2020年5月6日

文字数 2,100文字

2020年5月6日
 新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、政府は規制や要請による外出制限を実施、「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」の保持、や「三密(密閉・密集・密接)」の回避などを人々に求めている。感染ルートの解明や対策の効果の検証・公開などを目的としてスマートフォンの位置情報やBluetoothが利用されている。こういった携帯端末の活用はこれまでのパンデミックと異なる事情である。移動や集会の自由の制限自体はスペインかぜ以来のオーソドックスなパンデミック対応だが、デジタル技術による捕捉は初めてだ。

 位置情報はマクロなレベルから移動による人の密度を調べる際に利用される。一方、Bluetoothはミクロレベルである個人の感染追跡もしくは曝露通知の解析のために必要だ。いずれもプライバシー侵害や目的外の利用の危険性があり、その防止が求められる。近代においては移動や集会の自由が認められている。特定目的のために同意したとしても、監視されなければ、それを政府や企業が自己利益の利用に転用しかねない。警戒するのは当然である。

 人が集まれば、社会的距離を取るのが難しくなり、感染リスクが高まる。人が集まると思われる場所をいくつか選定、外出制限が実施される以前の状態を基準にし、以後の状況を比較する。外出制限策の実施状況をこれによって把握することができる。Googleの「COVID-19コミュニティモビリティレポート」が代表例だ。

 新型コロナウイルスは軽症ないし無症状の自覚なき感染者と濃厚接触しても感染する可能性がある。感染のルートを明らかにしたり、そうした状況にあった人に通知して検査を促したりするために、近距離無線通信のBluetoothの技術が利用される。これにはスマホへの特定アプリのインストールが不可欠である。これがミクロレベルの利用だ。Liza Lin & Chong Koh Pingによる『WSJ』2020 年 4 月 23 日 8時5分更新「コロナ追跡アプリ普及せず、シンガポールの誤算」などがこうした技術を紹介している。

 そのアプリを入れたスマホのユーザー同士が濃厚接触距離以内ですれ違うと、Bluetoothを通じてIDが相互交換され、履歴として一定期間記録される。あるユーザーに感染が判明すると、履歴から発見した濃厚接触者にこの事実を通知、検査を促す。接触者が検査を受けることで、さらなる感染を抑制できる可能性がある。

 ただ、これが効果的に機能するためには、できる限り多くのスマホユーザーにアプリをインストールしてもらうことが不可欠だ。濃厚接触をしても、その人がスマホにアプリを入れていなければ、履歴に残らない。可能性のある人が見逃され、さらなる感染につながりかねない。

 アプリのインストールにはそれに関連する政府や企業への信頼が必須である。個人情報が目的外に利用されないか、もしくは漏洩しないかなどの不信があっては、いかに新型コロナウイルスが怖くても、利用を見送る。また、感染を明らかにした際の差別の危険性もある。日本ではすでに悪質な差別事件が起きている。社会への信頼も普及には不可欠だ。

 世界的に経済再開を中央・地方政府が進めようとしている。しかし、それには感染の拡大の懸念がある。そこでコンタクトトレース技術が期待される。活動を再開して、感染が起きたら、このシステムを利用して迅速に対応すれば拡大を抑制できると政府は考えている。感染を抑えつつ、経済も活動させるには、これが欠かせないというわけだ。

 しかし、こうしたデジタル技術は感染拡大抑制には信頼が不可欠だと物語る。政府や企業が普段から信頼性を市民との間で構築してきたのかがそこに現れている。そもそも陽性になった際、政府や企業が休業補償を用意していなくては、検査を促されても避ける可能性がある。加えて、発覚した際の世間の差別も怖い。信頼がなければ、せっかくの技術を生かせない。政府や企業、社会に信頼がないと、感染拡大につながってしまうだろう。ウイルスには人格などない。だが、その感染拡大防止には信頼が必要である。今回のパンデミックには不信の禍もある。

 夕食は、親子丼、なめこの味噌汁、キャベツの浅漬け、野菜サラダ、食後は緑茶と干し柿。強烈な雷が鳴り響く。屋内ウォーキングは10080歩。都内の新規陽性者数は38人、死者数は5人。都の陽性者は4日連続100人を下回る。3日91人、4日87人、5日58人、6日38人だが、検査実施人数は3日399人、4日219人、5日は109人。検査結果判明までタイムラグがあるため、日々の検査人数と感染者数は対応していない。また医療機関の検査数も集計されていない。

参照文献
Liza Lin & Chong Koh Ping、「コロナ追跡アプリ普及せず、シンガポールの誤算」、 『WSJ』、2020 年 4 月 23 日8時05分更新
https://jp.wsj.com/articles/SB11705746827708923692704586340283375042232


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