新鳥類

文字数 2,102文字

 一つ断っておきますと、地球のことをまだ理解もしていないのに宇宙を目指すと言っているのを見ていますと、地球のことをまだ何も知らないという不作法さに愕然とします。
 地球には一体どれほどの生き物が住んでいるのでしょうか。
UMAをはじめ、高等な知能をもった生き物が人間だけと思っていることこそ、それこそ愚の骨頂なわけです。まるで内省の伴わないマッチョな米国と何ら変わりはしない。社会主義を理解しないまま資本主義を突き進み、共産主義を理解しないまま民主主義を推し進めるようなものです。
 そして、人類社会にも実は数多くの人類以外の高等な知能を持った者達が現在も生きています。その者たちは人間にまるで見た目が変わらない外見で、人間生活と同様の生活を行っています。食べ物も同じものを食べています。そして、私こそがそういった高等知能をもった新鳥類の末裔なのです。
 新鳥類とはどういったものか。
かつて、この地球には鳥類が住んでいましたが、人類がある地点から急速に進化を遂げたように、鳥類もある特異点で進化を二分しました。つまり、ある者は鳥類のまま、またある者は新鳥類へと進化を遂げていったのです。
 新鳥類に進化した者達はやがて二足歩行をはじめ、翼は無くなり両腕となり五本の指となっていきました。そして道具を扱うようになってから各段に知能が高くなり、後は人類の歴史を縫っていったのです。
そして現代、今となっては人間と見た目はすっかり変わることなく、この身にもそういった進化の痕跡はほとんど残らず、あるといったら、唇の横辺りに少しシミが出来ている、それこそがあなたがかつて鳥類であった証なのですよ、と私は両親に言われて育ってきました。
毎日母は私に鳥類の歴史を読み聞かせ、新鳥類である我々が如何に高等であるのかを分かりやすく教えてくださいました。ですので、私は鳥類の歴史には聡いのです。
 私の住んでる地区は、実は人類には内緒にしていますが、新鳥類の者が肩を寄せ合って住んでいる区画であり、普段は家庭では人類語を話しているものの、外では近隣住人とあえば「ちゅんば」といった言葉で話をします。ほとんどこの言葉で事足ります。
 成人をすると必ずすることがあります。それは焼き鳥屋にいき、焼き鳥を食べることです。これは人類の生活に慣れる大人の為の儀式ということで焼き鳥を食べないといけないのですが、最初はつらかったです。なぜならそれは、進化の過程で分け隔てたかつての同胞を食べることだからです。心が割れるような思いをしながらその身柄を口に運ぶいわば共食いのような所業に、私はしくしく涙を流しながらネギマを食べました。しかし、一口食べると、これは一体なんという美味しさなのだろう。そのおいしさに心奪われ、その何もかもがどうでも良くなったのです。鳥の美味しさここに極まれり、って感じで、そうすることで、晴れて私は新鳥類として人類の中で社会に溶け込むことができたのでした。私の両親はその姿を大変喜び焼き鳥屋でハイボールをやりながら楽しみました。
 そんな大学生になったころ、歓迎会で白木屋にいったときのことでした。コースに牛肉がでてきて、皆で美味しいね、なんて食べていたところで、不図見てみると、同期の女の子がしくしくと泣きながら牛肉を食べているのを見るにつけ、私は直観しました。彼女こそは、おそらくは新牛類なのではないかと。人類の中には我々新鳥類だけではなく、なんと新牛類もいたのではと。そんな発見を私は牛肉と焼き鳥を交互に食べながら、ひそかにその思いにほくそ笑み、新鳥類として人類上級者のような振る舞いでその女子を見て、機を見てその子に話に行きました。結果的には、「あなた、もしかして新牛類?」と話しをしにいくと、「は?」と言われ「私、お腹いっぱいなだけですけど」と半ギレ状態で私のことを変人呼ばわりしてきましたので、これはもう話にならんわ、と私は失敬しました。
 ただし、その日から私は新牛類というものがこの人類の中にひそかに存在するのではないかと思い、そういう思いに半ば脅迫的に駆られ、草の根作戦を行い、ついには新牛類を見つけだしました。そして、若干のヘン子でしたがそいつらとタッグを組み、新豚類も見つけ出すことができました。これで黄金の肉三兄弟が揃いましたので、我々は飲み会を開きますと、実は実家の地区が皆隣同士だったのです。これはなんたる偶然っていう話になりましたが、まさかそんな偶然がある?みたいな話になりまして、ちょい地元捜査的なものを行いますと、ある一つの事実が浮かんだのであります。それはその我々の地区の女区長が筋金入りのビーガンだったのです。
 これはなんらかの策略なのかもしれない。我々は実は、今まで何不自由なく暮らしてきたが、実はそれらはビーガンの連中に都合よく強いられた自由だったのかもしれない。もっとよく調べてみると区役所の連中が漏れなくビーガンだったのがわかりました。それにつけ我々は大いに奮起し、区長に対して宣戦布告を行うこととしました。とりあえず、は選挙に立候補するところから始めます。
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