第5話(12)

エピソード文字数 1,327文字

「そうだ、軽食も仕入れよう。食べた気がしないんだよなぁ……」

 自販機に向かっている途中で、ボクは帰りのルートに『食べ物購入』を追加する。ちゃんと焼きそばさん達を食したはずなのに、ホント食べた気がしないんですわ。

「兄様は、昔からたくさん、お食べになり……ますよね。一杯食べる兄様も、好き……です」
『わっ、あの子カワイ~! 「兄様」、だって!』
『他の人が言うとプッてなるんだけど、あの子はピッタリ。神様って不公平だわ~』

 お肌を小麦色に焼いた通行人さんが、育月ちゃんをべた褒めする。
 くう…………この女、これを狙って兄様を連呼したな……! 俺は断じて、沢山食べる人間ではないんだ……!!

「まったく。こんなとこで擬態する必要はないだろ……」
(なんだか生意気発言をしたように聞こえて、なんだか壺割り事件を公表したくなっちゃった。不思議な気分ね)
「ごめんなさい金輪際愚痴りません。それはそうと育月ちゃん、ジュースを奢りましょうか?」
「兄様、いいの……ですか? すみま……せん」

 申し訳なさそうにして、ギロリ。『次はないぞ』と目で告げてくる。
 コイツに壺の件の記憶がある限り、俺は下僕だ。どうでもいいけど戦国武将さんはこういう弱みを握っとけば、謀反を起こされなかったのではないでしょうか。

「お、俺は従兄だから、遠慮しなくていいよ。どの飲み物がいい?」
「なんでも、いい……です。兄様が選んでくださったものなら、なんでも構いま……せん」(右から2番目の炭酸にしろ)
 今度は自動販売機さんの前で俺の左腕をキュッと抱き、小声で命令してくる。
 はいはい、畏まりました。馬路村(うまじむら)のユズをたっぷり使用した、ごっくんと飲める炭酸ドリンクがよいのでございますね。

「じゃあ、ソレにしよっかな。これでいい?」
「は……ぃ。兄様が選んでくださった、のは、絶対に美味しい……ですから」
「そ、そっかー。ならソレにするねー」

 ヒクヒク、ヒクヒク。俺は口元を引き攣らせながら財布を出し、手を震わせつつ――

「そこのお兄さんお姉さん。少々お時間いいですか?」

 手を震わせつつ500円玉を取っていたら、左側から声をかけられた。
 にゅむ? にゅむむ?

「そこの、お二人のことですよ。構いませんかね?」
「はあ。いいですが、なんの御用ですかね?」

 俺は身体の向きを変え、サングラスをかけてパーカーを着た男性に応じる。
 もしかして地元紙の方で、カップル特集をしてた? 俺カッコいいから、取材の依頼だなきっと。

『優星、ハッキリ言おう。お前はカッコよくない』

 そだね、自分でもそう思ってた。調子乗ってスイマセン。

「お話が、あるんですよ。なのでちょっと、駐車場まで来て頂けませんか?」
「ぁ~。その話ってのは、ここではできないんですかね?」

 ソコは、それなりに遠い。その『それなり』が生死を左右すると、ボクは熟知しているのだ。
 悲しいことにね。

「一応、友達もいるんで。遠くは困るんです――」
「いいから、黙ってついて来てくださいよ。従わないと撃ちますよ?」

 不意に。男性は服の下にある、黒い拳銃を覗かせた。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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