『ビビビ・ビ・バップ』
文字数 1,185文字
「吾輩は猫である」という語りでいきなり始まるジャズSF。 と、一言で言ってしまっていいものかどうか……。フリースタイルジャズとSFと昭和のエンタメシーンと未来科学を大きな鍋にほおりこみ、ぐつぐつと煮込んでできた
と、まあ、ここまでいろいろ詰め込んだ本もなかなか無いような気がします。
けっこう分厚い本です。661ページに渡って繰り広げられるは、21世紀末の飲んだくれジャズピアニスト(だけでは喰っていけないので、本業はバーチャル空間の音響技師)の大冒険。ぜんぜん役に立たない相方は絶滅危惧種のプロ棋士。
冒頭で彼らが取り組んでいるのは上高地の大正池や昭和の頃の寄席、新宿末廣亭に新宿ピットイン(というジャズバーがある・あった? そう)などのバーチャル空間の仕上げ。なんでそんなものを作っているかと言えば、このバーチャル空間がさる高名な天才科学者の「お墓」なのだとか。お墓の主が生前楽しんだ青春の思い出などをバーチャルお墓を訪ねた弔問客が見て楽しめるようにエンタメ化するのがその時代のお金持ちの流行。ってやつ。
そのぐらいまでなら、まだまあ普通(?)のSFっぽいのですが、そこからそのお墓に入る科学者の全脳情報をネットにアップロードだの、ジャズの黄金時代のプレイヤーそのままをアンドロイドで再現して夢のビッグバンドを編成するだの、棋士の大山名人ロボと人間の対決だのだのいろいろでてきて、いつしか世界の危機がやってきてあれあれまあまあどうしましょう? ってのんきなジャズ者がどんどん深みにハマっていく、と、そんなお話です。
とくに圧巻はチャーリー・パーカー始めとするジャズの神様アンドロイドのセッションの描写がすごい。実際に聞いて無くてもイメージがばんばん伝わってきます。
冒頭から一貫している語り手の「吾輩」も実はロボット・ネコで、その軽妙かつたまに高尚な語り口もいいかんじ。ロボット・エンジニアの天才美少女がでてきたり、だれでも知ってる芸能人やゴジラやバルタン星人等々などなどなど、こんなに実名でだしちゃっていいのかしらんと逆に心配になっちゃう本でした。
紹介もこんななんだかよくわからない紹介にならざるをえないぐらいごった煮です。でも、めちゃくちゃおもしろいですw
山のようにでてきたワードにちょっとでもヒットする人、特にジャズ好きの方には面白く読める本だとおもいますYo〜。