最終電車

文字数 486文字

迷路のような地下鉄
脳内を駆け巡る思い出の
慌ただしい侵攻と信仰のクーリングオフ
私はきみに言葉を届けたくて
なにか言葉を送り届けたくて
今夜も手紙を書くのです


  丸くて四角くてところどころ尖ってて
  虫みたいな貨物列車みたいな星みたいな
  懐かしいあなたの横顔を思い出しながら

真夜中の郵便受けは
過去の手紙でぐしゃぐしゃだ
それでも切手を貼り続けることは
封を決して切らないでいる日中の
明日という曖昧な言葉が影のように揺らいで
 消えていくということだ


  明日も晴れるだろうか

ありのままに想像する
昨日捨てた扇風機の羽の枚数を
その風を目を閉じてただ浴びる
思い出が目の前を通過していく
羽が風もなく回っている
また今夜も日が落ちる
つい先ほど胃の中に落ちていった夕焼けの
その余韻は息を吐く度にマスクを赤く染め
私の常備している胃薬を三錠ほど溶かし
どうにか夜を迎え入れようと頑張っていたの
 だけれども
夕焼けの真っ赤に光る残光が美しすぎて
もう今夜は間に合いそうにないのです

 「
  まもなく到着の電車は本日の最終電車で
  す。お乗り遅れのないようにご注意下さ
  い。まもなく到着の電車は本日の……
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