第1話
文字数 590文字
花火大会の帰り道、彼女が下駄を脱いだ。
海岸沿いのボードウォークから海に向かって駈け出し、沖に引いていった波を追いかけていく。僕は転々と砂浜についた彼女の裸足の足跡をたどって、彼女を追いかけた。
波がまた戻ってくる。彼女は「きゃははっ」と笑い声をたてて駆け戻ってきたけれど、砂に足元を取られてつまづきそうになる。浴衣姿だから思うように足が動かせなくて、危なっかしい。
「濡れるって」
彼女の腕をとっさにつかんで引っ張った。浴衣の袂が僕の体をかすめてドキッとする。
たぶん、そのせいで寄せてくる波への反応が、一瞬遅れたんだ。ザザンッ……という波の音が近くなり、あっという間に彼女の足を濡らしてしまった。
「あーっ」
彼女は非難がましく目を細めて僕をにらむ。
「なんだよ、羽夕 が波にケンカ売ったんだろ?」と言ったけれど、彼女が本気で怒っているのではないことは分かってる。だから僕もいつも通りの軽い口調で反論する。
学校では真面目で大人しい羽夕は、じつは天然だ。思うままに行動しては、困った事態に陥ってしまうのは、小さい頃から一緒にいる僕だけが知っている秘密。
彼女が濡れた浴衣の裾をつまんで持ち上げた。白いふくらはぎがあらわになる。その白さと足首の細さにドキッとする。
幼馴染の僕たちのベースはあくまで友だち。ドキッとするのは、野球ならイレギュラー。だけど最近、イレギュラーが多すぎる。
海岸沿いのボードウォークから海に向かって駈け出し、沖に引いていった波を追いかけていく。僕は転々と砂浜についた彼女の裸足の足跡をたどって、彼女を追いかけた。
波がまた戻ってくる。彼女は「きゃははっ」と笑い声をたてて駆け戻ってきたけれど、砂に足元を取られてつまづきそうになる。浴衣姿だから思うように足が動かせなくて、危なっかしい。
「濡れるって」
彼女の腕をとっさにつかんで引っ張った。浴衣の袂が僕の体をかすめてドキッとする。
たぶん、そのせいで寄せてくる波への反応が、一瞬遅れたんだ。ザザンッ……という波の音が近くなり、あっという間に彼女の足を濡らしてしまった。
「あーっ」
彼女は非難がましく目を細めて僕をにらむ。
「なんだよ、
学校では真面目で大人しい羽夕は、じつは天然だ。思うままに行動しては、困った事態に陥ってしまうのは、小さい頃から一緒にいる僕だけが知っている秘密。
彼女が濡れた浴衣の裾をつまんで持ち上げた。白いふくらはぎがあらわになる。その白さと足首の細さにドキッとする。
幼馴染の僕たちのベースはあくまで友だち。ドキッとするのは、野球ならイレギュラー。だけど最近、イレギュラーが多すぎる。