第2話 目撃談

文字数 300文字

 「あの日、沖で若い女と舟にいたのを見かけたよ。」
 ついに目撃者が見つかった。ときおり隣村から手伝いに来ている青年だ。
 「じさまは、耳も遠いし、目も悪くなったから見えてなかったかもしれねが、はっきりと覚えているよ。しかし、ありゃベッピンだったね。とてもこの世のものとは思えなかった。」

 村の生活が嫌になって女と駆け落ちをしたとか、魚たちに怨まれて海に引きずり込まれたんじゃないかなどとの噂が流れた。
 「あんな薄情なやつのことは、あきらめな。おっかあ一人ぐらいなら仲間で面倒見てやらあな。死んだおやっさんには皆、世話になってたからよ。」
 村人は、残された太郎の母の面倒を見ながら暮らした。
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