可能世界の二階堂奥歯さんへ

文字数 504文字

論理哲学論考をあんなにも熱心に読んでいた奥歯さんが、30代後半から40代前半のおじさん(しかも極めて否定神学的な存在としての)をなぜこんなにも崇め追い求めるのか長年の疑問でしたが、最近になってようやく理解できた気がします。

それってウィーン学団とウィトゲンシュタインの差異ってことですよね。"外"に対する態度の違い。論理空間の外側は触れられない神秘であり、"それ"は沈黙によって示される神である。奥歯さんは"それ"に向かって届かない手紙を書いていたのですね。

奥歯さんは今どこにいますか。"外"にいるのでしょうか。僕が論理空間にいる可能世界の二階堂奥歯さんへ物語を作ったとしても、それで救った気になるのはどうしても許せないのです。だって、救われてるのは世界にいる僕に他ならないのですから。それに、"届かない手紙"は実は世界には届いていますよ。あなたの見ていた世界の断片として。

だから僕も二つの手紙を出そうと思います。

"外"にいる各位(少女小説家ならびに文学少女および美少年)へ。

世界にいる、出会ったことのない、僕の友達へ。

二○○三年四月二十六日(土)
可能世界の二階堂奥歯さんへ
           朝倉心葉より
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