プロローグ

文字数 957文字

今日、僕は高等学校を卒業した。思い返せば青春と呼べるものは無いけれど、どれも眩しいくらいの大切な思い出になっていた。友達とあの老朽化の真っただ中の教室でもうこれから笑いあえないと思うと、不意に体の奥から気持ちが逆流してきた。右腕の袖で、溢れてきた涙を拭き、僕の友達のことを思った。私含め、誰も一緒の進路にはならなかった。目標校に落ちて浪人を決意したものや、そもそも目標などなく妥協で大学に進学するもの、親の店の跡取りになると決めるものと、十人十色だった。勿論僕は彼らとは違う進路を決めていた。米国へ、アメリカへ八月頃に留学をするのだ。
決意が固まったのは去年の八月あたりだった。どこもかしこも受験で差が開く時期と、私たち受験生の自由を奪い、勉学のみに集中させた。もちろん僕もその被害者だった。しかし遅めの反抗期なのか、それとも僕自身の問題なのか僕は周りに比べて勉強を放棄して気になる本を読み漁った。罪悪感や焦りは人一倍感じていたが、それでも僕は読書をやめることはなかった。蝉が鳴くのをやめ始めたある日、僕は一冊の本と出会った。その本が僕を遠方に運び出した。夏が終わり木々が葉の色を変え始め、僕たちの模試も始まった。当然本を読み漁った僕がよい点数を取れるはずもなく、親の怒号が家中に響いた。そもそも親が僕なんかに何を期待しているのかはわからないけど、その日から一般入学は諦めた、いや諦めたのではなく、留学のことのみに興味を示していた。もう止まれない。
模試の結果が返ってきた数日後に、僕は親に留学がしたいと話した。親は快く承諾してくれた。僕は言い争う準備をしていたがあっさりと解決してしまい拍子抜けした。きっと親は日本の受験に期待してなかったのだろう。僕が浪人するくらいならと妥協を決意したのだろう。僕は自室へ戻り、許可をもらった嬉しさと僕に失望したのではと不安な気持ちが葛藤していた。
元々僕は英語は苦手な方ではあった。高校受験の際も英語が原因で不合格をもらったほどだ。けど、僕は魅了された。見てみたくなってしまった、海の向こうを。僕は一般的な受験生と比較しては少々だらしがないが、何とか留学をもぎ取ることができた。親は喜んでくれた。僕も嬉しかった。今は三月も終わり、僕は八月になったらアメリカへ行くんだ
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