第3話-①
文字数 768文字
私の姉上は大和国の石榴市というところにおり、
田辺金忠という商家に嫁いでいた。
私は姉上の優しさにすっかり甘えてしまった。
そしてそのまま年が明けてしまい、二月に入った。
石榴市は長谷寺に近い。
長谷寺観音のご利益と言えば、遠く唐土まで知られるほど。
時節柄方々から旅人が訪れ、みな宿を求めて集まっていた。
姉上はというと、いざ書き入れ時とばかり、
灯明灯心を売るのに熱心だった。
あまりに多くの人が押し入るので、私は気後れしてしまい、
奥へ引っ込んだ。
と、そのときだった・・・・・・
耳に覚えのある声がした。
振り向くと、そこに‘まろや’がいた。
そして、その後ろには・・・・・・
私は腰を抜かしてしまい、
這いつくばって姉上のもとへ・・・・・・
姉上は、真女子とまろやをまじまじと見つめた。
真女子がひたひたと寄ってきた。
姉上は怪しむこともなく・・・・・・
奥へ通してしまった。