持っていこか。

また取れんくなっても困るし。

あるものは持って行った方がいいんじゃないかい?
じゃあ、机を持っていきます。
机を持っていくの??
冷たくて重いて……
でかい……、じゃあ諦めます。
いやあ、すごいなあ、安田さんは。
鍛えてるからね!
机は、三人で押すことはできるかもしれませんが、持ち上げるのは無理ですね。
どうしても持っていきたいとかそんなことはないから大丈夫です。
じゃあ、カードゲームとノートと青いペンと、安田さんのキャンディか。
ああ、いいいい。

それはポケットに入ってるから。

 岸川さんは荷物を抱えて扉へ歩み寄りました。

 先のドアと同じように、ドアに耳をくっつけて先の様子を確認しようか。そう思った時、佐々木さんが不意に声をあげました。

さきほどの問題がでたから、糖分とって頭を、っていう感じのことでキャンディがあったのかもしれないね
ああ、確かに。

ーー食う?

いやあ、僕は安田さんから奪うようなことはしないよ
岸川さんは?
いや、ええですよ? 一生懸命考えてくれたんは安田さんやし?
じゃあちょっと疲れたんでーー
 安田さんはポケットに入れていた飴を口に入れました。
おお、食べるぞぉ、おいぃ
まあ、「黄泉竈食ひ」って言葉もありますけどねえ……
裏チャット:安田さんのみに公開(文字選択で読めます)

それは口に含むと全く甘くありません。

それどころか舌が痺れる程の苦さを覚えます。

探索終了まで思っていることと逆の事を言ってしまう様になります

うわあこの飴!
……じゃあどうしますか? そのまま進みますか?
いや、ここにいましょう?
居るん?
ずっとここにいたいですね!
安田さん……どうしたんですか?
いやあ! どうかしてるね!
シークレットダイス:岸川ほづみ → 安田酢太郎 > 心理学
 あなたは安田さんが言っていることは、矛盾していることに気づきます。

 言っている言葉と表情が逆になっています。

安田さんはとても面白い芸を持っているんだね
んなこたあないよ?
まあ、変な飴ちゃん食うたんですね
めっちゃ美味しかったです
 安田さんは飴を吐き出しました。
これ、めっちゃ美味しい。食べた方がいいんじゃないかな?
……いやあ…僕は遠慮しとく
君が口に入れたもんを食うんは無理やろ
……まあじゃあとりあえず、先に行こか?
いやあ、行かない方がいいよ?
 そう言いながら、安田さんは岸川さんたちについていきます。
なんか、めんどくさいことになってますねえ……

とりあえずーー

いきますか
せやね、とりあえず先に行こか
 あなたたちは扉に手をかけました
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登場人物紹介

★安田酢太郎

 酢とナメクジを愛するバックパッカー。

 冒涜的な出来事は、ついに3回目。


 1回目 【TRPGリプレイ:しゃりん卓】指定席

 2回目 【TRPGリプレイ:しゃりん卓】ヘビの屋敷

★岸川ほづみ

 タバコをこよなく愛する私立探偵。

 リアル推理とへっぽこ理論で勝負。


 1回目:【TRPGリプレイ:しゃりん卓】這いよるのは……

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