六 小休止②
文字数 1,771文字
「その中でも抑えておきたい神様が数名いるわ」
奏の言葉に、あずさはふむふむと頷く。先ほどまでの不機嫌さはなくなっているようだ。
「まずは、あずさちゃんを守護していると言う二柱の神様ね」
「柱?」
「神様の単位よ。神様は人ではないから、人 とは数えないの」
奏の説明を受け、へ~と納得しているあずさ。それを見ながら、結人はニヤニヤ笑っていた。
「まずは、そうね、ツクヨミ様から行きましょうか」
奏は紙に『ツクヨミ』と書く。そして説明をしていく。月読命 が正式名称であること。彼は夜を司る神であること。そして、あずさには闇の力を与えてくれるであろうこと。
「武甕槌命 のような戦闘はしないけれど、それでも強力な力を持った神様に違いないわ」
「あんなに優しそうなイケメンなのに?」
「会ったことがあるんですか?」
先の疑問はあずさのものだ。それに対してニヤニヤ笑っていた結人が疑問の声を上げた。結人の疑問に対し、あずさは何度もね、と答える。結人は目を見開いて驚いている様子だ。妖怪である結人でも、アマテラスやツクヨミと顔を合わせたことはなかった。むしろ、神と言われる存在も、知識はあっても実際に武甕槌命 を目にするまでは信じていなかった。しかしあずさは何度もツクヨミに会っているという。これは神々の存在を信じざるを得ないだろう。
「次はツクヨミ様の姉にあたる、アマテラス様ね」
奏は話を続けた。アマテラスは正式名称が天照大神 と言う。アマテラスは昼を司る神である。そのため、五穀豊穣 の神とも言われている。天皇家とも縁の深い神である。そのため力は絶大だ。
「あんなに美人さんなのに、凄い神様だったんだね……」
あずさは開いた口が塞 がらない様子だった。
「その他で抑えたい神様といえば、橋姫かしら?」
「橋姫?」
あずさと結人が同時に疑問を口にする。結人にとって橋姫は人間が神になった存在である。そんな橋姫がなんだというのだろうか。
そしてあずさにとっては、相談役を買って出てくれている神だ。相談役以外に何か力があるとは思っていなかったようだ。奏は続ける。
「瀬織津姫 って名前、覚えているかしら?」
「あぁ~、初めて会った時にそんなように名乗っていたかも」
あずさが言う。
「瀬織津姫 って言うのはね、橋を守る神様でもあると同時に、水の神様でもあるの」
奏は言う。あずさはそうだったの? と少し驚いている様子だ。
「雷、水、闇、光、ときたら、やはり火の神も紹介するんです? 奏さん」
結人は言う。結人の言葉に奏は小さく頷いた。
「そうね、火の神様も抑えておきたいわね」
あずさは奏の言葉に頭を抱えている。
「どの神様も名前が難しい~!」
「あら? 火の神様の名前は比較的覚えやすいわよ? その名を、カグツチ」
「カグツチ?」
「あずささんは、神々に守られていながら、神々を知らないのですね」
結人はからかい気味にあずさに言う。
「うるさい、結人」
あずさはじろりと結人を睨み付ける。結人は肩をすくめると黙った。
これで主要な神々をあずさは知ることとなっただろう。あずさは奏が書いた神々の名前とにらめっこしている。
「これ、全部覚えられるかなぁ~……」
「大丈夫よ。瀬織津姫 は橋姫で通じるし、ツクヨミ様とアマテラス様はもう既に覚えているでしょう?」
奏の言葉にあずさは頷いた。知己の二柱についてはさすがにあずさでも覚えている。あとはカグツチと武甕槌命 を覚えたらいいだけだ。
「大丈夫よ、あずさちゃん!」
奏の言葉にあずさは自信なく頷くのだった。
「でも、あずさちゃんが神様に護られているって言うの、納得だわ」
奏はコーヒーを口に含むとそう言った。あずさはきょとん顔だ。
「だって、迷わず天狗の里に辿り着けたのはあずさちゃんのお陰だもの」
奏はにっこり微笑みながら言う。あの時のことを思い出して、あずさも不思議そうに口を開いた。
「あの時は、本当に勘みたいなものだったんだけど。今思うと猿田彦 の導きだったのかなって思う」
「天狗の里は僕でも正確な場所は分からないですからね」
結人が会話に入ってくる。あずさはそうなんだ、と呟くとミルクティーを一飲みする。妖怪である結人でも、あの里の場所は把握できないと言うことは、本格的にあれは神の導きによるものだったのだろう。
三人はその後もたわいない会話をして時間を潰 していくのだった。
奏の言葉に、あずさはふむふむと頷く。先ほどまでの不機嫌さはなくなっているようだ。
「まずは、あずさちゃんを守護していると言う二柱の神様ね」
「柱?」
「神様の単位よ。神様は人ではないから、
奏の説明を受け、へ~と納得しているあずさ。それを見ながら、結人はニヤニヤ笑っていた。
「まずは、そうね、ツクヨミ様から行きましょうか」
奏は紙に『ツクヨミ』と書く。そして説明をしていく。
「
「あんなに優しそうなイケメンなのに?」
「会ったことがあるんですか?」
先の疑問はあずさのものだ。それに対してニヤニヤ笑っていた結人が疑問の声を上げた。結人の疑問に対し、あずさは何度もね、と答える。結人は目を見開いて驚いている様子だ。妖怪である結人でも、アマテラスやツクヨミと顔を合わせたことはなかった。むしろ、神と言われる存在も、知識はあっても実際に
「次はツクヨミ様の姉にあたる、アマテラス様ね」
奏は話を続けた。アマテラスは正式名称が
「あんなに美人さんなのに、凄い神様だったんだね……」
あずさは開いた口が
「その他で抑えたい神様といえば、橋姫かしら?」
「橋姫?」
あずさと結人が同時に疑問を口にする。結人にとって橋姫は人間が神になった存在である。そんな橋姫がなんだというのだろうか。
そしてあずさにとっては、相談役を買って出てくれている神だ。相談役以外に何か力があるとは思っていなかったようだ。奏は続ける。
「
「あぁ~、初めて会った時にそんなように名乗っていたかも」
あずさが言う。
「
奏は言う。あずさはそうだったの? と少し驚いている様子だ。
「雷、水、闇、光、ときたら、やはり火の神も紹介するんです? 奏さん」
結人は言う。結人の言葉に奏は小さく頷いた。
「そうね、火の神様も抑えておきたいわね」
あずさは奏の言葉に頭を抱えている。
「どの神様も名前が難しい~!」
「あら? 火の神様の名前は比較的覚えやすいわよ? その名を、カグツチ」
「カグツチ?」
「あずささんは、神々に守られていながら、神々を知らないのですね」
結人はからかい気味にあずさに言う。
「うるさい、結人」
あずさはじろりと結人を睨み付ける。結人は肩をすくめると黙った。
これで主要な神々をあずさは知ることとなっただろう。あずさは奏が書いた神々の名前とにらめっこしている。
「これ、全部覚えられるかなぁ~……」
「大丈夫よ。
奏の言葉にあずさは頷いた。知己の二柱についてはさすがにあずさでも覚えている。あとはカグツチと
「大丈夫よ、あずさちゃん!」
奏の言葉にあずさは自信なく頷くのだった。
「でも、あずさちゃんが神様に護られているって言うの、納得だわ」
奏はコーヒーを口に含むとそう言った。あずさはきょとん顔だ。
「だって、迷わず天狗の里に辿り着けたのはあずさちゃんのお陰だもの」
奏はにっこり微笑みながら言う。あの時のことを思い出して、あずさも不思議そうに口を開いた。
「あの時は、本当に勘みたいなものだったんだけど。今思うと
「天狗の里は僕でも正確な場所は分からないですからね」
結人が会話に入ってくる。あずさはそうなんだ、と呟くとミルクティーを一飲みする。妖怪である結人でも、あの里の場所は把握できないと言うことは、本格的にあれは神の導きによるものだったのだろう。
三人はその後もたわいない会話をして時間を